第25話 情報多可
「アルスの兄貴、凄すぎますよこの剣……金貨1000枚はくだらないんじゃないっすか?」
アナグラムが、ドナーさんに作ってもらった剣を褒める。
試作品をいくつか作ってもらった。
試しにアナグラムに使ってもらって、村の周辺の魔物を狩ってきてと頼んだ。
数時間後に戻ってきたアナグラムは、大量の魔石を持って帰り、この一言。
魔物は魔力を帯びているので耐久力が高い。
しかし、この剣は魔力を切断する力を持っている。そのため、通常の剣を遥かにしのぐ強さを持っているということだ。
「うーん、やっぱりそうだよな。――じゃあ、これどうするか……」
「楽しくなっちゃって、いっぱい作っちゃいましたもんね。ドナーさんもノリノリでしたし」
エレナは、両手でも抱えきれないほどの剣を持っていた。
ちなみに金貨1枚で田舎なら家が余裕で経つ。
全部売ることができれば、この村はより豊かなものとなるだろう。
何より経済効果は計り知れない。
今はまだ武器だけだが、防具なんてそれこそ貴族が欲しがるだろうな。
自らの命に直結することには金を惜しまない人種だ。
ただ、そのためのコネが俺たちにはない。
貴族の知り合いも何人かいたが、すべてボルド国にいる。
なおかつ、俺は指名手配されているだろうから、まともな取引は望めない。
よって、商人の存在が必要だ。
それも腕利きで信用できなければならない。
武器や防具の取引ってのは非常に危険な商売だ。
果実や特産品と違ってほしがるやつはごまんといる。
輸送中に襲われることは多々あるし、取引の最中にその場で殺される場合もあるだろう。
しかし一番は相手に信頼されること。
人脈があって、強くて、信頼できる、商人。
――そんなのいるかよ!!!!
「とりあえず、アナグラム持っててくれ。これ、仲間の分」
「え、いいんすか? これ持って逃げるかもしれませんよ?」
「そんなことしないってわかってるさ。その代わり、何かあったら――」
「パレット村は、俺たちが守ります」
まだ数日というのに、随分と気に入ってくれようだ。
気候は良い、畑の野菜は美味しい、温泉入り放題。
最高だよな。
「じゃ、仲間に持っていきます! あいつら、喜ぶだろうなあ!」
中腰でウス、と挨拶だけして去っていく。
うーん、なんか若返ったな、あいつ。
「アルスさんのことが大好きですねえ」
「……は? どういう意味だよ。エレナ」
「え? わからないんですか? どう考えてもそうじゃないですか。尊敬してるんですよ」
身に覚えがない。むしろ、戦いを挑まれて返り討ちにしたくらいなんだが。
「勘違いだな」
「はあ、男心に気づかないなんて」
「それをいうなら女心じゃないのか?」
「今の時代に適応できていませんねえ」
「ずっと牢獄にいたのにわかるのか?」
俺としては軽い冗談のつもりだったのだが、エレナにはクリーンヒットしたらしい。目と口を開き、わなわなと悲しそうにする。
「主、いじめられたのですか!?」
「来ると思ったよ。乙葉」
「アルスさんが、とんでもなく私を虐めました」
「……私が、必ず、この手で」
「やめろ。それより乙葉、どこにいたんだ? 姿が見えなかったが」
「私のこの村での仕事は誰よりも早く敵を察知することだ。普段は、警戒を怠っていない」
「つまり?」
「見張り塔にいた」
見張り塔は今や乙葉の城である。
梯子で上に上がると、一段と見晴らしがよく、どこまでも見渡せる。
しかし乙葉はそこがいたく気に入っているらしく、毛布やお菓子を持ち込んでまるで秘密基地だ。
仕事はしているというので信頼はしているが、なんでみんなこの村で幼児化していくんだ?
――いや、そりゃそうか。
ここは誰からも邪魔されないし、誰に気を遣うこともない。
そんな場所だからこそ、余計な雑念が入らないのか。
「それで、私との再戦はいつだ? 約束通り、私は仕事をした」
「もうちょっと待ってくれ。色々、落ち着いてからいいだろ」
「ふむ……それでドナー殿の名刀は売りさばくのか? この村を発展させるならば、価値を高める必要があるだろう」
乙葉にしちゃ鋭いことを言うな。
このままだと、他国が攻めてときに奪われるだけになってしまう。
俺たちがここにいることで資産価値を生み出す。それを理解してもらわなきゃいけない。
「乙葉、商人の知り合いはいるか?」
「私の里にそんな奴はおらん」
「だろうね。エレナは?」
「……私に友達なんて……もうずっと何十年も……」
「主ぃ!」
どうやら地雷が結構埋まっているみたいだ。
いや、俺の気が利かなすぎるか? 申し訳ないので、「ごめんね」とは伝える。
「アルス、お前には大勢知り合いがいただろう。私のような、命を狙っている奴らが。その中に一人ぐらい使えそうなやつはいないのか?」
「使えそうって……」
乙葉の言う通り、あの王城で暗殺者のような奴らは何人もいた。
何の目的だか知らないが、今思えばルフ騎士団長とかがお宝を盗んでたんだろうな。
そうとも知らず俺は……ん、そういえば。
「いたかも。商人」
「え!? いるんですか!?」
倒れこんでシクシク悲しんでいてエレナが、立ち上がる。
「うーんでも信頼できるかどうかはわからない。ただ、商人で、聖女とも言ってた。あと、殺し屋って。聖女の服は着てるから、一応本当だと思う。ネックレスも、誰かから奪ってなければ実際のものだったし」
「……創作の人物ですか?」
「いや実際の人物だよ。――乙葉も会ったことあるだろ?」
「……あいつは、化け物だ。たとえ商人だとしても、頼む相手ではない」
乙葉がここまで言うのも驚いたが、俺から見てもヤバイ。
気になったエレナに対して、乙葉が耳打ちする。
「ええ、いつも履いてないんですか!?」
なんせ、いつもノーブラノーパンだったからな……。
リリは。




