第7話 Q:どっちにつく? A:XXX
ラディカル国(俺がいたとこ)を出てから数日が経過していた。
久しぶりの魔物退治が思っていたよりも楽しい
もちろんそれは、八咫烏があまりにもいい切れ味だからだ。
よくみると、柄のあたりに名が彫ってあった。
もう、俺の手になじんでいる。ただ、生活苦になったらすぐ売ると思う。今のところ、できるだけ売りたくない、そのくらいの愛着度だ。
「とはいえ、いい刀だ。剣士になろうかな」
「青空、綺麗ですねえ」
「この刃紋とか凄くない?」
「あの雲、ステーキみたいな形してます」
野営しながら、俺たちは思い思いの時間にふける。あんまり会話は成立していない。
エレナは昼でも夜でも空を見ている。厄災の魔女と呼ばれ、多く人間を殺したらしいが、まったくそんな風には見えない。
まあ、襲ってくる気配もないし、気にすることでもない。
「そういえば、もうちょっとで森を抜けるはずだ。ただ、ここからどこへ行くか悩むんだよなあ」
「どこへ、とは?」
「この山に来たのは、四つの大国の真ん中にあるからだ。どこもデカいところだし、職にはあぶれないと思う。だからこそ、ギリギリまで考えようかなって」
「そうだったんですね。てっきり、何となく山へ来たのかと思いました」
「まあ、間違ってはないけど……エレナとはそこでお別れかな。もう誰にも捕まらないようにしろよ」
「……そうですね」
落ち込んだかのように下を向く。
色々不安もあるだろうが、俺も大人だし、彼女も大人だ。いや、おばあちゃんか。
俺たちは逃亡犯みたいなもんだ。
一緒にいればいるほど、危険は増す。これは、お互いのためでもある。
「さて、とりあえず前に進むか。もうちょっとで抜けて道が分かれるはずだ。そこで、また考えよう」
「はい。――――――――――待って」
するとエレナは、突然目をつむった。
え? なに? どっか移動するのか?
「どうした?」
「……魔力を感じます。それが、届いてきて」
「魔力? ――もしかして、追っ手か?」
「……いえ、この先です」
エレナが指をさした方向は、俺たちの進行方向だった。
……どういうことだ?
誰かが、魔物と戦っているのだろうか。
面倒なことに巻き込まれたくないが、そう言われれば気になるのが人間の性。
ひとまず確認だけしてみようと話しが決まり、急ぐことに。
10分ほど走ったところで、エレナは崖下だと言った。
俺も魔力を感じたりすることはあるが、彼女は飛びぬけて敏感みたいだ。
そう思えばいい見張り役だったのか。
「なんだ、あれ村……か?」
そこには、小さな集落があった。村とも言い難いのは周りを囲う柵があまりにも貧弱だからだ。
そして――。
「襲われて……いる」
エレナが囁いた通り、村は、盗賊か山賊のような奴らに囲まれていた。
驚いたのは、そいつらがやけに武装していたことだ。
こんな辺鄙な場所にいるとは思えないほどの装備。
頑丈そうな鎧に、遠目から見てもわかる統率も取れている。
後ろに控えてる数人は……魔術師か? なんだ、どういうことだ?
この村に宝物でもあるのか?
対する村人たちは20人ほどしかいなかった。
家を盾にして後ろに隠れている。
賊は入口側の家を破壊し、奥へと突き進んでく。
鷹のような位置で見ている俺たちからすれば、勝敗は火を見るより明らかだ。
あと数分で彼らの居場所はバレる。間違いなく殺されるだろう。良くて奴隷ってところか。しかし、男は女子供と違って輸送の際にリスクが生じる。
こんな山ならデカい馬車で輸送も大変だろうし、ここで処分されるだろうな。
「……なんで、みんなどの時代も争うの……」
隣のエレナの表情が怒りと悲しみで満ちているのがわかった。
手を握りしめ、唇を強く噛む。まるで、身体を押さえこんでいるように。
治癒はしたが、彼女の身体はまだ回復していない。歩いているだけで痛みで顔をゆがめたりもしている。
昔は強かったんだろうが、今は魔法で移動するの精いっぱいみたいだ。
「――今日の宿は決まったな」
「……え、アルスさんどういうことですか?」
俺は、愛刀の八咫烏を取り出した。
一応、今のところ売る予定はない。
「ちょうど、試し切りしたかったところだ。魔物じゃなくて、人間相手に。――ただ、ここから降りてちゃ間に合いそうにない。ちょっと遠いが、わかるよな?」
俺は、エレナの顔を見つめた。
彼女は、真剣な目つきで頷き、目をつむる。
エレナの銀髪がふわりと逆立っていく。
俺は、静かに肩に手を置いた。
「ちなみに聞くけど、どっち側につく?」
するとエレナは目を開き、横目で俺を睨んだ。
「村人側です」
「冗談だって。怒るなよ」
相手はしっかりとした武装集団だ。それも、戦えるのはおそらく俺だけだろう。何をしてくるかもわからない。魔法だって飛んでくるはず。
何より戦うのは非常にリスクが高い。
一人でも逃してしまえば面倒なことになるだろう。
俺とエレナのことは口づてでバレるだろうし、そうなるとルフ騎士団長の耳に入る可能性も高い。
大事そうな書類も全部奪ってきたから、必死になってるだろうしな。
つまり、勝つのは大前提だ。その上で、誰一人として逃がしてもいけない。
――でもまあ、逆境には強いタイプだ。
さて、今日は柔らかいベッドで寝られるといいな。
「――移動する」
そして俺たちは、戦場のど真ん中に移動した。
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