表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

第25話 情報多可

「アルスの兄貴、凄すぎますよこの剣……金貨1000枚はくだらないんじゃないっすか?」

 

 アナグラムが、ドナーさんに作ってもらった剣を褒める。


 試作品をいくつか作ってもらった。

 試しにアナグラムに使ってもらって、村の周辺の魔物を狩ってきてと頼んだ。

 数時間後に戻ってきたアナグラムは、大量の魔石を持って帰り、この一言。


 魔物は魔力を帯びているので耐久力が高い。

 しかし、この剣は魔力を切断する力を持っている。そのため、通常の剣を遥かにしのぐ強さを持っているということだ。


「うーん、やっぱりそうだよな。――じゃあ、これどうするか……」

「楽しくなっちゃって、いっぱい作っちゃいましたもんね。ドナーさんもノリノリでしたし」


 エレナは、両手でも抱えきれないほどの剣を持っていた。

 ちなみに金貨1枚で田舎なら家が余裕で経つ。

 全部売ることができれば、この村はより豊かなものとなるだろう。

 何より経済効果は計り知れない。

 今はまだ武器だけだが、防具なんてそれこそ貴族が欲しがるだろうな。

 自らの命に直結することには金を惜しまない人種だ。


 ただ、そのためのコネが俺たちにはない。

 貴族の知り合いも何人かいたが、すべてボルド国にいる。

 なおかつ、俺は指名手配されているだろうから、まともな取引は望めない。

 よって、商人の存在が必要だ。

 それも腕利きで信用できなければならない。


 武器や防具の取引ってのは非常に危険な商売だ。

 果実や特産品と違ってほしがるやつはごまんといる。

 輸送中に襲われることは多々あるし、取引の最中にその場で殺される場合もあるだろう。

 しかし一番は相手に信頼されること。



 人脈があって、強くて、信頼できる、商人。



 ――そんなのいるかよ!!!!


「とりあえず、アナグラム持っててくれ。これ、仲間の分」

「え、いいんすか? これ持って逃げるかもしれませんよ?」

「そんなことしないってわかってるさ。その代わり、何かあったら――」

「パレット村は、俺たちが守ります」


 まだ数日というのに、随分と気に入ってくれようだ。

 気候は良い、畑の野菜は美味しい、温泉入り放題。


 最高だよな。


「じゃ、仲間に持っていきます! あいつら、喜ぶだろうなあ!」


 中腰でウス、と挨拶だけして去っていく。

 うーん、なんか若返ったな、あいつ。


「アルスさんのことが大好きですねえ」

「……は? どういう意味だよ。エレナ」

「え? わからないんですか? どう考えてもそうじゃないですか。尊敬してるんですよ」


 身に覚えがない。むしろ、戦いを挑まれて返り討ちにしたくらいなんだが。


「勘違いだな」

「はあ、男心に気づかないなんて」

「それをいうなら女心じゃないのか?」

「今の時代に適応できていませんねえ」

「ずっと牢獄にいたのにわかるのか?」


 俺としては軽い冗談のつもりだったのだが、エレナにはクリーンヒットしたらしい。目と口を開き、わなわなと悲しそうにする。


「主、いじめられたのですか!?」

「来ると思ったよ。乙葉」

「アルスさんが、とんでもなく私を虐めました」

「……私が、必ず、この手で」

「やめろ。それより乙葉、どこにいたんだ? 姿が見えなかったが」

「私のこの村での仕事は誰よりも早く敵を察知することだ。普段は、警戒を怠っていない」

「つまり?」

「見張り塔にいた」


 見張り塔は今や乙葉の城である。

 梯子で上に上がると、一段と見晴らしがよく、どこまでも見渡せる。

 しかし乙葉はそこがいたく気に入っているらしく、毛布やお菓子を持ち込んでまるで秘密基地だ。

 仕事はしているというので信頼はしているが、なんでみんなこの村で幼児化していくんだ?


 ――いや、そりゃそうか。


 ここは誰からも邪魔されないし、誰に気を遣うこともない。

 そんな場所だからこそ、余計な雑念が入らないのか。


「それで、私との再戦はいつだ? 約束通り、私は仕事をした」

「もうちょっと待ってくれ。色々、落ち着いてからいいだろ」

「ふむ……それでドナー殿の名刀は売りさばくのか? この村を発展させるならば、価値を高める必要があるだろう」


 乙葉にしちゃ鋭いことを言うな。

 このままだと、他国が攻めてときに奪われるだけになってしまう。

 俺たちがここにいることで資産価値を生み出す。それを理解してもらわなきゃいけない。


「乙葉、商人の知り合いはいるか?」

「私の里にそんな奴はおらん」

「だろうね。エレナは?」

「……私に友達なんて……もうずっと何十年も……」

「主ぃ!」


 どうやら地雷が結構埋まっているみたいだ。

 いや、俺の気が利かなすぎるか? 申し訳ないので、「ごめんね」とは伝える。


「アルス、お前には大勢知り合いがいただろう。私のような、命を狙っている奴らが。その中に一人ぐらい使えそうなやつはいないのか?」

「使えそうって……」


 乙葉の言う通り、あの王城で暗殺者のような奴らは何人もいた。

 何の目的だか知らないが、今思えばルフ騎士団長とかがお宝を盗んでたんだろうな。

 そうとも知らず俺は……ん、そういえば。


「いたかも。商人」

「え!? いるんですか!?」


 倒れこんでシクシク悲しんでいてエレナが、立ち上がる。


「うーんでも信頼できるかどうかはわからない。ただ、商人で、聖女とも言ってた。あと、殺し屋って。聖女の服は着てるから、一応本当だと思う。ネックレスも、誰かから奪ってなければ実際のものだったし」

「……創作の人物ですか?」

「いや実際の人物だよ。――乙葉も会ったことあるだろ?」

「……あいつは、化け物だ。たとえ商人だとしても、頼む相手ではない」


 乙葉がここまで言うのも驚いたが、俺から見てもヤバイ。

 気になったエレナに対して、乙葉が耳打ちする。


「ええ、いつも履いてないんですか!?」


 なんせ、いつもノーブラノーパンだったからな……。


 リリ(・・)は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ