第31話:京内で爆弾をばら撒いた
あえて、喜劇っぽく。
◇逃走中。
大内家を爆破で翻弄した俺達は、そのまま次の目標へと向かっていった。
今回の騒動で、これまでに溜め込んでいたスキル爆弾、234個を盛大にばら撒いている。
幼少の頃は、然程数を作れなかったので、二、三日に一個程度の個数で作っていた。最近だと一日一個だ。
だが、このバラマキによって、西岡の国人衆は完全に機能を停止したし、大内家でも被害は甚大だ。
大内では、爆破前に追加で再度撒いてきたので、爆破はさらに続く。
それに加えて、東方の関所や細川管領邸、将軍のいる室町第、西方の関所や北方の関所でも、同じように爆破してくる予定だ。
馬で飛ばすことになるが、見つかることになる恐れもあるので、かなり慎重に行なっている。
まぁ、爆破騒ぎで同じように馬で行き交っている者も出ているので、そこまで不審には思われないだろう。
「いえ、流石に不審には思われるでしょう。若馬に乗る者もおりますが、主人さまのように体格の小さい方は居られませんから。」
「では、お主と二人で乗るべきか?」
「いえ、多少不審に思われようとも、この騒ぎです。別段、構わないのではないかと」
爆弾騒ぎでおかしな行動をとっている輩も多いし、不審に思われても、他のおかしな行動をとる者の中に紛れるだろう。と九郎は言った。
確かに、今回の爆破騒ぎでは、「祟りだ」などと騒ぎ出す者も多く出ているし、不審者が溢れている。
そんな中で、さらにひとりふたり不審な行動をとる者が追加されても、おかしなことにはならないというのは理解できた。
「なら、次はどこだ?先に御所を狙いますか?それとも東か西でしょうか?」
「東だな…」
現在位置が東に寄っていることもあり、俺たちは東の関所を狙いに行った。
東の関所も、厳重な警備が敷かれ、夜間にも篝火が炊かれていたようだが、石ころの幾つかを門近くに転がしておく程度は造作もない。
関所へと運び込む荷物に、石ころを入れさせたことだってあるのだ。
北方には何も置いていなかったが、東西の関所には、ここ数年でいくつもの爆弾石が仕掛けられているのだ。
「………いくぞ?」
「…………」
九郎が、こくっと頷く。
それを確認した後、俺は目標の爆弾を意識して狙っていく。
俺は、既に140mは先から爆破させることも可能になっている。
あちらの視認できる距離よりもはるか先である。隠れながらの爆破など造作もない。
ドゴォォォドゴォォォン!!!
複数回の大きな音が鳴り響く。
十数個の爆弾石が爆発し、関所は文字通り吹き飛んでしまう。
周囲に木片となって吹き飛んだ関所とその残骸が、関所だった場所へと降り注ぐ。
内部には、十名ほどの人員が居たのだろう。
外にいた3名ほどは、破片によって重傷であり、数分も持ちそうにない。
内部にいる者の姿は見えないが、スキルによって把握できる限りでは、10人の死者が出ている。
「済んだ。次だ。」
次の目標は、室町第と管領邸宅だ。
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◇京中心部
ここ数日で、西岡の街で起きた爆発は、ここ京の中心とも言える室町第や御所においても聞こえていた。
最初は、爆音が聞こえるとは言っても、御所やその周辺から見れば遠方であり、皆が自身には関係なきこととして、噂にはなっていても、自分の身に関係のあることとは見ていなかった。
だが、この日、その浅はかさが覆される事態に陥ってゆく………。
「九郎、そろそろ始めたい。ウチの連中は、どの辺りまで行っていると思う?誰かに止められたりはしてないだろうか?」
この計画において、細川管領やその兵達によって呼び止められたりすることは、こちらにとって最大の危険要因だった。
大勢で一斉に移動していることもあって、兵士らに止められる可能性も高かったのだ。
「さて……?宗立殿なら、うまくやるとは思いますが……。」
九郎自身も、久秀を安心させるために適当なことを言うことはできなかった。
九郎自身が、桜や仲間の身を案じているのだから…。
「とりあえず、こちらで騒ぎを起こす他ありますまい。それに、勝龍寺の僧侶らが多数いるのです。それに、僧服も大勢に着せておりますし、多少は時間稼ぎができるでしょう。西岡の騒ぎを知っている者なら、勝龍寺に起きたことも知っておるでしょうし、無茶をせずとも、管領の兵に襲われるということはなきように思いまするが………。」
九郎自身、本当に心配しているのだろう。
「主人さま、行きましょう。管領の兵に襲われる心配はなくとも盗賊に襲われるかもしれませぬ。そうなれば、護衛の少ない当家の者らは、あっという間に蹴散らされるやも……。ほら早く、主人!」
………九郎自身、心配しているのだろう。
そんなやりとりを続けながら、管領の邸宅までやってきた。
正確には、管領の邸宅が見える位置にまで来ただけであるが。
大内とは違い、管領の屋敷は通常通り。
そこまで厳重には、警備されていないようだ。
やはり、大内義興と細川高国では、能力の差、器の差が大きいのだろう。
いや、比較することそのものが間違いなのかも知れんな。
「じゃ、やるぞ?」
ドゴォォォォォン!!
ここでも、複数の爆音が鳴り響く。
爆発など、聞いたことも見たこともない連中が、騒ぎ出している。
西岡での話も聞いていただろうに、同じように慌ただしくしている様は滑稽で仕方ない。
だが、そんな滑稽な連中に紛れ、俺達は移動していく。
「次は、室町第だ。やるぞ!」
「はっ!」
そのまま、小川通りを抜け、さらに北方の室町第にまで向かう。
「いくぞ!っ!」
ドゴォォォォォン!!!
ここでも、再度爆発を起こす。
「九郎!あとは適当に撒け!」
手持ちの爆弾石の数は、既に59個にまで減っている。
この後、北の関所を抜けるにも使用しなければならないが、それ以外にも被害をまき散らしておく必要があるだろう。
「九郎!適当に撒け!大きい屋敷ならなんでもいい!」
御所は既に過ぎたし、公卿や帝に迷惑をかける心配もない。
ただ、北側で騒ぎを起こしすぎるのは、流石に問題があるかも知れない。
俺達は、室町第を爆破した後、馬に乗り西の関所へと向かってゆく。
その間にも、適当に石をばら撒いてゆき、西の関所を爆破した後、再度戻ってきた際に適当に爆破しながら北にいる仲間と合流するのだ。
そうして、俺達の京脱出劇が幕を終えた。
あと、京から名田庄に向かっていた仲間達は、勝龍寺の僧侶らを全面に出し、数少ない戦力で盗賊などを退けつつ、京を抜けることに成功していた。関所を破る前に合流し、俺達の新たな未来が道を開けたのだった。
「桜ーーーーー!!!!!無事か!?」
「無事ですが…。兄上。大きな声で騒がないでください。煩いです。」
「さ、桜。しかしだな…?兄として妹の心配をしないはずないだろ…?こ、この程度は兄妹としては普通だぞ?」
「…………」
桜が、鬱陶しいまでの兄のアプローチに、目を細めつつ睨みつけているように見える。
妹と兄の心の中の温度差は、相当に開いているようだ。
これまでの間、マトモにコミュニケーションを取ろうともせずに、外から眺めるだけというヘタレた愛情しか見せてこなかった兄なのだ。
わざわざキッカケや機会も作ってやっていたにも関わらず、である。
仕事が忙しいというのは、女性に対しての言い訳にはならない。
九郎と桜の兄妹模様は、松永家の多くの者に考えを改めさせることになったという。
「桜!」
バチン!!「煩いって言っているんですよ!?いいかげん理解なさい!馬鹿兄!!!」
桜の一撃は、九郎の顔面にピンポイントで打撃を加え、九郎は疲労感とショックと痛みで、気絶することとなる。
この喜劇は、京脱出劇の幕間でしかないが、同じく脱出した者や、道中で加わった者らなどの心を癒すだけの糧となった。
しかし、この兄妹の仲が、一時拗れたのは自業自得としか言いようがなかったが………
「さ、さくら……ガクッ」
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