第05話:レベルアップした
◇永正11年7月
この年の夏は、祖父の七回忌があった。
どうにも、その際には日英さまや宣賢さま含めて、いく人かの僧侶らと共に実家へと帰らせてもらえるそうだ。
松永の利権や人手、僕の将来についてなど、様々なことをこの機会に話すとのことだった。
松永一族が、この時集まるため、いい機会なのだと宣賢さまが言っていた。
僕としても好都合である。
松永の本邸には、一般的な国人館にはないものがある。
それが、僕にとってはとても使い勝手がいいものなのだ。
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そうして訪れた、8月1日。
八朔の挨拶と七回忌、そして僕の廃嫡や勝龍寺への出家など、全てがまとめて行われ始める日だ。
まぁ、当然だが、一日では終わらない。
朝から近隣の国人や名主などから貢物を受け取り、当主らが酒を振る舞っていく。
午後からは、芳栄さまと宣賢さまが、読経を読み、僕もそこに参加させてもらった。
「今後はこういう仕事もあるんだぞ?」というのを暗に教えているつもりなのだろうか?
僕はするつもりなんてないが。
面倒極まりないそれらを終えると、夜は宴会だ。
幼児の肉体は、すでに疲れ切っているが、それでも僕は行動に移す。
………この時、この瞬間がチャンスなんだ。
皆が宴会で飲み騒ぎ唄い、下人や下女らも家の作業で忙殺される中、僕は一人、"から風呂"の方へと向かった。
から風呂というのは、いわゆる蒸し風呂のことだ。
蒸気の力で暖める、現代の岩盤浴に近いものだと理解して貰えばいいだろう。
座って入るか、寝て入るかの違いがあるくらいだろうか?
このから風呂の中に入りたいのだが、その方法がない。
普段から、子供や妖魔が入り込まないように厳重に戸締りされているらしい。
中の熱気が逃げないようにだろう。
扉さえも重く、子供の体では動かせないということもあって、中に入っての作業は断念せざるを得ないようだ。
周囲を見回ったが、石や燃料の木材が外にあるだけで、中に侵入する方法はなかった。
結局、この日は、燃料の石の一つに爆弾を仕込むだけで終わらせた。
けれど、不確実なんだよなぁ……。
どの石が使われるのか分からないし、そもそも、毎回使い終わった石が出されるかもしれない。
そう考えると、確実性に欠けるのだ。
「やっぱり、僕が入った時に細工するしかないか……。」
だが、まだ問題は尽きない。
もし、父親の正秀が「息子と入りたい」などと言い出した場合、僕に断る術がほとんどないからだ。
「まぁ、宣賢さまの弟子として振る舞っていれば問題ないか。……しかし、アピールだけはしておこう。」
細かい仕込みが、工作を助けるのだ。
こういう仕込みなしで甘い観測だけをしていると、思わぬところで足を救われるのは、前世でも経験済みだ。
「最後の時は近いぞ?僕の指示通りに動かなかったこと、僕を評価しなかったことを嘆くといい。」
そうして、8月2日。
運命の日が訪れる。
日中、訪れていた客が帰って行き、その対応に当主らが追われる中、僕たちは芳栄さま宣賢さまと、今後の話を詰めていた。
内容は、今後は勝龍寺での預かりになるという点と、僕が発明した商品の権利についてだ。
これらは正直、既に差し出したつもりだったので、別に惜しくもない。
交経格子も寒天も数独も、その辺りは全て、勝龍寺の利権にしてもらって構わないのだ。
ただ、「その代わり、こちらでは一切それに関連する仕事に関わらないことは約束させてもらう。」とそう伝えた。
1円にもならない無駄な奴隷労働なんぞゴメンである。
だが、そう伝えると二人は狼狽え、いくらか払うから手伝いを頼めないか?と言ってきた。
まだまだ、これらの作成に関するノウハウが足りないとのことだった。
「はぁ……、面倒な仕事は嫌なのですが…。では、販売額の半値を私が受け取るというのは?」
「流石に高すぎる。」
そうして、ここからは値段交渉が始まることとなる。
「んー……、では十分の四。」
「まだ高い。二十分の一ではどうだ?」
「少なすぎます。二十分の七。」
「大して変わっておらんだろう。四十分の三。」
「それはそちらでしょうに。二十分の三」
「十分の一。もうこれでいいだろう。」
「そうですね。それで決着といたしましょう。」
最終的に決まった額が、十分の一。つまり一割だ。
売値の10%が、今後僕の懐には入ってくることになる。
多少の労働と引き換えに、だろうが。
「宣賢。お主、算術を仕込みすぎではないか?これでは執事としても通用するぞ?」
「あ、いえ、私は仕込んでなど…」
「では、どのようにして覚えたと言うのだ…。お主が仕込まねば、こやつ一人で学んだと言うことになるぞ。」
それはその通りなのだが、僕がそれを言うわけにはいかない。
黙っているのが正解なのだ。
しばらくすると外から呼びかける声が聞こえてきた。
「芳栄さま、宣賢さま。風呂の支度が整ってございます。」
こうして、僕ら三人は、入浴へと移ることになった。
僕は弟子として、二人の背中を流していったのだ。
仕込みように持ち込んだ四つの爆弾を釜に放り投げながら………。
こうした入浴の場合、客人が先になり後が当主や家の者になるのが常だ。
客人が後になることはない。
だからこそ、僕はそのチャンスを待っていたのだ。
そして何より、この石棺(から風呂)が、僕の生みの親であるらしい父の最期の場所になる。
入浴後、部屋でゆったりしていた僕らは、父が入浴しているだろうタイミングを、幾度か厠に行きつつ図っていた。
そうして…………。
……ドゴーーーン!!!
大きな爆発音が鳴る。
石棺《から風呂》内部で、爆弾が爆発した音が。
僕はそれを聞き、すぐさま能力画面を開いた。
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◇基本属性
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・氏名
多聞丸(松永久秀)
・年齢
7歳(数え年)
・現在時刻
永正11年(西暦1514年)
・所在
山城国西岡
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◇スキル:爆弾生成
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・現在レベル
Lv.2
・累計殺害者数
1人
・威力(Lv.1〜2共通)
直径二m範囲にいるものを爆殺する威力。
現代の手榴弾レベルの爆発力がある。
・操作範囲(Lv.2)
20m範囲に存在する爆弾を自在に爆破可能。
初期状態から有効半径が拡張されたが、指定範囲を1ミリでも外に出れば一切反応させられなくなる制約は継続。
範囲に関しては感覚で分かる。
・特殊知覚
自身が爆弾化させた物体から発せられる固有の波長を常に感知。
無数に設置した爆弾の「存在」を直感的に把握可能。
・制約
一度の爆弾生成には、珪素を含んだ物質と250kcalの体内熱量が必要。
幼児の肉体だと、1日2個程度の生成が限界である。
必要珪素は、おおよそ卵サイズの石がひとつ程度で良い。
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◇次レベルへの要件
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・次レベルへの必要殺害数:10人(累計)
・Lv.3:操作範囲向上
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『累計殺害人数:1人!』
「っ!」
僕は声を出さずに、小さくガッツポーズをした。
これで、自由度が上がるのだ。
あとは………。
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◇人物紹介
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・主人公:多聞丸
将来の松永弾正久秀
年齢:七歳。
・松永正秀
主人公の父親
年齢:26歳
・木本勝久
元従者
年齢:24歳
・宣賢様
勝龍寺の中堅僧侶
主人公のような稚児に対する教育を受け持つ。
年齢:33歳
・芳栄様
勝龍寺の執事(寺の役職)
出納管理(寺の財布役)
年齢:52歳
・九郎
孤児、男、桜の兄。
多聞丸の従者。
年齢:九歳。
・桜
孤児、女、九郎の妹。
多聞丸の従者 兼 側室予定
年齢:五歳。
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