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ボマー松永久秀の投資戦略  作者: 斎藤 恋
名田庄納田終編

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第34話:予想外だった

◇納田終


厳念と得竹が、小浜で途方に暮れている頃。

こちらでは、炭場の建設と乾燥場の建設が同時並行で進められていた。



「若様。家は建てなくてもいいんですかい?」



田蔵が、俺に質問してくる。



「あぁ。今はこっちの方が最優先だ。というより、建築に使う資材を作るにも、今はこっちを作る他ないんだよ。」



今、宗立や九郎には、周辺に資材を購入できないかの調査と交渉に赴かせている。

家の建築一つに、相当な時間が掛かっているのだ。


「結局、今年は正月を祝えやせんでしたね……。いや、俺はここ数年祝ったこともないですが。」


「仕方ないさ。これだけの忙しさだぞ?それに、盗賊騒ぎなんて予想もしてなかったし、移転はもっと後の予定だったんだからな……。」



俺達は、前倒しの分だけ苦労と費用がのしかかって来ていた。

年末からずっと、切り倒していい場所を周囲の者から聞き出したり、実際に使える資材があるのかを調査させたりと、いろいろな仕事をさせているのだ。


俺自身、書類仕事さえもマトモにできない環境での生活だ。

寝るにも苦労させられてしまい、母や郎党達にも、しなくてもいい余計な苦労を背負わせてしまっていた。



「若様。とりあえず、後数日もありゃぁ、炭場も乾燥小屋も建てられやすぜ?その後は、資材って奴を使って、家を建てていけばいいんですかい?」


「そうなる。先に女子供が泊まれるようにしたい。僧侶らは、このまま土御門の屋敷に滞在してもらおう。」



12名の僧侶らは、土御門家と交渉し、今はそこで寺ができるまでの間生活をしている。

土御門の当主も、直近まで京にいた僧侶らの話は、なかなかに楽しんでくれているようだ。

それに、こちらの持ち込んだ"娯楽品(ゲーム類)"も、家族総出で楽しんでくれてるようで、俺達の滞在に否定的な者は、本当にごく少数だった。



「突然の移住だというのに、本当に歓迎されてやすよね…。それだけは、本当に驚きでさぁ。」


「これだけ色々と晒しているのだ。銭も相当に使っているし、それくらいでないと困るんだがな。まぁ、田蔵のいうとおり、うまくいきすぎているほどだとは思う。」



少々、心配に思う程度には、順調だった。

しかし、問題になりそうな要素も多くある。

一番の問題は、家の建築であり、次の商売の予定についても問題としては大きくなりそうな気配があった。



「何はともあれ、俺達は家や工房をとっとと作る他ない。京との繋ぎも、今は伏見に任せる他ないしな。」


「そうでやしたか……。なら、俺っちの出番ですね!頑張らせていただきやす!」


「頼む。お前らがどこまで有能になれるかが、ウチの浮き沈みを決めるだろうからな!頼むぞ?田蔵!」


「へいっ!」




───俺達の泥臭い日々は続く。



────────────────────────────



◇同じ頃の京



「京内での被害は、どんなものであった?」


その日、大内義興は、先日起きた爆発での被災状況について報告を受けていた。



「はっ。それが、被害は本当に西岡の地が中心で、他では、当家と管領邸宅、後は室町第、東西北の関所。これらのみにございます。」


「室町第や管領の屋敷への被害は?」


「それが、当家よりも被害が大きく、管領の屋敷では、支柱が倒れ、管領殿が家屋の下敷きになるなどの被害を受けてございます。」


管領の屋敷は、孤児らが夜間に投げ込んだ爆弾石が、たまたま屋敷下の支柱部分に入り込み、被害が拡大してしまっていた。

管領屋敷は、大きく倒壊し、他とは違い大きな被害が出てしまっていたのだ。

とはいえ、死者は多くなく、久秀もそこまでの被害を把握できてはいなかった。



「管領の怪我の具合はどうなのだ?」


「それほど、大きくはございませぬ。」



管領の怪我は、足の骨折と打撲、あとは少々の切り傷くらいだ。

しかし、このことが噂となって広まり、怪我以上の被害を高国にもたらそうとはしていたが。



「そうか……。やはり、人の仕業であるな。東西北、そのどれかに逃走したのであろう。」


大内義興は、今回の騒動についてそのように予測した。

何らかの技術を発明したか何かによって、今回の騒動を起こしたのであろう、と。



「人の……。だとすれば、誰の、そして何が狙いでしょう?関所については、逃走のために破壊したというのは理解できまする。しかし、当家や管領宅、そして西岡の国人らを葬ったのは、一体なぜ……?」


「さてな…。もう、詮索はせずとも良い。今回のことは、完全に私の負けよ。それでいい。それに、もうここには現れんであろうしの。」



義興は、全てを察したかのように家臣らにそう告げた。


「御屋形様…?御屋形様はもしや……」


「良いと言うておるのだ。良いな?」



この時、大内義興の心中では、犯人の特定がある程度済んでいた。

勝龍寺の焼き討ちと略奪、その後に起きたこの騒動。


それだけでも、十分過ぎるほどの予測ができてしまうのだ。




今回のことを起こしたのは、"勝龍寺の関係者であろう"と。





だが、義興にはそれを糾弾するつもりがなかった。

犯人は既に遠くへと逃げ出しているだろうし、勝龍寺にも留まらないだろう、と。


ここまで、綿密にことを計画した者ならば、この大内義興を負かした者ならば、既に特定された場合にも備えていることだろうと、彼は予期していたのだ。


まさか、京の近くでのうのうと家の建築に精を出しているとは、大内の当主としての彼には予想もつかなかったのだ。

金持ちは貧乏人の心持ちを知らず、であった。



久秀とて、遠くへと逃げ出したい気持ちはあった。

それでも、京の付近に留まったのは、金の問題が付きまとうからである。

京の近くにいた方が稼げるのだ。

それに、日の本の中心であるここなら、人手の供給も容易で、余計な苦労をせずに済むという利点が大きかった。


義興のように、日々の生活に困らない者とは考えの基礎が違ったのである。

それを知らずに義興は久秀を逃し、後悔することもなく、後年逝くこととなる。



「御屋形様……。では、西岡の方はいかが致しましょう?もはや、彼らのみでの復興は困難でありますが……。」


「仕方ないか……。誰ぞか良き者はおらぬか?西岡の地をまとめさせようぞ。」




こうして、西岡の土地からは、次第に西岡国人衆の色が消えていくこととなる。

代わって、西岡の地に配されたのは、内藤……ではなく、薬師寺家だった。


大内義興は、管領に丹波内藤を推薦したのだが、細川高国はそれを蹴り、あっという間にお気に入りの薬師寺へと西岡の地を譲渡したのだ。

これによって、大内と管領高国との間には、ヒビが広がり、内藤氏の胸中にも薬師寺ばかりを優遇する高国に対する怒りと恨みが大きく残ったのであった。



そうして、3ヶ月後の永正14年4月。

史実よりも早く、大内義興は、京の地を去ることとなる。

尼子の勢力拡大に備えて、ということであったが、実際には、高国と同じ空気を吸いたくはないという私情からであったことは、知られていない。




「そ、そんな!なぜだ?!義興!なぜ、帰国などという真似を!!」


大内義興の帰順によって、その後の歴史は次第に大きく変化を迎えることとなる。

尼子との戦いだけでなく、畿内の政治状況についても大きな変化が起きるのだ。


将軍足利義稙も、高国が義興との間に亀裂を生じさせるのを見て、「大内に代わり、管領がこれからも補佐してくれるだろう」などという思い込みからは解き放たれ、即効で義興に従軍することを決意。

高国政権は、義興の帰陣後、一年どころか、半年も持たずに崩壊してしまうこととなる。



「なぜだ……なぜ?何が悪かったというのだ!?私が、私が何をしたと……!」



細川高国は、内藤によって最期は討たれた。

永正14年9月。


管領 細川高国の人生は、史実より数年も早く終わりを迎えることとなる。






「………高国が死んだ?大内も帰陣?え?来年じゃなくて……?ウッソだろマジかよ……」


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ご読了ありがとうございます♪

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