世の中のことは往々にして知らないことのほうが多い
僕は知らなかったのだけれど(むしろ知らないことのほうが多い)、世の中には随分沢山のフルーツグラノーラがあるようだ。
シンプルなものから、チョコレートが入ったもの。
バナナが入ったものやコーヒーテイストのものまである。
メテムが気に入っているのは、くるみの入ったメープル味のものだ。
毎朝それを皿にいれて、例のアーモンドミルクをたっぷり入れて食べている。
「このな、仄かに感じるメープルの甘みが、グラノーラ本来の味を柔らかく引き立たせてるんだよ」
カリカリとグラノーラが噛み砕かれる音を部屋に響かせて食べるその仕草は、ことさら愛おしく見えた。
アーモンドミルクは何もグラノーラにかけるだけに存在しているのではない。
それは時として夜分に飲むココアにも活用されていた。
マグカップにピュアココアの粉末をいれ、それに少量のアーモンドミルクを注ぎ、練るようにして混ぜる。
そして玉が無くなった頃にパルスイートを入れた。
「このスリムな体を維持するには、こういう細やかな配慮が必要なんだぞ」
そう言うとメテムは十分細い腰に手を当て、体をくねりとひねった。
パルスイートを十分量入れると、またアーモンドミルクを入れて、更にひと混ぜしたあとレンジへ入れた。
3分ほどレンジを回すと、そこには温かなココアが出来上がる。
メテムは猫のように舌で温度を確かめたあと、両手でしっかりコップを持ち、美味しそうにココアを飲んだ。
僕は一人で居る時によくコーヒーを飲んだが、メテムも同じぐらいコーヒーが好きだった。
それも僕のようなインスタントコーヒーではなく、しっかりとエスプレッソマシンで淹れる本格的なやつだ。
いつの間にか台所に置かれていたその銀色のマシーンは(僕には幾分光りすぎているように思えた)、ポッドと呼ばれるコーヒー豆の入ったパックをセットし、そこから抽出する仕組みだった。
デミタスカップに出来たその少量のエスプレッソを丁寧にマグカップに移し、お湯を割り入れアメリカンにしてメテムは飲んだ。
僕も同じ様にして作ってみたが、確かにそれはインスタントと違って深い味わいが感じられた(同時に複雑な味でもある)。
何事も試してみないとわからないことはあるということだ。
メテムとの生活は僕にとって新鮮な出会いそのものと言える。
このやんちゃな女の子は、僕に刺激と、そして人の温もりを与えてくれる。




