表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/33

第32話 決戦のとき

「ふう、これで大丈夫だな」


 外壁の結界に加えて、村の周りに何重にも防御魔法を展開した。

 魔法解除できないように更に結界を付与しているので、いつもよりかなり疲れた。

 

 目が霞み、少しふらつく。


 しかし、俺の体が何かに支えられたかのようにビシッとなった。

 薄い黒煙が俺の体を囲っている。


「大丈夫ですか? アルスさん」

「ありがとう。――けど、魔法はビビるぜ。危うく斬りかかるところだった」

「あ、す、すいません!? 咄嗟のことだったので」


 慌てふためくエレナ。

 俺と違って綺麗な黒髪だ。

 目鼻立ちもハッキリしているし、よく見ると相当な美人だよな。


 にもかかわらず、厄災の魔女だなんて言われて追われ続けた。


 最近まで牢獄で拷問されていただなんて、ありえない。


「アルスさん、どうしたんですか? 私の顔に何かついてます?」

「目と鼻と口だな」

「それ、大体みんなついてますけど」


 初めて会ったときは少し恐ろしくもあったが、素はこっちなんだろうな。

 といっても、ルフ騎士団長に会ったら再び牙を出しそうだが。


「それよりエレナ、大丈夫か?」

「何がですか?」


 ゆっくり歩み寄り、エレナの肩に手を置く。


「無理すんなよ。今ここに乙葉は――えーと、ちょっと魔力探知する」


 あいつちゃんと忍びだから気配うっすいんだよな。

 王城に忍び込もうとしてきたときも、見つけるの大変だった。


 よし、誰もいないな。多分、リリのところか。



「誰もいない。だから、俺の前では気を遣わなくていい」

「私は普通ですよ?」

「いいから」

「何が……私は別に――あら、おかしいな。おかしい。体が、ちょっと、なぜか震えて」


 俺は、エレナの手を掴んだ。

 リリからルフ騎士団長が村にくるかもしれないと報告を受けたとき、表情が暗くなっていくのがわかった。

 どれだけ仕返しをしたとしても、自分をずっと拷問してきた相手だ。

 怖くないわけがない。


 特に今は平穏だし、そう思うだろう。

 落ち着くまで手をおさえて、そして涙をぬぐってやる。


「安心していいよ。俺がいるかぎり、エレナに手は出させない。エレナの周りにいる奴もそう。この村も、乙葉も、リリも、アナグラムも、全員、傷一つつけさせやしないよ」


 ずっと気を張っていたのだろう。

 張り詰めた糸が切れたかのように身体を震わせる。


 うすうす気づいていたが、なかなか声を掛けられなかったしな。


「ありがとうございます。でも、アルスさんに頼るだけは嫌です。――みんなのためにも戦います」

「……無理すんなよ。でも、頼りにしてるよ」

「ありがとうございます。私もです!」


 元気になって何よりだ。

 それと、体もかなり回復したらしい。

 パレット村の温泉がなければ、もっとかかっていただろうな。


 そして俺の魔力もほぼ元に戻った。

 体調も良いし、いつでもかかってこいって感じだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「我が秘宝、八咫烏(やたがらす)と魔法手錠を奪い返す! これは、正義のためだ! 標的は反逆者であり、元宮廷魔法使いのアルス・ギルバート。並びに厄災の魔女、エレナ! そして忍びの乙葉と名乗る女! 聖女で元暗殺者で現役商人と噂のリリである!」


 第三騎士団長、ルフが声を張り上げる。

 国全体の兵士は動かせないものの、一般兵士を合わせると千人ほどが陣列を整えていた。


 各々、アルス・ギルバートの名を知っている。

 ただ表にあまり姿を現すことがなかったので、その存在は希薄だった。


 また、厄災の魔女については史実で知っているものも多い。

 どちらかと言えば、エレナを恐れているものが大多数であった。



 だが、その後の二名については兵士たちにも正体は不明だった。


「乙葉とリリって誰だ? 知ってるか?」

「いや……聞いたことないな。ルフ騎士団長、最近大怪我してただろ? 右腕吹き飛んで治療してもらったり、頚椎がイカれちまって治療に財産をつぎ込んだって話だ。多分、そいつらにやられたんじゃねえかな」

「ってことは、噂は本当なのかよ? アルス・ギルバートが、敵をずっと退けていったって」

「……どうだろうな。でもま、俺たちは国に忠誠を誓った。家族のためにも上には従う。それが例え間違っていてもだ。それが、兵士のすべきこと。法律を厳守する義務だ」

「お前、いいこというじゃねえか。――死ぬなよ」

「お前もな。そういえば、話したいことがあるって言わなかったか?」

「ああ、この戦いが終わったら結婚しようと思うんだ。前に話してただろ。仲良くしてる女がいるって」

「マジかよ。そりゃ五体満足でかえらなきゃな」

「不吉なこというなよ。でもま、その通りだ」


 国に忠誠を誓った兵士たちの結束は固く、厄災の魔女の存在がより強固にさせていた。

 

「それでは出発する! 諸君らの勇気と行動に感謝を!」


 ルフ騎士団長は馬に乗り、そして若干前かがみで出発した。


「まだ腰が治ってないらしいぜ」

「五体満足では帰れないだろうな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ