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第31話 商人がやってきた

「やぁ、こんちゃーす! リリちゃんから伝書鳩でピューッととんでもない話を聞いたので、ババーッと来ました! デーンって登場! コルです!」


 商人がやってきた。


 名前はコル。

 種族はドワーフで女性だ。

 ふわふわの赤毛に明るい笑顔が特徴的である。


 俺の認識では、ドワーフは寡黙な人が多い。

 男性も女性も物静かで聡明で、仲間に対しては優しいものの、他種族に厳しい。


 が、商人コルはその真逆のような性格だ。

 ニコニコしながら身振り手振りで挨拶をしてくれて、目が合う人全員にペコリと頭を下げる。


 リリの友人ということで少し警戒していたが、もの凄く安心できそうな感じだ。


「コルちゃん、やっぱり早いですね」

「いやいや、あんなお手紙もらったらバシュッと来ますよ!」


 擬音が多いのも陽気に一役買っているが、実際めちゃくちゃ早い。

 ミフィ国までの道のりを考えると、伝書鳩が届いてから半日もたたずに出発したのではないだろうか。

 商人とは、やはり決断力が大事なのかもしれない。


 かくいう俺はその日のおやつを決めるだけでも数時間悩むタイプ。

 今日はお団子にしました。余談。


 今は俺の家に来てもらった。

 エレナが、畑で獲れた魔力メロン、通称ウォーターメロンを出してくれる。


「どうぞ、美味しいですよ」

「ありがとうございます! いやはや、妹さんですか?」

「乙葉だ。主に仕えている」

「なるほど! いいですねえ!」


 エレナの後ろで目を細めている怪しい乙葉を妹と呼ぶあたり、肝が据わってそうだ。


「しかしアルス様! なかなかどうして、キリっとしたカッコイイ人ですね!」

「あ、ありがとうございます。ええと、名前は呼び捨てでも」

「そう? ならアルちゃんで! 敬語なしでいいですよ! あたしはこの喋り方に慣れ親しんでるだけなんで!」


 凄い距離の詰め方だ。しかし嫌な気はしないな。


「そうか、なら遠慮なく。――コル、でいいかな?」

「バッチリっす! いやー、パレット村は凄いところにありますねえ! 四つの大国のど真ん中! なかなかどうして、良い所も悪い所もありますが!」

「良い所は、もしかして税のことか?」

「そうそう! さすが、わかっていますねえ! この村はどこにも属してません。つまり、今のところは無税ってことですよね? そりゃ商売繁盛言うことなし。関税もなしとなれば、お貴族様もグヘヘって喜ぶもんですよ! ま、ぼちぼち村長さんが決めていけばいいことですが!」


 コルの言う通り、俺も税金についてどうしようかと考えていた。

 今までは特に集めていなかったらしい。自給自足をしていたし、野菜をまとめて販売するときはその国の税を納めていたしな。

 ただ、今回は桁がまったく違う。

 ドナーさんが作ってくれた武器や防具は魔法を切り裂き、魔法を防ぐ。

 忖度なしに言っても、王家が欲しがるほどの武具だ。

 それを関税もなしで輸出するのはありえない。

 話し合いでも、村から発展させていくことで意見がまとまっていく。


 元々は平和でのんびりしていただけだが、このあたりもちゃんと決めていかないとな。


 コルは商人だけあってかなり詳しかった。

 四つの国の関税や税金などの書類をまとめてくれて、どのくらいが適しているのかを勘定してくれた。


 あくまでもコルは仲介手数料にとどめておくとのこと。

 そしてそれは、俺が想像していたよりもはるかに安かった。


「流石にもっと取ってもいいんじゃないか? いや、俺が言うのもあれだが」

「あはは! アルス様は見た目と違ってお優しいんですねえ! コルはドキっとしましたよ! でも、大丈夫っす!」


 サラっとひどいこと言われた。俺ってそんな悪人面か? いや、確かにちょっと目は怖いと言われるかも。


「確かに武具は魅力的っすけど、頻繁に売り買いするもんじゃないですから! それよりこの村の特産物に興味がありますねえ!」

「特産物?」

「はい! この畑から取れる野菜、めーーーっちゃくちゃ美味しいじゃないですか! あと、このウォーターメロン! もう、舌がとろけるほどトゥルンって!」


 魔力メロン、通称ウォーターメロンは、村を移動してから出来た畑から取れる果実だ。後から気づいたことだが、川の近くに村を移動させたことで、魔力と温泉水と水がいい具合に混ざっていつもより多く収穫ができると村人が喜んだ。


 確かに美味しい。俺も毎日食べている。

 

「これ、ここだけの話っすけど、多分凄い利益でますよ?」

「え、そうなの?」

「果実は老若男女問わずですからねえ。これほど質がいいと貴族にも売れるでしょうし、そうですねえそうですねえ。畑も増やすとして」


 何やらパチパチと石板のようなものでお金の計算を始める。

 それから算出してくれたのは、村人20人が遊んで暮らせるほどの年間利益だった。


「……凄くないか?」

「いいですかアルちゃん!  メロンは食べたら無くなる。つまり、常連さんがつくんですよ!」

 

 なるほど、それはそう。俺も、このメロンなしではもう生きられない身体になった。

 ちなみにだが、「魔力回復」「滋養強壮」「美容効果」もある。

 そのことを伝えると、さらに利益が二倍になるという。


「武具もとーっても素晴らしいです! でも、あんまり売りすぎるとみんな目つけちゃいますからねー! あくまでも自衛手段で自国で保管しておいて、メロンで商売繁盛が、あたしのおすすめです! ドーンですか?」


 リリいわく、コルはかなりやり手の商人だという。

 一代で築き上げたデカい事業がミフィ国にあるらしく、一番偉くなっても、まだまだ現役でいるとか。


 でも確かに俺も聞いたことがある。やり手のドワーフがいると。

 それがまさか、コルだったとは。


 

 もちろん村人達にも聞いて回った。

 ここまでの値段が本当につくのかと疑心暗鬼だったが、喜んでもらえるなら嬉しいと快く承諾。

 武具は、ひとまずミフィ国の王家に見せてみるそうだ。


「そんなこと、できるのか?」

「こうみえてあたしはなかなかどうして、オオーっと信頼されてますからねえ!」

「なんか、わかる気がするよ」


 リリとコルが仲良くなったのは、聖女教会の繋がりだそうだ。

 慈善活動にも積極的で、恵まれない子供たちに多額の寄付をしているという。


 さらに商人としての才能もある。こんなの、手を組まない理由はない。


「じゃあコル、パレット村の取引を一任してもいいか?」

「もちもちもーちっと任せてください! ウォーターメロンも武具も、全部お任せください!」


 こうして俺たちの村に心強い味方ができた。



 そしてこの出来事をきっかけに、パレット村はすさまじい飛躍を遂げることになる。

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