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第4話 殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる」


 移動する(リープ)で、ルフ騎士団長の書斎に移動した。

 エレナは、ずっと閉じ込められていたせいか、足が満足に動かないらしい。 

 それでも、うわ言のように繰り返しているのは、相当な恨みがあるのだろう。

 隣の部屋でルフ騎士団長がシャワーを浴びているようだ。

 ふんふんと鼻歌が聞こえてくることから、かなりの上機嫌らしい。


「エレナ、落ち着け。今は最高のタイミングなんだからな」

「……はい」


 案外素直だな。

 こっちの書斎は、見栄のために集めてきた本だ。

 俺は、それを知っているから移動してきた。


 エレナ(こいつ)の正体も知りたいが、それは後だ。

 隣の部屋に移動し、机を漁る。


 俺は仮にも宮廷魔法使いだ。

 捕縛するとなると、しっかりとした書類手続きを踏んでいるはず。


 最悪でも控えはあるだろうと踏んだが、残念ながら見つからない。


 単独で俺を? いや、兵士を動かしていたし、それも考えにくい。

 最悪、当人をとっちめることもできるが――。


「……あーめんどくさい」


 エレナの言う通り殺すか?

 そもそも、なんで俺こんなことにならなきゃいけないんだ。

 大事そうな書類を奪って、あとでゆっくり調べるか。

 そう思っていたら、机の細工に気づいた。


 ……隠し扉か。


 魔法で解除すると、出てきたのは俺の能力が詳細に書かれたものだった。


「何だこれは……そうか、こいつ俺を売るつもりだったのか」


 ほかにも、いくつかの魔法使いの詳細が書かれていた。

 俺のような治癒や結界は世界でも特殊だ。

 欲しがる連中は大勢いる。

 だがそれは本人のことじゃない。魔法だけが欲しいのだ。

 後ろ盾のない魔法使いは誘拐され、解剖され、魔法だけ抜き取られるということがよくある。

 それもあって宮廷魔法使いになったのだが……平民如きが、と俺のことを侮っていたのだろう。

 これが国単位で行っていることはわからないが、謎はすべて解けた。


 エレナを捕まえていたのも、その可能性が高いな。


「エレナ、行くぞ。でも、その前に復讐していい。ちょっとやりすぎくらいは許す。俺が、治癒する」

「……わかりました」


 俺たちは、ベッドで座って待っていた。

 すると、ルフ騎士団長がバスローブを羽織って出てくる。


「ふふふ、これで邪魔者はいなくなった。これで、私は次期――ほ、ほええええええ!?」

「よおルフ騎士団長、長風呂は心臓に悪いぜ」

「……殺、す」


 俺の姿に驚いた以上に、エレナを見て鼻水を垂らしていた。

 へえ、やっぱ恐ろしいやつなんだ。


「な、何でお前らここに――ひぎゃぁっあ!?!?」


 俺は、ルフ騎士団長が壁に飾っていた剣で右耳を落とした。

 叫び声を上げるも、しーっと指を立てる。


「俺を売るつもりだったみたいですが、残念ですね」

「ひ、ひぃ、な、なんでそれを……」

「エレナ、やっちゃっていいぞ。ただ一撃で殺すなよ。治せないからな」

「ひゃぁっ、や、やめろ。ば、バカが! この女が、何者かわかってるのか! 人間を大勢殺した、快楽殺人者だぞ!」


 へえ、そうなんだ。


「――黙れ」


 しかし、エレナは止まらない。

 よろよろと歩き、俺からもらった剣でルフ騎士団長と右腕を突き刺す。

 ぎゃあああっと叫ぶも、次は左腕だ。


 うーん、危ない奴だな。おいていく?


「や、やめ――」

「私は、何度お前にそう懇願した?」


 それから数十分、エレナはルフ騎士団長に復讐? し続けた。

 途中で治癒をして傷を戻し、何度も繰り返した。


 やがて秘書が現れ、俺たちは窓から飛び出した。


 今は、絶賛逃亡中だ。


「賊だ!」

「どこいった!?」

「クソ、ルフ騎士団長が血だらけだ!」


 幸い、この建物は北門からすぐだ。

 見張りもいるだろうが、問題ない。


 背中のやつは、ちょっと邪魔だが。


「どうして、私を置いていかないんですか」

「使えそうだしな。ここから出たら俺は追われる。一人じゃゆっくり眠れないし、見張り役がいるだろ」

「…………外に出られる」


 すると、20人くらいの兵士が前に立ちふさがった。

 連携がやけに早いな。いや、俺が警備体制を整えたほうがいいとずっと言ってたからか?

 すると、エレナが俺の背中を叩く。


「私は、置いていって――」


 こんな時に人の心配できるのか。

 なんだ、案外いいやつなんだな。

 ただ――。


「大丈夫だ」


 こいつらがルフの仲間かどうかわからない。

 無実のやつを殺すのは、俺の人道に反する。


 ――ってことで。


武器を(ウォプ)解除する(キャンセル)


 俺は、指をパチッと鳴らした。

 魔力の玉が飛んでいき、兵士たちにぶち当たる。


 直後、剣や盾が突風に吹き荒れたかのように吹き飛んでいく。


 そのまま何事もなかったかのように通り過ぎ、当然、門も開錠した。

 久しぶりの外だ。

 今までは仕事ばっかりで、休みも取ってなかったしな。


「……あなた、何者なんですか? 今の魔法、初めて見ました。兵士も驚いていましたし……」

「ただの人間だよ。それより、エレナはどうして人を殺したんだ? 俺には、あいつがいってたような快楽殺人者にはみえないけどな」

「……殺されそうに、なったから、殺しただけです」


 色々と過去がありそうだな。

 でもま、落ち着いてからでいいか。


「……助けてくれて、ありがとうございます」


 すると、後ろからぎゅっと俺を抱きしめた。

 子供みたいなやつだな。


「見張り役だからな。俺が寝てるときは起きててくれよ」

「わかりました」


 ほんと、素直なやつだ。

 そのとき、空にあった満月が隠れていくのが見えた。


 ……あ。


 こういうときは『暗殺者』たちがよく来るんだよな。

 俺がいないってことは、ルフ騎士団長が撃退しなきゃらないと思うが……結構な手練ればかりだった。

 古代装備(アーテファクト)を狙ってきていると聞いていたが、今思えば、それすらも怪しいな。


 ルフ騎士団長たちで勝てるのか? まあ、俺が心配することじゃないか。


コメントや評価いただけると大変嬉しく存じます……!

ランキング、上がってみたいです。

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