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ボマー松永久秀の投資戦略  作者: 斎藤 恋
京:西岡編

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第11話:竹炭で水を綺麗にしてみた

◇永正13年2月(西暦1,516年)


僕らは、竹炭製作の為に、工事専門の浮浪者たちを雇い入れた。

一人頭20文の雇用費と食事。

それが、20名である。


月の出費は、


・人件費:20×20×30=12,000文(12貫文)

・食事代:15文/人・日=9,000文(9貫文)

・合計額:21貫文


となる。



結果、さらなる出費が、僕の懐を襲おう羽目に………

いや、自業自得だというのは、理解して…理解しているんだけどね……。



ツライ……辛いよマミー………。


「どこかから、うまい商取引相手が湧いてこないものか…」などと、夢にまで見る始末だ。


幸い、夏まで乗り切れれば、"竹酢液"という高性能高品質で有望極まりない商品が、出せるのだが。

それもこれも、現状を乗り切れれば、である。



今の所は、切り蕎麦や灰持酒、それに火入り炭酒という有望なしゅうにゅうげんがある。

しかし、それもこれもあと数年。


今の内に、京で稼ぎ続けられるよう、地盤を築く他ない。

その為には、大内と取引をし、莫大な収益を得なければ………



「やはり、竹炭だな。」


そうして僕達は、雇い入れた工事要員で、新たに中規模窯を作り出した。

これで、領内の真竹を十分に活用できる。


来年の竹酢液も、量が爆増させられるだろう。


窯建設に掛かった時間は、25日ほどだった。ほぼ一ヶ月だ。

正直、この時代にない特徴的な要素といえば、せいぜいが、大きいことと煙突が2本あるということ。

そして、四角く作られた窯で、焚き口が広く作られていること。という、四つくらいである。


まぁ、「大きく作られてて、2本の煙突がある。」くらいでいいな、うん。

土壁の方には、竹で補強したり、藁なんかを混ぜたりと色々やったかが、目に見える構造はそれくらいだろう。



出来上がったこの炭焼き窯だと、一度に14貫(52.5kg)は製作可能だ。

14貫で綺麗に維持できる水は、1000Lほどだな。交換などを考えなければ、だが。


それに、一週間か二週間ほどに一度は、天日干しで乾かさなきゃならん。



「これでできる竹炭が、50文より高く買われればいいんだが……」


普通の木炭が、10〜20文だ。

それと同等や、それ以上に安ければ、売る意味がない。


わざわざ、作る意味もない。


大内の当主が馬鹿でないなら、これを40文から50文以上で買ってはくれるだろうが……。



「阿呆相手に売っても仕方ない。工夫がいるな……。」



何より、実績作りから始める必要がありそうだ。



────────────────────────────



◇永正13年3月(西暦1,516年)


和暦ってつくづく面倒だなぁ…と、ふと思った。

特に意味はない。

単に、記録の際に、「今年ってなんて年だっけ?」と、いちいち挟まなければならないというのが面倒なだけだ。



竹炭用の窯そのものは、未来のコンクリートのように竹を中に入れ込んだり、家屋のように藁を混ぜ込んだりして強化した。

分厚く、構造的に頑丈に、そして内部の熱が漏れ出しにくくするためだ。


だがまぁ、これに関しては結構難航した。

そもそも、粘土で壁を作るというのはいいとして、問題は乾燥なのだ。


分厚くすればするほど、内部が乾燥しづらくなり、ひび割れなどの強度問題が多く発生するようになるのだ。

その為に、「薄い方がいい」という意見も出たからな。



これも時間をかけて作っていくことで解決させたが、それでも、実際、どこまでの強度が出ているのかは、使ってみないと分からない。


「これも、投資だな……」



投資投資投資……。

当主になって初めての冬越えだというのに、僕の懐はどんどん寒くなっていく一方である。

まぁ、去年始めた二種類の"酒事業"や"切り蕎麦"が好調で、月平均で合計30貫文くらいはコンスタンスに稼いでいるから、問題ないといえばないのだが。



そうして、竹炭窯が完成して数日が経過した。


できた竹炭窯でも、竹酢液の収集はできるような構造となっている。

これからは、コンスタンスに竹酢液も貯蔵可能になるだろう。


今はまだ、利用可能な竹酢液さえ存在していないが、9月頃には利用できるモノも出てくる予定だ。少量になるが。



僕がこれから作る竹炭の作り方そのものは簡単だ。

ちょっと一工夫するだけで、十分に使える竹炭が大量に生産できる。


前にも言った通り、取ってきた真竹は、三ヶ月ほど乾燥の期間を置いてある。


どうせなら、熱風で乾燥させ、雨や湿気などによる悪影響は避けたかったのだが、熱風小屋の設置がまだだったし、そもそも人手が足りなかったので断念したのだ。


実際には、天日で乾かしたというより、当主邸の端に積み重ねてあった、と言った方が正しいしな。



竹炭を焼くことそのものは、ウチの奉公人にもできる。

既に何度もやらせているからな。簡易窯で、だが。


ただ、温度にだけ注意させて、出来上がった竹炭をさらに煮沸消毒する。

その後、天日干しだ。


そうして初めて、水の浄化などに使える、良質な竹炭が完成したのだ。


「…なんとか、第一歩だな。一度、ウチでも使わせてみるか。結果が出るまで一月……。その間、もっと作らせるしかないな。量さえあれば、神社にも寺にも売り込めるだろうし……」



今はまだ、海のものとも山のものとも言えない、商品が、また新たに完成したのだった。




「これで……」



────────────────────────────



竹炭の方は、量産を続けているのと、水の貯蔵に使えるかの実験をしている段階で、今はまだ時間が必要になる段階だ。

だから、そちらの方は、何も動かせないままである。


今できるのは、京中から集めてきている孤児達の戦力化だ。

孤児を集めているということで、諸勢力の注目は集めているが、今の所、変わった篤志家程度の印象しか持たれてはいない様子だ。


実際、孤児を多数雇い入れたところで、戦さに使えるわけでもなければ、商売でどうこうなるわけでもない。

むしろ、ほとんどが足手纏いなのだ。


だからこそ、僕は雇い入れているわけだが。


そもそも、僕自身がまだ8歳という若さだ。

この年齢では、とてもではないが戦さになど行けはしない。


それに、戦さについて教えてくれる者さえ、僕の周囲にはいないのだから、どうしようもない。

家臣の内、青木俊介は引き抜きに成功したが、こいつ自身は戦さに出た経験もなく、僕に教えるなんて到底無理なのだ。


結局の所、僕自身が、戦さの機微を自分勝手に学んでいく他ない。



「島右近でも、仲間に引き入れられればなぁ…。」


時代が違い過ぎてどうしようもないことくらいは、分かっている。

しかし、願わずにはいられない程度には、困っていた。


僕ができるのは、精々が、令和の未来知識から出して来れる戦さ模様くらいなのだ。

どう考えても、弓や槍の行き交う現代の戦では、まるで役に立たないのは明白だ。


簡単な戦術や戦略の知識くらいならあるし、筋トレ関係の知識くらいなら、ダイエットでも使ったことはあるし、応用は出来る。

でも、本格的な戦となると、間違いなく勝手が違う。



僕では、槍の良し悪しも弓矢の良し悪しも分からない。

ましてや、鎧や兜なんて思考の外だ。


どう考えたって、マトモな戦なんてできるはずがないんだよね……。



「はぁ……。せめて、ウチの家臣のうちの誰か一人でも、こっちに付いてくれればよかったのに…。青木だけじゃ戦さの役には立たないよ…。」



青木俊介の本領を発揮できるところは、外交仕事の場面である。

人と話すのが得意で、松永家の数字について詳しい青木なら、交渉の場面で無類の力を発揮できる程度には優秀なのだ。


そんな青木が、借金苦に陥っていたことそのものが異常なのだが、それが本人の借金ではないとなれば話は変わる。

青木の父親は、相当な博打うちで、近くの賭場で大負けし、隣家の国人に莫大な借金をしたそうだ。



領地からの上がりや鎧、槍、弓まで抵当に入れ、胴丸とボロ刀のみで次の戦には向かおうとしていたくらいだ。

正直、この時代からすると、相当にやばい。


あり得ないほどの借金具合だったのだ。

それを、僕一人でも解消できる程度にまで減らした、俊介の力量が、どれだけ凄いのか想像がついただろうか?


青木俊介には、金を産む才能はない。

しかし、金脈を見つけてくる才能はあるようで、人物眼や絵画の鑑定に目が利く有能な人物なのだ。



戦ができないとはいえ、僕にとっては、捨てるに捨てられない才覚である。






「けど、それだけじゃどうにもならないんだよね…。」




まだまだ、金の苦労は続きそうだ…。





====================


◇支出

・食費合計:14.1貫文

・工事専門人員の雇用(毎月):12貫文

・竹炭用中規模窯工事費用:2.5貫文(2月のみ)

・モデル水田人員の雇用費:5.6貫文

・工事専門人員用の長屋:25貫文(2月のみ)


◇収入(1月分)

・切り蕎麦の販売:24.5貫文

・灰持酒の販売:4.8貫文

・火入り炭酒の販売:15.2貫文


◇収入(2月分)

・切り蕎麦の販売:22.8貫文

・灰持酒の販売:4.5貫文

・火入り炭酒の販売:14.8貫文


====================


◆松永家資産(多聞丸資産)


◇2月初旬時点

・51.85貫文→→→63.75貫文


◇3月初旬

・63.75貫文→→→74.15貫文

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ご読了ありがとうございます♪

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