第23話「まだ足りない力」
フロストハイムを発ってから、三日が過ぎていた。
馬車の車輪が王都へと続く街道を、規則正しい音を立てて進んでいく。窓の外には、氷に閉ざされた景色が少しずつ姿を変え、緑の混じる穏やかな平野が広がり始めていた。だが、車内に流れる空気は、行きのそれとは明らかに違っていた。
シークは窓の外を見つめたまま、長い間、口を開かなかった。膝の上に置かれた両手は、固く握りしめられている。
「シーク」
カースが声をかける。
「何?」
「ずっと、考えてるんでしょ」
シークは僅かに視線を伏せた。
「……ああ。うん」
しばらく沈黙が続いたあと、シークはぽつりと口を開いた。
「俺はさ、これまでただ、生きるために力を使ってきた」
「……」
「命じられるまま、殺し、命じられるまま、逃げた。自分の意思で何かを望んだことなんて、なかったんだ」
声は相変わらず淡々としていた。だが、その奥には、これまでとは違う熱があった。
「だけどさ、ミトを失って、初めてわかったことがある」
「何が?」
「俺は、もう誰かに命じられるためじゃなく、俺自身の意思で、力が欲しい」
シークは拳を強く握った。
「もう二度と、目の前で大切な奴をみすみす失いたくない。そのための力が、欲しいんだ」
それは、ただ与えられた命令に従い、与えられた力を振るってきた少年の言葉ではなかった。自分で何かを選び、自分の意思で前へ進もうとする者の言葉だった。
カースは、その横顔をしばらく見つめた。
「そっか」
やがて、小さく頷く。
「なら、僕も、はっきりさせておく」
カースは窓の外に広がる緑の平野へ視線を向けた。
「この国は、根本から狂ってる。精霊の名の下に、貴族どもは平然と下の人間を踏みにじり、王家は、そのすべてを見て見ぬふりをしてきた」
その声にあるのは、これまでの私的な復讐だけではなかった。
「僕は、ミミたちの敵を討つためだけに、ここまで来たわけじゃない。もう、そんな小さな話じゃなくなってる」
「カース」
「この国そのものを、僕らの手で変えていく。七大貴族を一つ残らず叩き潰して、その先にある、王家すらも」
静かな宣言だった。
それでも、その言葉に込められた決意だけは、はっきりと伝わった。シークはカースの横顔を見つめ、小さく頷いた。
「なら、俺もそのための力を、手に入れる」
二人の視線が、束の間、交わる。
そこには、言葉にする必要すらない、確かな共犯関係があった。向かいの席でそれを見ていたガルトは、ふと視線を窓の外へ逸らした。
ほんの一瞬だった。
いつもの豪快な笑みも、皮肉げな軽口もない。ガルトの目には、それまで見せたことのない重苦しい何かが浮かんでいた。
「……ガルト?」
カースが、その僅かな変化に気づいて声をかける。
「あ? なんでもねえよ」
ガルトはすぐにいつもの調子へ戻り、豪快に笑った。
「それより、坊主どもがそこまで気合入れてるなら、次にどこの家と当たっても、今よりゃマシに戦えるはずだ。気を引き締めていくぞ」
笑顔に不自然なところはなかった。ただ、先ほど一瞬だけ浮かんだ翳りだけが、誰の記憶にも残らないまま車内の空気の底へ沈んでいった。
王都への帰路、一行は人目につかない山間の廃村で、数日の休息と鍛錬の時間を取ることにした。
「さて、と」
朽ちかけた家屋の前の広場で、ウォルターが大剣を軽く担ぎながら周囲を見渡す。
「フロストにあそこまでボロボロにされたんだ。次にまた同じ轍を踏むわけにはいかねえ。ここでしっかり、体と技を鍛え直すぞ」
「望むところだ」
シークが短く答える。その瞳には、これまでにないはっきりとした意欲が宿っていた。まず取り組んだのは、シーク自身の力を掘り下げることだった。
「見せてみて、シーク。きみの、その風の力」
カースに促され、シークは目を閉じる。
「流す。搾り出すんじゃない」
それは、アイスフェルト領でアズラエルから授かった言葉だった。シークはその教えを頭の中で何度も繰り返す。
次の瞬間、シークの姿がふっと掻き消えた。風をまとった身体が地面を滑る。地を蹴った足跡は、後から吹き抜けた風にさらわれ、すぐに消えた。
しかし、それだけではなかった。シークが宙で軽く手を振ると、周囲に落ちていた葉や小石が舞い上がった。いくつもの葉が渦を描き、小石がその流れに巻き込まれて、シークの動きに追従するように宙を舞う。
「風をまとうだけじゃなく、周囲の物を巻き込めるようになったの?」
カースが、その光景を目で追う。
「……うん。前は、自分の身体を動かすだけで精一杯だったけどさ」
シークは荒い息を吐いた。それでも、自分の中に生まれた変化を確かめるように、手を開いては閉じる。
「今は、少しだけ、その先の周りにまで力を及ぼせる」
「精霊の回路が少しずつ、お前自身のものに馴染み始めてるんだろうな」
ウォルターが腕を組む。
「不完全で、無理やり植え付けられた力だったはずが、こうして使い手の意思に応え始める。皮肉なもんだ」
シークは答えず、ただ拳を握った。
「まだ、足りない」
「わかってる。だから、今、鍛えてるんだろうが」
ウォルターが苦笑し、シークの肩を軽く叩く。
「カース。次は、お前と組み手がしたい」
シークが荒い息を整えながら告げた。
「僕と?」
「呪術と精霊の力。系統の違う技同士が、どこまで噛み合うのか。実戦の形で確かめておきたい」
カースはその申し出に頷いた。
「いいよ。けど、手加減はしないからね」
「望むところだ!」
二人は間合いを取り、向き合った。
「行くよ」
カースが右腕の呪鎖を鋭く振るった。
シークは風をまとった身のこなしで、紙一重にかわす。鎖の先端が空を裂き、そのすぐ横をシークの身体が抜けていった。
「速いね!」
カースは追撃の鎖を続けて放つ。だが、シークはその軌道を読み、宙で身体を捻ってかわしていく。
「そっちこそ。呪鎖の振るい方、前より無駄がなくなった」
「フロストとの一戦で、嫌でも学ばされたからね」
シークが懐から投擲針を放った。カースは呪鎖を盾のように構え、飛来した針を正確に弾き落とす。
「屍傀儡の糸」
カースが放った黒い糸が、地面に転がる木片や小石を絡め取った。それらが意思を持ったかのように宙へ躍り、シークの足元へ襲いかかる。
「甘い!」
シークは風の力で跳躍し、それを軽々と飛び越えた。着地と同時に、風をまとった拳がカースの脇腹を掠める。
「――くっ」
「まだ、隙が多い」
「うるさいよ」
カースは痛みに顔をしかめながらも、笑った。
攻防はしばらく続いた。互いに技を出し、相手の動きを読み、時には紙一重でかわし、時には身体を掠めさせる。実戦とは違う。それでも、相手の一手を読み違えれば、そのまま打ち込まれるという緊張感は確かにそこにあった。
やがて二人は、ほぼ同時に動きを止めた。荒い息を吐きながら互いを見つめる。
「今のところは、五分、ってところか」
離れた場所から見ていたウォルターが笑った。
「二人とも大分、動きが洗練されてきてる。この調子なら、次の戦いはもう少しマシになりそうだな」
「まだまだだ」
シークが汗を拭いながら短く答える。
「そうだね。まだ、足りない」
カースも頷いた。
以前のような、追い詰められるばかりの焦りはない。足りないものが何なのかを知り、それを埋めるために動いている。その実感だけは、確かにあった。
シークの鍛錬と並行して、カース自身もまた、自らの技の限界と可能性を見極める作業を続けていた。
「屍傀儡の糸、か」
カースは廃村に転がっていた朽ちた鳥の死骸を前に、右腕を掲げる。
これまでこの技は常に実戦の中で、無我夢中のまま使ってきた。しかし、フロストとの戦いで見せつけられた圧倒的な力の差を思えば、感覚だけに頼った技の運用ではいずれ限界が来る。カースは、それを実感していた。
「どこまで、届く」
黒い糸を鳥の死骸へ伸ばす。糸が触れた瞬間、死骸の翼がぴくりと動いた。カースはそのまま糸を伸ばす距離を少しずつ広げていった。
十歩、二十歩、三十歩――。
「このあたりが、限界かな」
三十歩ほど離れたところで、糸を通して伝わってくる感覚が急速に薄れていった。それ以上離れると、糸そのものが力を失ったように、地面へ力なく落ちてしまう。
「意外と、短いな」
ウォルターが離れた場所から、その様子を見ていた。
「もっと、遠くまで届くと思ってたか?」
「正直、そうだね。もっと広範囲を掌握できるものだと思った」
「呪力は無尽蔵じゃない。距離が伸びれば、それだけ消耗も激しくなるってことだろうな」
カースは、その言葉に頷いた。
次に試したのは、死体以外の対象への応用だった。
「生き物じゃなくても、思うままに動かせるのか知りたい」
カースは廃屋の隅に転がっていた朽ちた木の椅子へ、糸を伸ばした。
糸は椅子に絡みついた。ただ、死体を操ったときほど意のままには動かせない。持ち上げようとしても、動きは鈍く、糸に込めた力がそのまま空回りする。
「――駄目、か」
「無機物には、そもそも命の残滓ってものがないからな」
鍛錬の合間、シークがその様子を見ながら口を挟んだ。
「カースの技は、死んだ命の残り火を無理やり引きずり出して、動かすものでしょ。最初から命のなかったものには、引きずり出す火種がない」
「なるほど、ね」
カースは素直に感心した。感情の起伏こそ薄いが、シークの観察眼はときに驚くほど的確だった。
さらにカースは、もう一つの大きな課題へ向き合った。
「精霊喰らい、か」
懐に提げたネロの呪核へ、そっと触れる。
グルントハルト家のガイアとの戦で、初めて発動したあの力。ただ、あれはあまりにも不完全で、不安定だった。
「ネロ。もう一度、試させて」
カースは呪力を呪核へ注ぎ込む。
応じて現れた黒い靄は、あのときと同じように輪郭をちりちりと明滅させた。形を保てないまま、今にも崩れそうに揺れている。
「やっぱり、まだ駄目か」
カースは荒い息を吐き、その靄を収めた。
「あの時は、ガイアの加護一つを剥ぎ取るのがやっとだった。もし、フロストのような格上の相手に同じことを試みたら――」
「多分、お前自身が保たない」
シークが言葉を継いだ。
「あの力は、まだカースとその呪核の、両方にとって、扱いきれない劇薬みたいなものなんだ」
「……うん、わかってる」
カースは拳を握りしめる。
「だからこうして鍛えてるんだ。少しずつでも確実に、あの力を僕自身のものにするために」
その後も、カースたちはそれぞれの鍛錬を続けた。シークは風の力を繰り返し操り、カースもまた呪術の感覚を確かめるように、何度も技を試していく。
気づけば、空はすっかり暗くなっていた。
昼間の鍛錬を終えた一行は、廃村の一角で焚き火を囲んでいた。薪がぱち、と音を立てて爆ぜる。その炎を眺めながら、シークは昼間の疲労を残したまま、黙って座っていた。
そのときだった。
頭上の木々が、かすかに揺れた。
次の瞬間、アズラエルが木の上から、ひらりと飛び降りてきた。
「随分と、真面目にやってたじゃないか」
「お前は、見てるだけか」
シークが汗を拭いながら、皮肉げに言った。
「うん。だってボクが手を貸すより、君たち自身で掴み取る方が、ずっと面白いでしょ」
アズラエルは悪びれもせず、焚き火の傍らに腰を下ろした。そして、炎の向こうにいるカースとシークを眺めながら、ふっと笑う。
「それに、君たちがどこまで強くなれるのか、見ているだけでも結構楽しめたしね」
「……それで?」
シークが促すように言う。
「ただ見ていただけじゃない。ちゃんと君たちの戦い方も見てたよ。今の君たちなら、これから先、自分たちがどれくらいの相手と戦うことになるのか……そろそろ知っておいた方がいいんじゃない?」
アズラエルは薪を一本拾い、焚き火の中へ放り込んだ。
「せっかくだから、退屈しのぎに少しは有益な話もしてあげようか」
「有益な話?」
カースが興味を引かれたように視線を向ける。
「七大貴族の、力の序列についてさ」
アズラエルは指先で紫電を軽く弾きながら続けた。
「君たちがこれまで潰してきた、土のグルントハルト。あれは七大貴族の中でも、正直、中堅どころだ」
「待って」
カースが鋭く口を挟む。
「火のライハルトは、含めないの?」
「もちろん。含めないよ」
アズラエルは首を振った。
「君があの離宮で討ったのは、跡取りのアルベルトでしょ?」
「うん」
「だったら、あの戦いだけでライハルト家の力を判断するのは早いよ」
「……どういうこと?」
カースが眉を寄せる。アズラエルは、面白そうに笑った。
「アルベルトは、あくまで跡取り。まあ、あんな雑魚、ライハルトの跡取りとも言えないとボクは思うけどね。ライハルト家の本当の力を担っているのは、当主――イグニスさ」
「アルベルトより、強いの?」
「比べるまでもないよ」
アズラエルは、さらりと言った。
「君が倒したのは、ライハルト家の一端に過ぎない。イグニス自身は、もっと強大な力を持っている」
「……じゃあ、僕たちはまだ……」
「うん。ライハルト家の本当の力を、まだ何一つ見ていないってことさ」
アズラエルの声に、僅かな緊張が混じった。
「当主イグニスは、七大貴族の中でも最上位の一角だからね。あの離宮での戦いは、言ってしまえば、本陣のほんの前哨戦に過ぎない」
その事実に、カースは静かに息を呑んだ。
「そっか――」
カースは、一瞬だけ言葉を失った。
イグニスが、自分たちとはまだ比べものにならないほどの強者だという事実。その重さが、胸に沈んでいく。
だが、それでもカースの目から、戦う意思が消えることはなかった。
「……でも、いつかは、あの男とも決着をつける」
カースは、静かに拳を握りしめた。
「今は敵わなくても、いずれは負けない。必ず、僕の手で倒す」
「うん。まあ、そうなるだろうね」
アズラエルは、楽しそうに笑った。
「ただ、イグニスは今のボクでもかなわないと思うけどなあ。まあ頑張って」
アズラエルはそこで言葉を切り、炎の向こうを眺めた。
「それに、君たちが倒したグルントハルトだけど――あれは、家そのものの戦力として見れば、決して侮れないよ」
アズラエルは、ちらりとカースたちを見る。
「広大な領地に、長年かけて蓄えてきた兵力。それにガイアの加護まであった。君たちがあれだけ苦戦したのも、当然だよ」
そこで、アズラエルは小さく肩をすくめた。
「ただ、精霊の力そのものの純度や深さで言えば、中堅どころだ。だから、君たちが倒したこと自体は、七大貴族の中でも特別おかしなことじゃない」
「……なるほど」
カースは、静かに頷いた。
「じゃあ、氷のフロストは?」
ウォルターが身を乗り出した。
「フロストは、別格だったよ。氷の一族の中でも、当主として代々受け継がれてきた加護の深さが、桁違いだった。あれと一対一で正面からやり合ってたら、正直、ボクでもちょっと骨が折れてたと思う」
「他にもまだ、四つ、残ってるわけだよね」
カースが尋ねる。
「風、水、雷、そして光の王家。それぞれ、どんな連中なの」
「そうだね。せっかくだから、一通り、話しておこうか」
アズラエルは指先で紫電を軽く弾きながら続けた。
「まず、風のエアハルト。あそこも、油断しない方がいい」
アズラエルの表情が僅かに引き締まった。
「風のエアハルトは、フロストと並ぶくらいの上位格の相手。当主のシルヴァンは二枚舌で有名だが、その裏で蓄えてきた情報網と、機動力を活かした戦い方は、正面からの力比べとはまた違う厄介さがあるかな」
「情報網?」
「風の一族は、遊牧文化と商才に長けてる分、他家の何倍も広い範囲に目と耳を張り巡らせてる。どの家がいつ、どこを次に狙うつもりなのか――そういう情報こそが、あの一族の本当の武器だ」
その言葉に、カースたちの間に緊張が走った。これまでの力押しの敵とは、明らかに異なる種類の脅威が、この国のどこかにまだ眠っている。
「お前はどれくらい強いんだ?」
ウォルターが興味本位で聞いた。
「ボクは、貴族の中じゃ、変わり者だからね。純粋な加護の強さで言えば、七大貴族の当主の何人かは、ボクより上を行くと思うよ」
カースたちは、思わず息を呑んだ。
あれほどの力を見せつけたアズラエルより、さらに上の存在が、まだ何人かいる。その事実は、これから先の戦いが決して楽なものではないことを、改めて突きつけていた。
「そして――」
アズラエルは、そこで声の調子を僅かに変えた。
「王家、特にあの第一王子。エリオットとかいう坊やの精霊力は、ボクが知る限り、この国の誰よりも突出してる」
「エリオット」
カースの声に、複雑な色が混じった。
「彼の持つ精霊獣は、歴代の王家の中でも、最も高位の存在だと噂されてる。それに彼自身の加護の純度も、常軌を逸してる。精霊がこれ以上ないくらい深く、彼を愛してるってことさ」
アズラエルは焚き火の炎を見つめながら続けた。
「七大貴族の当主たちの誰であろうと、正面からあの王子一人に敵うかどうか。それくらいの格の違いがある」
「そんなに、なのか」
ウォルターが唸るように呟いた。
「うん。だからこそ、皮肉なんだけどね」
アズラエルは僅かに口の端を上げた。
「それだけの力を持ってる坊やが、その力を誰かを踏みにじるためじゃなく、誰かを救うために使おうとしてる。ある意味じゃ、この国で一番、危険な存在かもしれないよ」
「どういう、意味?」
カースが鋭く問い返した。
「そのままの意味さ」
アズラエルは肩をすくめる。
「純粋すぎる力ってのは、時に本人の意図とは関係なく、周りを大きく振り回す。呪術師くんの呪術と似たようなものかもね」
カースは何も言い返せなかった。
焚き火の炎が爆ぜる音だけが、しばらくその場に残った。
「さて、と」
アズラエルが伸びをしながら立ち上がる。
「話は、この辺にしておこうか。それより、シーク。さっき見せてもらった、あの風の力」
「何」
「もう少しだけ、コツを教えてあげるよ」
「お前に、教わるのは――」
「不愉快だってんでしょ。知ってるよ」
アズラエルは、くつくつと笑った。
「でも、強くなりたいんでしょ?」
シークはしばらく渋い顔をしていたが、やがて小さく息を吐いた。
「……教えろ」
「素直じゃないなあ」
その軽口の応酬を、カースは黙って見ていた。
まだ、足りない。まだ、遠い。
だが、ここで積み重ねた一つ一つが、次の戦いで自分たちを支える力になる。その感覚だけは、カースにもはっきりとわかっていた。
王都への道は、まだ半ばだった。
(第24話「氷の忠誠」へ続く)




