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第17話 外壁を作って、何人たりとも入れないようにしよう

「忍びの乙葉と申します。本日付けで、村の隠密として雇われることになりました。詳しいことは主様にお聞きくださいませ」


 村人たちは、見知らぬ黒装束の女に怯えていた。

 おそらく、また新しい山賊のような奴らでも捕まえてきたと思ったのだろう。

 しかし、乙葉はすぐに片膝をつき、丁寧すぎる挨拶で安心させる。


 律儀というか、何というか。

 すると、8歳の娘を抱きかかえたまま、アンネさんが一歩前に出た。


「あ、あのアルスさん、いや主様これはどういうことですか?」

「いやアンネさんの適応早いな。あと、俺じゃなくて、主はこっち」

「え?」


 村人たちが、一斉にエレナを見る。そりゃわけわかんないよな。

 俺も、毒で死ぬところを助けたら恩義を感じて仕えてもらったと聞いたときは驚いた。いや、笑ったの間違いだった。


「え、まあ、ちょっと色々ありまして……ただ、安心してください。乙葉さんは、村のために尽力してくれるそうです!」


 説明になっているようで、まったくなっていない気がする。

 そもそも、隠密として雇われることになりましたってなんだ?

 村人たちもそれで納得できるわけが――。


「また村人が増えたのか、嬉しいな!」

「ああ、それも隠密だ!」

「嬉しいことだな!」


 いやするんかい!

 ベルフルが仲間になったことで、村人たちの順応性も上がってきている気がする。

 そもそも、隠密って何するのか俺にもよくわかってない。


「主、乙葉に何の仕事をさせますか?」

「怒りますよ。アルスさん」

「冗談です。まあでも、乙葉、これからよろしくな。今までのことは水に流して仲良くやろうぜ」

「……そうだな。ひとまずは休戦だ。両腕を吹っ飛ばしたり、私の目を潰したことは忘れておいてやる」


 乙葉が余計なことを言ったので、エレナがドン引きしている。

 いや言わないけど、あなたも厄災の魔女だったんじゃないの!?


 ま、まあいい。


 ひとまずそういうことだと伝えて、事なきを得る。

 ただ乙葉は俺と同じで戦うことしか知らないだろう。普段、何をするのか悩むだろうな。

 そのあたりは誘った俺が色々と順応させてあげないと。







「乙葉~、待てー」

「はは、私は忍びだ。誰にも捕まえられないぞ」

「乙葉さんって感じのいい人ね」

「さっき、薬草が欲しいなっていったらすぐとってきてくれたわ」

「乙葉大好き!」


 と、思っていたら半日ほどで村人から乙葉の好感度がグングン上がっていた。

 子供と元気に遊び、村人が困っていたらどこからともなく駆けつける。

 おいおい、凄すぎるじゃないか。

 でも考えたら善人側というか、正義のほうだもんな。むしろ当たり前か?


 ……うーん、俺は捕まえられるんだぞ! っていうべきか?

 いや、あまりにも小物すぎる。


「アルスさんのおかげで賑やかになってきましたね」

「え? どういう意味だ、エレナ」

「ここにいる人たちは、みんなアルスさんと縁があってきています。きっと、これからも増えていくんだろうなと思いました」


 彼女の言う通りではあるが、縁というべきか?

 でも、前向きに捉えるのがいいな。それに、段々とこの村に思い入れができてきている。


 ずっと、ここで過ごしたいほどに。



 夕日が落ちると、村人たちはそれぞれ家に入っていく。

 今日たっぷりと顔を見せてくれた乙葉が、俺のもとに歩いてくる。


「よお、楽しかったか?」

「……私は忍びだ、そんなこと考えたこともない。――と、言いたかった。しかし、この村は良い。自然にあふれていて、里を思い出すよ。村人たちも笑顔で、子供たちも元気で良い。アルスと主がここを拠点にした理由がわかったよ」


 里ってのがよくわからなかったが、気に入ってくれたようで嬉しかった。

 なんか、もう俺も村人側の気持ちになったみたいだ。


 しかし、フッと乙葉は真剣な顔つきになる。


「だが、どうするつもりだ」

「何がだ?」

「お前ならわかっているだろう。確かに、強力な結界魔法が張り巡らされている。手練れの魔術師でなければ解除はできないだろう。それにベルフルたちを手なずけていることにも驚いた。それでも、手練れのパーティーが来ただけでこの村は危険だ。その理由は、わかるだろう?」

「そうだな。あまりにも外側から見えやすすぎる」


 村の周りの結界は、特定の人物しか通さないようにしている。

 手の甲に魔法を付与し、もしそれがない場合は攻撃魔法が放たれるのだ。

 しかし根本的な解決じゃない。乙葉の言う通り魔法ってのはどうしても解除側のほうが有利だ。既に張っている結界を解析されれば終わり。

 だからこそ、もう一つの壁を作る必要があった。


「結界を二重にするというのか?」

「いや、違う。一番簡単で、それでいて当たり前のことだよ」


 どこの国でも、街でも、必ず最初に作る物だ。

 しかし、それを作るということは誰かから見られたときに威圧することになる。

 それでも、村を存続させるには必要なもの。


「まさか――」

「結界を含んだ外壁を作り、村を、町に発展させていく」

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