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仕事

自宅から10分弱で目的地へと着く。

大通りから外れた人はそれほどいないが小綺麗な飲食店や雑貨店などが並ぶ通りでタクシーを降りる。

羅師と樺はその通りの裏路地へ入る。

明るく綺麗な通りと比較して、路地は暗く汚いと言うほどではないが綺麗とは言い難い。

路地に入るとすぐそこに一つの看板が光っていた。

『喫茶英領』

そう書かれた看板の先にある扉には『close』の札が下げられており、店内に明かりは灯っていない。

羅師はそれを無視しノブに手を掛ける。

特に鍵はかかっておらずすんなりと扉が開く。

「邪魔すんで〜」

羅師がふざけたように言いながら店内へ入る。

「お邪魔します」

樺も追うように店内へと入る。

「邪魔するなら帰れクソガキ」

奥からしゃがれた声が聞こえてくる。

店内に明かりがつき、奥から一人、初老の男性が現れる。

「よう辻のジジイ、あんたが呼んだんだろうが」

そう言うと羅師は辻と呼ばれた男性の正面のカウンター席に勢いよく座る。

その隣に樺が静かに座る。

「やあ、樺ちゃん初仕事はどうだった?」

羅師に対する態度とは異なり、優しげに樺に聞く。

「うまく出来たと」

その答えに満足したように辻は頷く。

「そうか、なら良かった。よく頑張ったな」

そう言うと樺の頭を雑に撫でる。

その行為に対して樺も満更ではなさそうに顔を少し綻ばせる。

それを横目に羅師が真剣な表情で聞く。

「それで、本題は?」

辻は樺の頭から手を離す。

「コーヒーでいいな?」

そう言うと後ろの棚から豆の入った袋を取り出し、コーヒーを入れ始める。

「昨日のターゲットについて、覚えてるか?」

ガスコンロの前で湯が沸くのを待ちながら二人に問う。

「おっさん二人」

羅師が大真面目に答える。

その答えに辻は大きくため息をつく。

「製薬会社社長のササハラと研究所所長のオサムラの二人ですね」

フォローするように樺が話す。

それを聞いて辻は頷く。

樺は続ける。

「その二人が共同開発と称してなんらかの麻薬を製造しているとのことで今回の仕事が羅師さんに回ってきたんですよね」

「そうだ、それでササハラの方から顧客リストが、オサムラの方からその薬に関するプレゼン資料であろうファイルが見つかった」

辻はそう言うとコーヒーを二人の前に置く。

羅師は早速コーヒーに口をつける。

「良かったじゃん。あとはその顧客リストから薬回収するなり殺すなりすれば解決。話ってそんだけ?」

それを聞くと辻は一つのファイルを取り出し、二人に見せる。

「なにこれ?誰かの個人情報?」

ファイルの中の証明写真のような写真付きの書類を取り出し見る。

「先生、私にも見せてください」

「ほい」

書類が樺に渡る。

「ナカシマ、テツヤ…43歳にして大手IT企業の役員、家族構成は奥さんと子供の三人家族。特に思うことはないですね。この会社もターゲットになるようなことはしていないはずですし」

そう言うと樺は羅師に書類を返す。

「ま、僕らに見せるってことは何かしら関係があるんでしょ。ね、ジイさん?」

羅師は目の前の辻を睨むように見る。

「顧客リストとプレゼン資料には強固なロックがかかっていてな。顧客リストの方は開けられたようなんだが、中身は暗号化されているとかで解読にはかなり時間がかかるそうだ。それでそいつが初めに解読できた奴ってことだな」

羅師は退屈そうに窓の外を見ていた。

「つまり?」

羅師の台詞に樺が答える。

「次のターゲットってことじゃないですか」

「その通り。殺害で5、薬を使用していた場合は捕獲で、3倍は出すそうだ」

捕獲、と言う言葉に羅師が反応を示す。

「捕獲?薬使用してるのってどうわかるんだよ?」

「見りゃわかるってよ」

「そんな適当な…」

呆れたような声を樺は出す。

「それでこの仕事、受けるか?」

「もちろん」

羅師は即答する。

その答えに満足した様子で辻は続ける。

「それじゃその資料に住所とか諸々書いてあるから行って来な、期限は今週中となってはいるが早い方がいいってよ」

羅師は資料を手に取るとそのまま出口へ向かう。

「コーヒーご馳走様、それじゃ早速今から向かうわ」

扉を開け外に出る。

「ご馳走様でした」

樺はそれを追う。

羅師は大通りまで早足で歩くとタクシーを止め自宅の住所を運転手に伝えていた。

「一旦家帰って準備したら自宅に向かうぞ」

「分かりました。私も一緒しても?」

樺のその言葉に羅師は少し驚いた様子を見せる。

「良いが、外で待機な。何かあったら連絡入れるが」

「お客さーん、乗らないんですかー?」

タクシーの運転手が急かすように言う。

「すまない、それでは先ほど言った住所まで頼む」

「はい、それでは向かわせてもらいます」

タクシーは自宅のマンションまでの道のりを走る。

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