第04話:能力の実験をしてみた
その男を殺すと決めたその日から、僕の実験の日々は始まった。
宣賢様のお陰で、既に寺では教えられることも少なくなり、自由に使える時間が増えたことも大きかった。
僕は、九郎と桜を引き連れ、寺の中や近くの竹林で色々な実験を始めたのだ。
心太から、寒天を作る方法は分かっていたが、それでも安定供給には程遠かった。
天候に左右されるし、何より気温差が必要だ。
そして何より、自由に使える心太が。
天草から作る方法もあったのだが、この勝龍寺にいながらそれをするのは難しい。
結局、これは作ったはいいものの、日英様にも利権を取られ、大した稼ぎにもならなかった。
数独に関しても、当たりは大きくない。
提案だけはしたが、そもそものアラビア数字が馴染まないのだ。
それでも、興味深く見られはしていたので、これもいつか使われる時が来るかもしれない。
そんなこんなで日英様からは、色々なことを思いつく子供だと評価され、かなりの自由裁量が認められるようになった。
とはいえ、お金関係や物資などに手をつけることはできないままだ。
お金も宣賢様経由でもらっているものだけで、追加はなし。
二年で合計四貫文。
二人の子供を養うのに、年間一貫は掛かってる。
それも、寺にお金を渡しているから、こっちの手間は少ないけど。
俺の手から、この子らに渡して、俺が稼いだ金で養っているんだってことも見せつけて……、といくらか手間はかかっているが、それだけの手間で二人の人間が養えるんだから、簡単で助かる。
現代日本だと、絶対に無理だしな。
さらに、ここからトコロテンを買い取ったり、木灰を用意するのに使ったりと、かなり面倒だ。
石鹸の製作も始めたいが、今できるのは、椿油を利用したものだけだ。
獣脂の方が安くて済むはずなのだが、流石に寺でそれはできないからだ。
『獣を殺して食ってはならない。』
建前でしかないが、それでもそれが寺の教義なのだ。
まぁ、肉を食ったことのない僧侶なんてごく少数ではあるのだが。
そして、さらに重要な実験も行なっている。
異能としてもらった、爆弾の能力だ。
日中、近くの竹林に行き、そこに穴を掘って作成した爆弾を埋め、ギリギリの距離で岩の影に隠れつつ、爆弾の威力や成功率、作れる爆弾の量、指向性についてなどなど……
多くの知見が得られている。
何度か浮浪者や京の商人に見つかりそうになったこともあったが、「なんか大きな音がしたら逃げてきた」と言って回避した。
もちろん、それがあった後は、もう二度とその場所には行ってない。
噂になられでもしたら大変だしな。
現状、そんな気配もない。
やったのも十回ほどで、ほとんどを一日でやったから、噂が立っても一瞬で終わったんだと思う。
ただ、竹林の中に、竹がいくつも倒れて「隕石が落ちてきた」みたいになっている場所が残ってるから、その辺りは言い訳が効かないかも。
だが、それ以降は行ってないし、多分、大丈夫だと思う。数年もすれば消えるだろうしね。
しかし、そんなことよりも、だ。
爆破の威力が思いの外大きい。
いや、大きすぎる。
爆心地から爆破の影響範囲について探ってみたが、おおよそで8mはある。
しかも、石や木の破片などを巻き込むと、途端に手に負えなくなる。
しかも、防弾になるかと用意した木の板や、近くを通った猪がやられているのを見て、九郎や桜共々、ヤバい威力だと恐怖することになった。
「いや、10mって……、使えないんじゃないか、これ?」
少なくとも、壁となるものが無ければ、一切使い物にならない代物だろう。
しかも、その壁は岩くらいの強度がなければ、全く意味をなさないときている。
「本気で不味いな。どうすれば使い物になる?このままだと自爆覚悟出ないと使えないじゃないか……!」
役に立たないチート能力だ。
それだけは本気で思う。
松永弾正久秀に爆弾能力という能力。
しかも、材料が珪素のみで作れるとはいえ、生成できるのは日に二個だけ。
しかもしかも、効果範囲が広いにも関わらず、操作範囲が狭すぎるときているのだ。
役に立たない能力の代名詞だろう、これは。
「盾でも作るか?しかし、それを持っていくってことは爆弾の威力を知っていることになる。隠密では使えん。……隠れて使う?無理だ。そもそも隠れられる場所なんてない。」
石垣の城なんてないし、石垣の外側から使えるような威力でもない。
そもそも、石垣が崩れてきたら死ぬだけなのだ。
どう考えたって………?
「待てよ?指向性を持たせればどうだ…?」
あるいは、水樽などを壁にし、爆発を防ぐ方法だ。
水であれば、近くにいては衝撃波が飛んでくるが、爆破の影響を減衰させるには役立つだろう。
それを考えれば、地形さえ考慮すれば、今の能力のままでも利用は可能なんじゃないだろうか?
「土嚢、っていうてもあるか………」
しかし、そのどれにしても、爆発物と俺との間に障害物を用意しなければいけないことに……。
相手を誘導しなければ、使い物にならない能力でしかないわけだ。
「ちっ!本気で役に立たんな!」
現状のLv.は1らしいし仕方ないのだろうが、レベルアップでの操作範囲向上がなければ、完全にゴミ能力である。
どこぞのメ⚪︎ンテ並に役立たずだ。
復活呪文のないメ⚪︎ンテとか、ふたのついていない炭酸水でしかない。
「これを、アイツの暗殺に使うのか…?無理だろ………」
どう考えても無理にしか思えないが、レベルアップは将来への布石にもなる……かもしれない。
だから、使いたいといえば使いたいのだが……。
それに、使用場所の問題もある。
街中で爆破するわけにもいかない。
やるとしても、一度だけしかできないだろう。
僕の周囲で、複数回爆発が続けば、確実に悪名がつく。
武士になっていれば、その悪名も利用できるのかもしれないが、幼児の今だと、悪名は悪い効果しか齎さない。
どう考えてもマイナス効果だ。
「あ…。これなら……」
一つ、案が閃いた。
今ならまだ、家に帰ることも可能だ。
今のうちに、家に仕込みをして、それから始末してやろう。
「誰より始末を優先すべきは………」
父親だ。
あの従者もどきじゃない。
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◇人物紹介
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・主人公:多聞丸
将来の松永弾正久秀
年齢:七歳。
・松永正秀
主人公の父親
年齢:26歳
・木本勝久
元従者
年齢:24歳
・九郎
孤児、男、桜の兄。
多聞丸の従者。
年齢:九歳。
・桜
孤児、女、九郎の妹。
多聞丸の従者 兼 側室予定
年齢:五歳。
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