第29話:混乱させてみた
◇永正13年12月20日
その日の早朝は、けたたましい爆音から始まった。
ドゴォォォォォン!!
松永家の当主邸宅が、払暁の時間、いきなり鳴り響いた音と共に、松永家の屋敷が吹き飛んだのだ。
しかも、その後、屋敷からは火が出て、あっという間に飲まれていった。
払暁という時間とはいえ、見る者は相応にいて、勝龍寺が焼かれたことといい、何かの前触れではないか?と噂を始めていた。
しかし、この爆発は、松永家の当主邸宅だけで起こったことではなかった。
これで終わりではなかったのである。
多聞丸、いや、松永久秀の叔父の邸宅でも同じことが起きた。
こちらでも、日が上り一刻ほど経った頃に、同じようにドゴォォン!という爆音が鳴り響き、音と共に邸宅が吹き飛んだ。
数日前から、勝龍寺へと移動していた久秀とは異なり、叔父の長利やその郎党は、大半が巻き込まれた。
ただ、久秀の屋敷と違ったのは、爆音が複数回聞こえたことである。
だが、それを疑問に思う者は誰一人いなかった。
そこまで注意深く観察していた者など、誰1人いなかったのだ。
爆発は、まだ終わらない。
西岡の神足氏の屋敷でも同じように爆発が起き、物集女氏、鶏冠井氏、革嶋氏、野田氏、中小路氏、能勢氏と続いてゆく。古市、小野、寒川などでも、爆発が起き、それらの家では大勢の者が亡くなることとなる。
生き残ったものは、他でも同じようなことが立て続けに起こったことを知り、「祟りじゃぁぁぁ!」と叫びながら、向日神社へと逃げ込んでゆくこととなった。
間違いではない。事実、俺という悪霊がお前らに祟っているんだからな。
自身の欲得の為に、勝龍寺を襲ったであろうコイツらを、俺は許すつもりがない。
「お前も同じことをしようとしてたんじゃないか」って?
確かにそうだ。
正直言って、芳栄和尚はやり過ぎていたし、金を溜め込みすぎだった。
俺の知恵を絞って、荏胡麻のように利益を貪っていたんだ。
自業自得だろう。
まぁ、自分の私欲の為に使っていたわけじゃないが、それでもな。
俺は余り詳しくないが、百姓への貸付や取立ても、相当に酷いものだったらしい。
だからこそ、俺が交渉で引き分けたと噂が立った時には、それが評判になったのだという。
金を稼ぐために、人買い連中とも付き合いがあったというし、あの和尚、本当に破戒僧だったんだな……
「主人さま。」
九郎が俺に話しかける。
「そうだな、行くぞ。」
西岡衆の家のほとんどが、俺の爆弾によって破壊されている。
死傷者多数。
スキルによると、47名の死者が出たらしい。
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◇スキル:爆弾生成
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・現在レベル
Lv.11
・累計殺害者数
128人
・爆破操作有効距離
120m
・新効果
時限爆弾化可能 NEW!
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新しい効果ができるようになったらしい。
ざっと説明すると、レベル10までは10人ずつでレベルアップしていたのが、ここからは20人ずつになった。
レベル10は、区切だったからか、新効果が手に入り、レベル11では、20mも友好距離が伸びた形になる。
「……やれることが増えたな。」
特にこの、時限爆弾化能力が本当に助かる。
事前設定が必要になるが、24時間以内ならいつでも爆破時間が決められるのだ。
これで、いくらでも爆破できる。これだけでも、十分以上にチートだろう。
「しかし、使い勝手が難しいな?これは。」
爆破時間そのものの設定は、これまでのように作り置きしておくことができないらしい。
つまり、250kcalもの消費を直前に支払わなくてはならず、今の体格と仕事量だと、精々1日1個がいいところなのだ。
はっきり言って、使えるようで使えない能力である。
「主人さま、早く致しませんと……!」
「分かってる。」
検証は後だ。
俺たちは、伸びた有効距離を十分以上に使用し、そのまま大内家の陣所を破壊した。
あくまで、外側からだが。
流石に、内側へと爆弾である石ころを投げ込むことなんてさせられない。
だが、それでも十分だ。
俺たちの狙いは、大内家をぶち壊すことじゃない。
彼らに警戒させることが狙いなのだから……。
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◇大内家 陣所
「何があった?」
ドゴンドゴンという音が、早朝から何度も聞こえてきている。
数日前に届出のあった、勝龍寺とやらの再建工事の音だろうか?しかし、それにしても大きい。
「御屋形様!警戒を!この場も危険かも知れませぬ!」
家臣が、慌てたように飛び込んでくる。礼儀も何もあったものではないが、それどころでも無いらしい。
「何があったのだ、一体?」
疑問に思い、再度尋ねるが、その者の言も要領を得ない。
「西岡の屋敷が吹き飛んでいる」とだけ言ってきたのだ。
これでは、なんのことだか、さっぱりわからない。
「も少し、分かりやすく伝えぬか。流石にそれではなんのことだかさっぱり分からぬ。」
「兎に角、ここから退避すべきです!あるいは、守りを固めねば!」
退避などと言っても、こちらには何も起こっていない上、聞こえてくるのは音ばかりだ。
戦などとも違うようだし、本気で何のことだか分からぬのだ。
逃げるのが正しいのか、はたまたここに留まるのが正しいのか、判断材料が見当たらぬ。
「退避すると言ってもだな……一体どこへ行こうというのだ?それに、何から逃げる?何も分からぬのに、そのような軽率なことができるか。まずは皆を集めよ。話はそれからよ。」
私は、そのまま全員が集まるまでの間、部屋で寝ていることに決めた。
どうにも、ここからは忙しくなりそうな気配がする。
・
・
・
「御屋形様。散っておった将兵らを集めてまいりました。」
余程に慌てたのだろう。
皆が皆、装いに乱れが見えている。
「皆よく参った。だが、まずは落ち着け。未だここには何も起こっておらんのだ。とりあえず、白湯を飲め。話はそこからだ。」
私は、そう言いながら、全員が心を落ち着けるまで待つ。
白湯を飲み終える頃には、皆も肩の力が抜けたらしい。
心なしか、来た当初より表情が緩んでいた。
「では、報告を聞こう。何があったのか詳細を知る者は?」
私がそう聞くと、1人が報告の為に語り出す。
こやつは、実際に現場にまで行き、様々なものを目撃してきたらしい。
「先ほどまで、現場を見てまいりました。どうやら、何かしらが原因で西岡の各屋敷が吹き飛んでおるようです。原因についてはさっぱりですな。火の不始末などかとも思いましたが、"五"を超える家で同じ時期にそのようなことが起きますかな?」※1この時は五つだけ。
流石に、一度に複数の家で火の不始末が起きるなどあり得ない。
あるとすれば、それは狙って行われたことなのだろう。
この報告で、皆の警戒が強まった。
「被害にあったのは?」
「分かっておるだけで、神足に物集女、あとは鶏冠井あたりですかな?……あ、早々、松永とかいう家もございましたな。確か、最初が松永であったと聞きます。」
松永家で最初に何かが起き、次いで他の家でもそれが続いた、というわけだ。
「国人か?」
「えぇ。」
「屋敷が吹き飛んだというが、どういうことだ?」
私にとって、国人がどうこうなったというより、吹き飛んだというのがどういうことなのかが分からなかった。
風などで飛んで行ったのか?はてさてもっと小規模なことを大袈裟に言っているのか……
「こればかりは、説明が難しい。私も実際に見たわけでは無いので……。ですが、目撃者の話によると、大きな音と共に屋敷の門や壁が、大きく飛んでいったのだとか。実際、神足などは、壁がなくなり倒れ伏す者が外から見えました。」
どうやら、人の手でも起こせる何かのようだ。
しかし、分からぬこともある。
それを誰が、どのようにして起こしたのか?ということだ。
「分からぬな……。そうだ。それらは、外に近い場所で起こっておったのか?それとも、中から何かが起こっているようであったのか?どちらだ。」
「え?はぁ、そうですな。言われてみれば、外に近い場所で起こっておった気も……。」
決まりだ。
どうやらこれは、神罰などではなく、人の手による行いであるようだ。
でなければ、国人の屋敷は内側から吹き飛んでいることであろう。
「聞け!」
私は、この情報を受けて、配下全員に指示を出す。
「警戒を強めろ!これより、この屋敷に近づく者は皆拘束し、外の適当な家に閉じ込めよ。これは、神や魔の者による仕業ではない。人の手によるものであろう。ゆえ、近づく者は皆拘束するのだ。よいな?」
大内家は、全力で警戒し動き出した。
その動きが、久秀の狙ったものであるとも知らずに………。
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