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第10話 村を要塞にするために現状を把握しよう

村を守るためには、まずは様々なことを把握しなければならない。

 誰がどこの家なのか、魔獣はどんなのがいるのか、土地の特性など。


 よって、まずは村を案内してもらっていた。


「昨日寝泊りしていただいたのが村長のお家です。一番後ろにありまして、壁があるので安全ですね」


 親切丁寧に教えてくれている女性はアンネさんだ。

 昨日、エレナが助けたお母さんでもある。年齢は二十前半と若く、娘さんは八歳らしい。

 今は、エレナに面倒を見てもらっている。

 ショートカットの黒髪で優しい声をしていて、いい人だとすぐにわかった。


「いや、むしろ逆だ。村長の家が一番危ないよ」

「え? どうしてですか?」

「侵入という面では確かに難しい。でも、投擲や攻撃を仕掛けるだけならむしろ簡単だよ」

「…………」


 今まで平和に暮らしてきたんだろう。

 何も敵は玄関から丁寧に来てくれるわけじゃない。

 四方八方、それこそ、崖下にあるこの村は特に危険だ。


「だったら、どうすれば……」

「考えてみるよ。次は生活環境についても教えてもらっていいかな?」

「は、はい。基本的に私たちは農業で自給自足していますが、作物が多いときは街へ売っていたりました。右手にある畑がそうですね」


 村は森に囲まれ、全体は崖から見えるようになっている。

 右手の大部分が畑になっていて、家畜小屋もいくつかあった。

 規模の割には広さもあって、暮らすにはとてもいい環境だ。

 その分、守るのは大変になるが。


「ここで獲れた作物は美味しかったよ」

「本当ですか? そう言っていただけると嬉しいです。昨日の料理は私が作ったんですよ」

「え? 村長がいってた料理人って、アンネさんだったの?」

「はい。娘と一緒に」


 そうだったのか。これはさらに気合を入れないとな。

 温泉は各家にもあるが、共同の浴場がある。


 ただ、言っちゃ悪いが村の全体的にガタが来ているようだった。

 そもそもほとんどの建物が40年ほど前に作られたらしい。

 このあたりも改築しなきゃいけないだろうが、今ここでいうのもあれだな。


 村についても詳しくなったところで、次は森や魔獣について教えてもらう。

 水は井戸を引いているが、近くに小川があるという。


 俺は、まずそこに目を付けた。

 村を強固にするには、水路が近くにあったほうがいい。

 井戸はどうしても汲み上げるのに時間がかかるし、炊事洗濯などにも使える。

 ただ、大きな問題が一つ。


「強い魔獣がいる?」

「はい。ベルファルという狼の魔物がいるんです。今まで大人しかったのが、嘘のように最近は狂暴で……それで近づけなくなっています」

「なるほど、それは大変だ――けど、いい情報だ」

「……え?」


 アンネさんが引いていたので、俺は慌てて説明する。


「ベルファルは主従関係を持てる珍しい魔物なんだよ。こっちが衣食住を提供すれば、主と認定し、守ってくれる。なにより、稀有な魔物だ。自然が多いところにしか生息しないからね」

「そうなんですね? どうしてそんなにお詳しいのですか? アルス様は、お貴族様ですよね?」

「え?」


 よく見ると確かに俺の服は宮廷魔法使いのままだった。

 高そうなローブで、そう見えたのか。


「いや、俺は平民だし、村出身だよ。ここよりはもう少し街に近かったけど、それでもアンネさんたちと変わらないよ」

「ええ、そうだったんですか!? それで宮廷魔法使い様までなれるなんて……凄いです!」


 ガッツポーズをしながら、アンネさんが満面の笑みで褒めてくれる。

 守りがいのある人だなと思いつつ、気合も入った。


「この村は初めからどこの領地でもなかったの?」

「いえ、初めはウォルスラ領の所有物だったと聞いています。そのときは巡回も来てくれていたみたいですが、税を納める量も少なく、代替わりとともに所有権を放棄されました」


 なるほど、コスト的な問題だったのか。

 新しい領主を探すにしても大国から睨まれている状況だと難しいだろうな。

 

 ――となると、独立できるほどの発展が必要か。


 よし、色々わかってきたな。


「アルネさん、みんなを集めてほしいんだけど、いいかな?」

「わかりました!」


 村の中心にみんなを集めてもらい、今後のことを話すことにした。

 みんな少し不安そうだ。これからどうなるのかわからないからだろう。


「まず、この村は四方八方から狙われる場所にあります。兵士百人ほどがきたらひとたまりもないでしょう」


 村人たちが不安そうに声を上げ、ざわめく。

 しかし、と続けた。


「ただ、村の場所を川の近くに移動させれば大きく改善します。さっき確認してきましたが、地盤もしっかりしていて、少し整地すれば問題ありません。何より、周りより一段高いので、敵からの視認が難しくなります」


「川の近くに拠点を移せれば、確かに楽になる」

「しかし、ふたたび村を作るなんて、とてもとても……」

「そうだ。一度解体するとなると、大変なことになる。移動したいのはやまやまだが……」


 みんな不安そうだ。大工だっているだろうが、一年かけてやることになってしまう。もちろん、その対策は考えている。


「はい。なので、この”村ごと”移動させましょう」

「……村ごと?」


 俺の言葉に、村人全員が首を傾げた。

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