第27話:合同で葬儀を行った
◇永正13年12月18日
豪盛が向日神社へと赴いて交渉を行なっている頃。
僕は、葬儀の為の準備を他の僧侶たちと整えていた。
多額の銭を運び出す準備と共に………。
「では、これで葬儀そのものの支度は問題ないのか?」
「えぇ。問題ありません。ただ、そもそもの遺体をどれだけ発見できるか、ですね……。多聞丸様の子飼いを総動員するとしても、時間が掛かることになります。その間、向日神社側が待ってくださるかどうか……。」
遺体の発掘作業というのは、それ相応に時間のかかる作業だ。
正直言って、片手間でできるようなことではない。
だが、安易に適当に済ませようとしてしまうと、遺体をそのまま残すことになる。
これもまた問題で、勝龍寺の再建に響くのだ。
「宗立。お前は、再度この地で、勝龍寺を再建したいのか?」
だから、僕は話だけでも聞いておこうと、再建の意思を問うた。
「それは………、そうですね。そうしたい、という思いがないとは言えません。ただ、今のように西岡の者らが、我らを否定しているのでは、と不安になるような状況では、とても………。」
西岡の勝龍寺は、地元の協力あってこそだ、と宗立は言った。
それが、彼の信条なのだろう。
僧とは、民に寄り添うもの。
金でもなく、権力者でもない。
ただの民にこそ、寄り添うものなのだ。
そう、宗立は語ってくれた。
真言宗にあって、これは異端の思いかもしれない。
だが、宗立もまた、修行僧のひとりなのであった。
「その願いが叶うといいな」
「はい。いつか必ず……」
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◆勝龍寺焼け跡
事態は、迅速に進んでいく。
賊の夜襲を受けたのが、昨日の晩であるというのに、もう葬儀の支度を終えて向日神社との交渉も取り付けてきているのだ。
それだけ、事態が切迫しているということでもある。
豪盛の話によると、向日神社側も他人事とは感じなかった様子で、西岡衆への牽制に協力してくれるようであった。
本来の守り手が、このように容易く賊へと寝返られては、向日神社としてもオチオチ優雅に寝ていられないのだ。
向日神社も、立場としては勝龍寺と変わりないのである。
「じゃあ、早速始めていきますね?」
孤児を取りまとめる"聡介"に、遺体探しの命を出す。
「急げ。時間との勝負だからな?」
向日神社の者は、今支度をしてこちらに向かっているらしい。
僕たちは、その前に遺体探しだ。
ひとりは、早朝の散策で発見したが、それ以外はまだ見つかっていない。
どこかへ逃げたということも考えられるが、少なくとも、17名以上が行方不明のままなのだ。
「大丈夫です、分かってます!」
聡介は、元気な声を上げ、他の孤児達と共に灰や材木に埋もれた遺体を捜索し始めた。
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四半刻後(30分)。
「もういい。これ以上は時間をとれん。中止しろ。」
僕は、手早く指示を出して、聡介に捜索を中止させた。
「え?でも、まだ……」
聡介は、まだまだ捜索すべきじゃないか?とでも言いたげだったが、即座に辞めさせる。
ここからは、向日神社と合同での葬儀の始まりだ。
残っている遺体があろうが、もはや時がない。
「では、よろしくお願いします。」
遺体は一度集められ、まず先に、向日神社の神官が清めの為に場を整えてくれた。
しめ縄などを敷き、清めの祓いを行なっていく。
中臣祓え……などと祝詞を唱え、この地を守る龍神へと祈りを捧げるのだった。
その後は、僧たちや孤児らが協力し、遺体をそこへと運び込んだ。
神社の神官達は、穢れを嫌うので、そのまま立ち去ることになる。
運び込まれた遺体を見て、集まった勝龍寺の僧達は鎮痛な表情を見せるが、それでも、儀式には影響させないプロ根性があった。
「光明真言…」と、真言宗の祝詞を唱えるその姿には、憤りと悲しみが写っているように、僕には見えた。
運ばれてきた7つの座棺に、皆がその祝詞で清めた砂をかけてゆく。
どの遺体も、一晩中焼かれていたこともあり、僧服どころか肉も付いていない遺体が多い。
それでも、僅かなりとも思い残すことなく逝ってほしいとの願いを込めて、ひとりひとり丁重に弔っていくのだ。
「では、そろそろ……」
「うむ……。」
皆が皆、鎮痛な表情を浮かべながら、その場を後にする。
ここには、僕と僕の手勢しか残さない。
これから、時間を掛けずにすぐさまこの地を出立するのだ。
皆が皆、今後を思い、憂いの表情を浮かべていた。
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僕らは、どうやったとしても、西岡衆を誤魔化しての資産の移動は不可能だと確信していた。
持ち運ぶべき資産額は、僕が保有しているだけでも100貫文を超える。
それも、毎月のように新たな投資を行なっていた僕でそれだ。
つまり、僕の発明から直接の利益を受け取っていた勝龍寺には、それ以上の資産があることは確かだった。
勝龍寺内に残る予想資産額は、1,000貫文を超えていると僕は概算で出していた。
だからこそ、移動は難しい。
1,000貫文というのは、未来日本では想像できないかもしれないが、無茶苦茶重たい。
紙幣なんてない時代だ。
未来日本での逸話で、銀行強盗に百円玉の束を渡した話があったが、それだけでも分かるように、無茶苦茶……それはもう無茶苦茶重い。
予想重量は1トンを超えるだろう。この時代だと計測器なんてないけど。
だからこそ、輸送には複数の馬が必要不可欠だった。
それと、それだけの馬を連れていてもおかしくない状況も、同じだけ必要だったのだ。
「して、管領の陣所へと報告はしてきたか?」
「はい。勝龍寺再建の支度を行うとは、伝えました。今、多聞丸様に頂いた資金から、材木をいくらか買って来させております。」
僕らは、配下に材木を多数買わせ、それの輸送に紛れて、数人ずつこの京から離脱させている。
足の遅い孤児や、婦女子から優先的に、だ。
護衛となりそうな者には、何度も往復してもらうことになるだろうが、そこは諦めてもらう他なかった。
引き抜いた青木自身の配下を除いても、156名の人員がいるのだ。
それだけの人員を一度に納田終にまで行かせることはできない。
どうしたって、分ける必要があった。
「家から荷を運び出せ。全て勝龍寺に集めるぞ。」
僕は、配下に指示を出し、家に蓄えられた財産や数々の作り出した道具類も、その全てを馬に乗せ、輸送の為に集めるよう指示を出していった。
資金の輸送には、九郎を宛てた。
これが、早朝の会話だ。
葬儀の場には、既に松永家の全てが集まっている。
叔父達の有する資産を除いた全てが、だ。
「で、では、我らもその……どこかに向かうのでしょうか?」
「あぁ、そうだ。我らは若狭へと向かうことになる。……正直言ってな、ここももはや安全ではない。勝龍寺ほどの古刹が襲われるのだ。我らなど、もっと簡単に狙われよう……。このままでは身の危険があるのだ。しないとは思うが、お主らも1人2人で出歩くなよ?襲われるぞ。」
奉公人達が、手を握り合いながら、表情を暗くしていた。
だが、実際にここは危ない。
襲撃の危険は、勝龍寺の僧達よりあったのだ。
なにせ、ここには金があるし、人がいる。
それも、孤児達ばかりが、だ。
そのことを、周囲の者はしっかりと覚えているはずだ。
これまでは、勝龍寺の影に隠れて目だなかったが、これからは違う。
今のうちに逃げなければ、直ぐにでも襲撃を受けたとておかしくはなかったのだ。
「いいか?急げ。あと、心配するな。逃げ出す先も既に確保している。勝龍寺の名でな。だから、逃げ出した先での心配はないぞ?僕の指示に従って、これまで間違っていたことがあったか?ないだろう?安心して努めよ。これは、我らの大戦ぞ!」
「は、はい!」
そう言いつつ宥めたが、実際、何人が本当についてくるのかは不明だ。
これからの道中で、多数の者が居なくなってもおかしくはなかったからな……
「………ふぅ。全員が納田終にたどり着けることを祈ってるよ、僕は……」
偽装工作と混乱と輸送と移転。
多くの事が入り混じる、転換期がここに訪れようとしていた。
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◇スキル:爆弾生成
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・現在レベル
Lv.8
・累計殺害者数
81人
・爆破操作有効距離
80m
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◇人物紹介
・聡介
孤児を取りまとめる青年。
年齢は15歳。
真面目だが、少し熱心すぎるところがあり、孤児達の中には、気後れするものもいる。
だが、その面倒見の良さは本物で、幼少の頃からある孤児集団のリーダーを務めていた。
武力はそこそこしかないが、緻密な計画を立てるのが得意。
実施の際にも、融通を効かせるということを知っているので、そのリーダー気質は本物……かもしれない。
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