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ボマー松永久秀の投資戦略  作者: 斎藤 恋
松永家拡大編

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第57話:中間(搾取)層を排除した

◇永正一六年七月

◆木津荘(高浜町宮崎・事代・塩土)


「これより、この地は我ら左京大夫様の物よ!」



「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」


宮崎の地で、道三らは鬨の声を上げた。

この地を実効支配していた国人らを打倒し、この宮崎の地を制圧したのだ。

戦力など、精々十数名しか残っていなかった為に、楽に制圧できたとのことだった。



あと、この辺りの戦闘描写などない。

行ってから何人かぶちのめした後、処……いや、まぁいなくなってもらっただけだ。

難しい戦略も戦術もないのだ。わざわざ、こんな戦もどきでこれ以上語る必要もあるまい。



問題は、この先だからな。



────────────────────────────


◆逸見邸



俺達、一色軍(松永家)が宮崎や事代、塩土を制圧し行った頃。

西の逸見家では、俺達一色家(松永家)を警戒する向きが強まっていた。



「あのまま、放置していて良いのか!!」


「しかし、未だこちらは戦力が整わん。宗滴めにやられた傷は大きい…。それに、彼奴らは一色を名乗っておるのだろう?」


「そうだ。しかし、それがなんだと言うのだ!?一色とはいえ、あの人形(一色九郎)や延永は何もせんではないか!」


「だが、放ってもおくまい。あやつらを放っておけば、一色の名はあちらのものとなってしまう。だからこそ、我らだけで動くのは愚策なのだ。……今になってあそこまで大きく動いておるということは、また、誰ぞかの支援でも得たのだろう。恐らくは朝倉かの…?」



逸見の長老の言葉には、一同も唸らざるを得なかった。

朝倉に受けた傷はそれほどまでに大きい。さらにその傷を抉るかのように、飢饉が起きたことも不味かった。

逸見家は、一年やそこらでは立て直せないほどの痛手を受けていたのだ。


戦力となる者は、多くはなかった。

それも、領内の防衛に要する者も入れるとなれば、侵攻軍など出せようもなかったのだ。もちろん、防衛となればそんな戦力でも出すだろうが。



「今は事を荒立てるな。何より、延永めを引き出せ。本来ならあやつの戦であろう。わざわざ、我らが火中の栗を拾う必要もあるまい。大体、あの地は今、武田のモノだっただろう?いい気味ではないか。我らから取り返した地を、あやつらめ飼っていた犬に奪われておるのだぞ?今は、静観しておれば良いわ。」



以後、逸見家は、延永の行動までの間この地への干渉はなくなった。

それだけ、逸見の傷が大きかったとも言えるが、朝倉の脅威が、その脳裏に刻まれていたとも言える。


だが、彼らの判断が松永家を後押ししたのも事実だった。

松永家も、逸見に備えていた為に、逸見家侵攻の際にも負けることはなかっただろう。


しかし、多大な損耗は受けただろうことは明白だったからだ。



「では、以降、一色への干渉は行わん。……皆、それで良いのだな?」


「おう」「えぇ」「構いませぬ」



逸見家の方針は、不干渉と決まった。




────────────────────────────


◆一色庄五郎道三


道三の占領後、結局逸見は訪れなかった。

こちらのことを認識していないはずもなく、不思議に思ってはいたが、それでもこちらが助かったことは事実だ。

負けるつもりもなかったが、それでも被害はあっただろうからな。



「兄貴!」



部下の一人、たつの奴が声をかけてきた。

コイツは、元々山﨑屋の護衛で、それ以前は山賊なんかもやっていたことのある生粋の野伏だ。

山野での戦いを心得ていて、大名や正規の武士などへとも思っていない。



「どうした?」


「いえ、逸見の野郎、すっかり腰砕けでさ。あの野郎共、こっちが挑発しても出てきやしねぇんでさ。」



辰は、勝手に挑発して勝手に帰ってきたらしい。

こっちが防衛に徹すると宣言しているのにいい気なものだ。

しかし、この行動もコイツにとっての理屈がある。



そこまでしても出て来ないのだから、あちらからの突然の侵攻はないだろうと伝えにきているのだ。


「そうか…。とすると、本気で侵攻する気はないのか。……策略の可能性はあると思うか?侵攻前に事を荒立てたくない、などだ。」



俺のその言葉に、辰は一瞬考え込んだが、それでもすぐに首を振った。


「いえ、ねぇでしょう。そもそも、あそこには大して兵が置かれていねぇように感じました。こっちの人数も精々が三〇ほどでやしたが、向こうも同数かそれ以下だったんじゃねぇでしょうか?」


「なるほどな……。本気で攻めて来ないか…。いや、それ以前に俺達が攻めとることができたってこともそうだが、守り面で戦力が足りてないのか……?」



俺はそんなことをツラツラと考えつつ、この辺りの地域も支配するために動き続ける。

この地でも逆らう連中は、ほとんどが古くから統治者に阿って、久秀がよく言う"既得権益"に繋がってきた連中だ。


俺達が支配すると宣言したすぐ後から、コヤツらは、これまで以上の要求を行ってきた。


『税を集めるのは我らの役目。これからも任せてくれていい』

『この辺りの通行税を集める役目を古くから……』

『船や船頭を扱うなら、俺達に……』


などなど…。


簡単に言ってしまえば、

「今まで通りの要求を認めろ。」

「できるなら、それ以上のものを寄越せ。」

「そうすれば、反乱を起こさないでいてやる」

と、そういうわけだ。



このク◯みたいな言い分には、当家の兵もキレまくっていたが…。

まずは、俺に報告すべきだろう。と思ったらしく、そのブチ切れた表情のままこちらへと向かってきた。


しかも、第一声が「兄貴、焼きましょう」だったのだから、そのキレっぷりがよくわかると言うものだ。


だが、それに適当な返事をしていては、コイツらの主人とは認められん。

だからこそ、「なんだ、それだけで良いのか?」と、俺も返してやった。


あぁ、もちろん、この時には何のことだかなんてさっぱり分かってないぞ?

けれど、こうした連中をまとめ上げるには、過激な一言が必須なのだ。



そして、内容を聞いた後、俺は焼くように指示……しなかった。

勿体無かったからな。



第一、久秀からも石山での話は聞いているのだ。

なら、やるべきはそれだろうと思い、「連中を引っ捕らえ、蔵を開け放ってこい」とだけ、コイツらには指示した。


実際、この方がウケが良かったよ。

普通に焼くだけだと、コイツらのちょっとした気晴らしになっただけだろうからな。



「コヤツらは不当に税を集め、己らの肥やしに使っておった!昨年、飢餓で無数の死者が出たのも、コヤツらが食糧を取り込んでおったせいに他ならん!よって、コヤツらの処刑を行う!コヤツらの処刑に反対するものがいれば声をあげよ!」



あぁいった既得権益者という者らをまとめ上げ、それぞれの村で処刑した。

もちろん、問題もある。

これからは、税を集めるのも大変になるし、各地から兵を集めてくるのも誰か別の者にやらせねばならんだろう。


だが、それでもそれをするだけの利が我らにはあったのだ。

この地の者の支持者を集めるという利が……。



「結局、反対者ってのは出ないんでやすね……。」


「出るわけあるまい。だが、それで良いのだ。俺達に逆らわないということを、あいつら自身が決めたということなのだからな。」


「へぇ…そんなもんですかい。」


「あぁ、そんなもん……らしいぞ?」


「らしいって兄貴…。」


「くくっ、受け売りだ。息子の、な。」


道三はニヤニヤと笑いながら、辰と告げる。



「流石は、松永の主人ですな。兄貴や俺とは大違いだ。ハハハハ」


「おいおい、俺だって寺の出だぞ?これでも神童とも言われてたんだからな?」



俺が、日蓮宗の寺で優秀だったことは事実だ。

まぁ、息子となった久秀はモノが違うが。



「はいはい。分かってやす。」


辰もそのことを知っているのか、いつものこととしてその言い分を流していく。



「本当に分かってんのか?コイツめ…。」


道三も分かった上でそれを流し、次のやるべきことを見定めた。



「まぁいい。それより、これでこの地は久秀に任せれば良いだろう。」


「えぇ、若……いや当主様なら、万全にやってくださいやすでしょう。……いえ、それ以上かもしれませんな。」


「……はぁ…、アイツはあれでも、満足しておらんのだからな…。やってられんわ。確か勝龍寺の僧の一人が言っておったの。虚空蔵菩薩の加護があるか、その生まれ変わりかのどちらかであろう、とか言うておったの。」


「…その虚空蔵菩薩というのは、知恵の神さんか何かで?」


寺出身の道三と違い、辰はそこまで、そういったことに詳しくないのだろう。



「あぁ。無限の知恵を持つと言われる神だな。弘法大使が、恩恵に預かったとも言われる方ぞ?」


「弘法大使様が…、ほぇ〜…。そりゃ凄まじい方との比較されますなぁ。若はそれほどの方と比肩されるほどですかい。」



弘法大使の名は、高野聖の存在によって、広く知られていた。

そんな方が、恩恵に預かったとされる神と比肩されるほどの知恵とあらば、弘法大使以上ということになる。

辰が驚いたのも、そんな点だ。


そこまでの知恵を持った方が、自分たちの当主で、内政官として領内の治世と発展に努めていらっしゃるのだから、これまでのような凄まじい成果も納得だ。と、そう感じているのだった。



「そのうち、若を祀った寺社ができそうですなぁ…。」


「あぁ、ありうるかもしれんな。」



辰と道三は、そんな未来を夢見て、宮崎に(木津荘)に用意された邸宅へゆっくり帰宅したのであった。


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◆地名について

和田→→→和田荘が正しい。

高浜町宮崎・事代・塩土→→→木津荘と呼ばれていた。

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