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ボマー松永久秀の投資戦略  作者: 斎藤 恋
京:西岡編

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16/25

第15話:怨讐を持った復讐した

◇永正13年4月

◆四者会談


四者会談の間、僕はただひたすらに嬲られた。

もちろん、僕の思い違いだということもありうるかもしれない。

しかし、だからといって、僕が嬲られたと感じたことに違いはない。

僕を交渉相手だと、認めなかったことについても同じだ。


少なくとも、向こうは僕のことを尊重しなかった。

それだけは確かなのだ。


当然、僕が相手を尊重する必要もない。

向こうがそうしなかったのだから、それは当然じゃないか?


わざわざ、神が相手だからと、神官まで敬ってやる必要がどこにあるのだ。

神は神、人は人である。

仲介を行うからといって、仲介者までが偉いわけではないのだ。



それをコイツらは分かってない。

僕がコイツら相手に下手に出ているのは、コイツらの権威が必要だからなのだ。


「(今に覚えてろ……。必ず報復してやる…必ずだ。)」


僕は、この日、僕を交渉相手だとさえ認めなかったこの男たちへの報復を決意した。


恥辱は忘れない。

恥辱を与えた者は、それをあっさり忘れてしまう。

しかし、恥辱を与えられた者は、100年経とうともそのことを忘れない。



結局、この日の会談はまとまり、僕が伏見稲荷大社に50貫文手付金として支払うことと、200貫文を寄進として支払うことが定められた。

もちろん、それ以外に決まったこともある。

大内家へと、【伏見稲荷大社】【向日神社】【勝龍寺】という三つの寺社が、共同で大内家へと話を持ち込むことになったのだ。


僕の名前は、最後まで出なかった。


大内家への話の際も、僕の話は出ないままでだろう。

当然、西岡にも僕に関する話は流れないままであり、ただ僕の下には、『200貫文という借金』と『大内家へ納める竹炭の製作』という実質的な労役のみが残った。



名誉もなければ利益もない。

勝龍寺と向日神社に、首輪を嵌められただけになったのだ。

200貫文は、勝龍寺と向日神社が、それぞれ僕に貸し与える形で持つこととなり、僕は、毎年それを納めるために働き続けることになったのだ。



────────────────────────────



◇永正13年5月

◆松永家 当主邸



「……………っ!」


ガランッ!カラカラカラ………


目の前にあった木皿が、床に落ちた。

僕が苛立ちのあまり、ぶちまけた為だ。



「………っ」


下唇を血が出るほどに噛み締め、それでも苛立ちは治らない。

僕の内心は荒れ狂っていた。


大内との交渉は締結され、京の南側には、大内家の軍が駐留することとなった。

竹炭の製作場所については秘匿されたのか、はたまた分かった上で見逃されているのかは知らないが、少なくともここにまで軍勢は来ていない。



モノさえ納めれば問題ないと、放置でもされているのだろか?

それとも、実証できていない為に、放って置かれているだけなのだろうか?


それはまだ分からない。


しかし、大内家は、竹炭を量1貫につき100文で買い取ってくれるらしく、ウチにも分け前の280文が支払われた。

初期ロットが、14貫だったからだ。


たったこれだけでは、初期投資分などカケラも取り戻せない。

このままでは、持ち出しが増えるばかりである。


ただでさえ、月の収支が赤字で、全くといっていいほど利益が出ていない状況だったのだ。

そんな中で、250貫文のマイナスは痛すぎるほどに痛かった。


250貫文を丸々借入扱いにすることを認めて貰えなければ、すでに詰んでいただろう。

それだけは、助かったと言える。


……いや、それさえも、あちらの狙いだったのだろうが。


向日神社と勝龍寺が、125貫文ずつ貸してくれたのだ。

ついでに言うと、利息は月に6%(6分)である。

来年の今頃には、222.5貫文を返済しなければならないわけだ。

二つ合わせて、445貫文である。


250貫文の元本が、ほぼ倍だ。

鬼畜にも程がある。

これを恨まずにいられるか?僕には無理だ。


だからこそ、僕は苛立つしかなかったのだ。

得られるはずだった利益は、大半が奪われ、挙句借金まみれになっているのだから、失敗の中では最たるものだろう。



しかし、和尚の慈悲か何かは知らないが、現金の全てを奪わないでくれるだけの余裕は持たせてくれるらしい。

それだけは、それだけは感謝しようと思う。

それはそれとして、報復も行うが。



僕は、一度、怒りを鎮めるために、マインドフルネス……というか瞑想を行い、心を落ち着けた。

怒ってばかりでは、次の策を考えられないからだ。

怒りの感情はエネルギーではあるが、それだけで為せることは少ない。

本能より、今は理性が必要なタイミングだ。



「ふぅ……。とりあえず、借金のことは今はいい。来年までは待ってくれるそうだしな。今考えるべきは金策だ。それに、悪いことばかりでもないはず。少なくとも、伏見稲荷大社と繋がりそのものはできたのだ。あとは、こちらが稲荷のネットワークを活用して稼ぐだけだ。文句は言わせん。絶対に使わさせてもらうからな……。」



実際に、使えるかどうかは分からないが、少なくとも、共同事業としては締結したのだ。

表に僕の名前が出ていないとはいえ、250貫文もの金を出すのだから、それくらいは協力してもらわねば困る。


稼ぐアイディアなど、いくらだってあるのだ。

それは嘘じゃない。


向こうは渋るかもしれない。

しかし、渋ったからどうだというのだ?

こちらには、大内へと納める品を改悪するという手段だってあるのだ。


原理一つ理解していない阿呆に、改悪の中身が理解できるはずもない。



主導権を握っているのは、寺社じゃない。僕なのだから。




────────────────────────────


◇永正13年5月


僕は再度、伏見稲荷大社へと交渉に訪れていた。

一度は追い返され、勝龍寺の紹介をもらってから、再度来ることになったことには苛立った。

挙句、犯罪者の如く、身の改めまでされたのだ。

腑は、煮えくり帰っている。

だが、こうして入り込めた時点で、既に僕が勝ったと言える。



しかし、入り込めたはいいものの、僕らは(多聞丸と九郎)、そのまま伏見稲荷大社の一室へと案内され、そのまま半日は放置されることとなる。監視付きで。



「再びお会いできましたこと、うれしく思います。羽倉様。」


半日もの間待ち続け、やっとの思いで会えることになった。

だが、羽倉の君は、無表情のまま、僕には関心すら示さぬままの表情でこちらを睨みつけていた。



「して、何ようだ?250貫文、持ってきたのか?そうでないなら、早急に帰るがよろしい。」



貴様の価値は金だけだとばかりに、告げてくる羽倉 延任だったが、今日ばかりはそうはいかない。

わざわざ一度は追い返し、約束の日に来たにも関わらず半日近く無為に待たされたのだ。

僕の怒りは頂点に達していた。

この、武家というものを理解していない若人に、国人であれ幼児であれ、武士は武士なのだというところを、思い知らせねばならないのだ。



「本日は、伏見の伝手を使わせていただきたく、お話に参りました。」


「伝手だと?たかが西岡の国人風情に、何故当社とうやしろの伝手を使わせねばならん。もうよい、うせ…」



…ドゴォォン!!!



「な、なにが…!」


突然、この部屋の隣室で、爆発が起きた。

20mは離れていたことと、家具類という障害があったことでこちらに被害はなかったが、それがなければ、僕達も死んでいたかもしれない。

正直、こんな下らない話で、時間を無駄に使いたくないのだ。

既に、数日を無駄にしているというのに……。



「おや、これは酷いですなぁ。火の不始末か何かですかな?それとも、お稲荷様の天罰が降り注いだのでありましょうか?」


あえて白々しく、羽倉に対してそう言ってのける。



「これは、貴様の仕業か?!」


羽倉延任は、僕に対してそう咎めるが、そんな証拠はどこにもない。

そもそも、ここには来たばかりであるし、身の改めもされているのだ。


不審物を持ち込むこと、それそのものができないのだ。


「おかしなことを仰る。ぼ…いえ、私めは、この社に入る際に、身の改めもされておるのですよ?それはつまり、あなたの家臣を疑うも同義でしょう?」



身の改めまでされたことが、ここに来て功を奏した。

僕自身の身の潔白を、あちらが証明することになってしまっているのだから…。



「して、まだ、私めが原因であのようなことが起こったと?そういえば、隣室には誰ぞかおられたようですが、何か良からぬことでも考えておられたのですかな?」


爆発が起きた隣室には、僕を監視していた大社の者や、何やら屈強そうな男連中が集っていたようだった。

それもこれも、今では爆発の衝撃によって、床で呻くばかりであるのだが。



この羽倉には明かすことはないが、僕は半日もの間待たされる間、「厠だ」と言いつつ、幾つもの部屋へと能力で作った爆弾を仕掛けてまわっていたのだ。

石ころサイズなので、落ちていても誰も気にも留めないのである。


僕の今の食事量と体格では、頑張っても作れるのが精々10個ほどだった。

そのため、10個を爆破させるうちに、あちらが折れてくれればいいのにな。と思いつつ、僕のスキルは次の爆弾へと標的を変えていた。



ドカァァァァン!!



「…くっ!ま、またですか!」




==========

◇基本属性

==========

・氏名

多聞丸(松永久秀)

・年齢

9歳(数え年)

・現在時刻

永正13年(西暦1,516年)

・所在

山城國伏見稲荷大社内

==========

◇スキル:爆弾生成

==========


・現在レベル

Lv.2


・累計殺害者数

6人


・威力(Lv.1〜2共通)

直径二m範囲にいるものを爆殺する威力。

現代の手榴弾レベルの爆発力がある。


・操作範囲(Lv.2)

20m範囲に存在する爆弾を自在に爆破可能。

初期状態から有効半径が拡張されたが、指定範囲を1ミリでも外に出れば一切反応させられなくなる制約は継続。

範囲に関しては感覚で分かる。


・特殊知覚

自身が爆弾化させた物体から発せられる固有の波長を常に感知。

無数に設置した爆弾の「存在」を直感的に把握可能。


・制約

一度の爆弾生成には、珪素を含んだ物質と250kcalの体内熱量が必要。

幼児の肉体だと、1日2個程度の生成が限界である。

必要珪素は、おおよそ卵サイズの石がひとつ程度で良い。


==========

◇次レベルへの要件

==========


・次レベルへの必要殺害数:4人(累計)

・Lv.3:操作範囲向上


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スキルレベルはまだ上がっていないが、それでも、累計殺害者数が増えているのが見えた。

僕は、羽倉に気付かれぬように、ニヤッとした表情を一瞬見せ、このまま羽倉を追い詰めていく方向へと舵を切っていった。



「おやおや、これは本当に火の不始末なのでしょうか?二度もこのようなことが続くとは、本当に天罰なのではありませんか?」


僕は、「おかしいですねぇ…?」と、さも自分は全く関わっていませんよ?とでも言わんばかりに、伏見稲荷大社への不信感だけを露わにしていた。


羽倉殿も、流石におかしいと思ったのだろう。

手の空いた者に、被害にあった者の治療をさせると同時に、各部屋に何かおかしなものがないか、調べさせることにしたようだった。


半刻ほどして、怪我人らは運び出され、死者も葬儀を行うための支度までなされることになったようだった。

しかし、部屋を調べていた面々は、おかしなものなどまるで見つけれられず、羽倉延任には、何もなかったとの報告が返ってくるばかりであったのだ。



「お、おかしい…そんなはずは……」


僕が持ち込んだ、スキル生成による爆弾は、見た目にはただの小石である。

部屋の囲炉裏にでも入り込めば、そこから見つけ出すことなどできはしないのだ。


それほどまでに、違和感が働かない代物だ。

初めからそうと知っている者でもないかぎり、発見できるはずがない。



結局、羽倉延任は、僕がやったという証拠さえ見つけられぬまま、僕との次の話へと進めていくこととなる。





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◆松永家資本(多聞丸資金)


・44.99貫文→→→現金40.86貫文(帳簿上:−404.14貫文)


◇支出(4月分)

・食費:15.4貫文

・給与:17.8貫文

・勝龍寺への献金:15.21貫文(3月分)

・伏見稲荷大社への寄進:250貫文


◇収入(4月分)

・切り蕎麦:18.1貫文

・灰持酒:2.2貫文

・火入り炭酒:23.7貫文

・竹炭(水浄化用):0.28貫文


◇借入

・勝龍寺:222.5貫文(元本:125貫文)

・向日神社:222.5貫文(元本:125貫文)

・返済期限:永正14年の5月


※まだ未記載分あり。次話で、追加文についての説明あり。



====================

◇人物紹介

・羽倉延任

伏見稲荷大社で、実務を握る東羽倉家の頭。

まだまだ若いが、それでも稲荷様への信仰心と金勘定などでは、他の者には負けないと自負している。

その自負心は、多聞丸のような国人の子供などに対する蔑視などに繋がってしまっている。

だが、怪しげな爆発を二度も目撃させられ、多聞丸という人物を、無視できない魔物か妖怪の類として認識し始めた。

部下が死んだことを嘆く心も持ってはいるが、それ以上に脳裏は冷静である。

多聞丸を放置してはいけない、と考える程度には……


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◇多聞丸スキル:爆弾生成


・現在レベル:Lv.2

・累計殺害者数:6人

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