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忘却の神話 ~忘れられた神と青年の記録~  作者: 浦嶋亀タロー


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第三話 忘れられた神

森を抜ける頃には、空が明るさを取り戻していた。

 レインは無言で歩き続けていた。

 一歩踏み出すたび、全身のどこかが痛んだ。

 ナラクの眷属との戦いで切った腕。木の根に足を取られた際に打ちつけた膝。力任せに剣を振るったことで、悲鳴を上げている肩。

 致命傷と呼べるものはない。

 それでも、身体中に残る痛みが、先ほどまでの出来事が現実だったことを否応なく教えてくる。

 自分は戦った。

 恐怖に震えながら、それでも逃げずに剣を握った。

 そして、生き残った。

「……勝ったんだよな」

 誰に確認するでもなく、レインは呟いた。

 少し後ろを歩いていたフロネが顔を上げる。

「生きてる」

「それは見れば分かる」

「なら、勝った」

 あまりにも簡単に言われ、レインは小さく息を吐いた。

 勝利という言葉には、もっと胸が熱くなるような響きがあると思っていた。

 実際には、疲労と痛みしかない。

 恐怖だって、消えたわけではなかった。

 戦いが終わってから何度も、あの黒い化け物が背後から追ってきているのではないかと思い、振り返ってしまった。

「勝ったっていうより、たまたま生き残っただけだ」

「違う」

 フロネは迷わず否定した。

「君は、逃げたいと思った」

「ああ」

「怖いと思った」

「……ああ」

「それでも、戦うと決めた」

 少女は真っ直ぐにレインを見つめる。

「だから勝った」

「随分と都合のいい理屈だな」

「事実」

 フロネはそれだけ言うと、再び前を向いた。

 その横顔は変わらず、何を考えているのか分かりにくい。

 けれど、レインには彼女が慰めのために言っているのではないと分かった。

 怖くなくなったから進んだのではない。

 怖いまま、それでも進むことを選んだ。

 それがフロネのいう自己支配なのだろう。

 自分の中にあるものを認めた上で、最後にどうするかを自分で決める。

 戦いの最中には理解できなかったことが、今になって少しだけ胸の中へ落ちてきた。

 森を抜けると、遠くに石造りの城壁が見えた。

 レインが生まれ育った町、アルトナ。

 決して大きな町ではない。

 昨日までなら、何も感じなかった景色だ。

 だが、今は妙に懐かしく見えた。

「やっと戻ってきた……」

 緊張がわずかに緩み、レインは歩調を速めた。

 温かい食事が欲しかった。

 身体を洗い、柔らかい寝床で横になりたい。

 そして何より、自分が生きて帰ったことをミリアに伝えなければならない。

 置いていった彼女がどれほど怒っているかを考えると、今すぐ逃げ出したくもなったが、ナラクの眷属に比べればまだ話が通じる。

 たぶん。

 町の門まで、あと百歩ほど。

 そこで、隣を歩いていた足音が止まった。

 レインは数歩進んだところで気づき、振り返る。

 フロネは道の真ん中に立っていた。

「どうした?」

「私はここまで」

「……ここまで?」

 フロネは町の門を見つめていた。

 門の前では、二人の衛兵が旅人の荷物を確認している。特に騒ぎが起きている様子はない。

「入らないのか」

「入れない」

 あまりにも平然と告げられ、レインは一瞬、その意味を理解できなかった。

「入れないって、何でだ。神だからか?」

「分からない」

「分からない?」

「うん」

 フロネは一歩だけ前へ出る。

 次の瞬間、その身体がわずかに揺れた。

 何もない空間に肩を押し返されたように、足が止まる。

 風もなければ、壁もない。

 だが確かに、彼女と町との間には目に見えない何かが存在していた。

 フロネはもう一度進もうとはしなかった。

「昔から、町には入れない」

「全部の町に?」

「分からない。でも、ここは無理」

「いつからだ」

「覚えてない」

 返ってくる答えは、どれも曖昧だった。

 レインは城壁を見上げる。

 神を祀る教会が町の中心にある。

 神の加護を求め、毎日多くの人々が祈りを捧げている町だ。

 その町に、神であるフロネが入れない。

 妙な話だった。

「町の結界か?」

「たぶん」

「どうしてお前だけ弾かれる」

「分からない」

「……お前、本当に分からないことばっかりだな」

「ごめん」

 素直に謝られ、レインは言葉に詰まった。

 責めたいわけではなかった。

 だが、フロネについて知ろうとすればするほど、分からないことばかりが増えていく。

 自己支配の神。

 信者を持たず、神殿にも祀られていないノラガミ。

 千年以上前に、一人だけ契約者がいた。

 そして今、町に入ることさえ拒まれている。

「ここで待ってろ」

 レインは言った。

「町に入って、傷の手当てをしてくる。それから、食べ物も持ってくる」

「私は食べなくても平気」

「俺が食うんだよ」

「そう」

「あと……調べたいことがある」

 フロネが小さく首を傾けた。

「お前のことだ」

「私?」

「教会なら、古い神の記録が残ってるかもしれない。名前くらい見つかるだろ」

「見つからないと思う」

「調べる前から決めるな」

 レインが顔をしかめると、フロネはほんの少しだけ口元を緩めた。

 笑ったのかどうか、判断に迷うほど小さな変化だった。

「すぐ戻る」

「うん」

 フロネは街道から少し外れた大木の根元へ移動し、そこに腰を下ろした。

 朝日に照らされた姿は、森の中で初めて見た時と同じだった。

 一人でいることに慣れきっているように見える。

 けれど、その姿を置いて町へ向かうことに、レインは妙な抵抗を感じた。

 契約したからだろうか。

 それとも、一度隣を歩いた相手を置き去りにすることが嫌なだけなのか。

 自分でも分からないまま、レインは門へ向かった。

 門番は傷だらけの姿を見て眉をひそめたが、レインの顔を知っていたため、簡単な確認だけで通してくれた。

 城壁の内側へ入ると、町は普段と変わらない時間を過ごしていた。

 市場では店が始まり、パン屋からは焼きたての香りが漂っている。

 昨日までと何も変わらない。

 森の中で、人ならざるものに命を狙われていたことなど、まるで嘘だったかのようだ。

「レイン?」

 聞き覚えのある声がした。

 振り向いた時には、茶色の髪を揺らした少女がこちらへ駆けてきていた。

「レイン!」

「ミリア」

 胸へ飛び込んでくるかと思った。

 だが、ミリアはレインの目の前で急停止すると、そのまま右手を大きく振り上げた。

 乾いた音が町中に響いた。

「痛っ!」

「馬鹿!」

 頬を押さえるレインの胸を、今度は両手で何度も叩く。

「何で勝手にいなくなるの! どこに行ってたの! 私がどれだけ……!」

「悪かった。落ち着け」

「落ち着けるわけないでしょ!」

 もう一度叩こうとしたミリアの手が止まった。

 レインの服についた黒い汚れ。

 裂けた袖。

 乾いた血。

 それらを見て、彼女の顔から怒りが消えていく。

「その怪我……何があったの?」

「少し長くなる」

「少しで済ませるつもり?」

「……かなり長くなる」

 ミリアは何か言い返そうとしたが、レインの表情を見て口を閉じた。

「家に来て。先に手当てするから」

「その前に、教会へ行きたい」

「何で?」

「調べたい神がいる」

 ミリアの目が細くなった。

「神?」

「ああ」

「レインが?」

「そうだ」

「神様なんて必要ないって、いつも言ってたレインが?」

「今も必要だとは思ってない」

「じゃあ何を調べるの」

 レインは少し迷った。

 町の外で待つフロネの姿が脳裏に浮かぶ。

「契約した」

「……何と?」

「神と」

 数秒間、ミリアは瞬きすらしなかった。

 やがて、恐る恐るレインの額へ手を伸ばす。

「熱は……ないね」

「正気だ」

「森で頭を打った?」

「打ってないとは言えないけど、正気だ」

「神と契約したって、本気で言ってるの?」

「ああ」

「どの神様?」

「フロネ」

 ミリアは記憶を探るように眉間へ皺を寄せた。

「知らない」

「俺も知らなかった」

「何を司る神様なの?」

「自己支配」

「……それ、神様の権能?」

「らしい」

「曖昧すぎない?」

「本人が一番曖昧なんだ」

 説明すればするほど胡散臭くなっていく。

 それでもミリアはレインの顔をじっと見つめ、嘘を言っているかどうかを見極めようとしていた。

「その神様は、どこにいるの?」

「町の外」

「どうして一緒に来なかったの?」

「来なかったんじゃない。入れなかった」

 ミリアの表情が変わる。

「町に?」

「ああ。見えない何かに弾かれた」

「そんな話、聞いたことない」

「だから調べたい」

 ミリアはしばらく黙っていた。

 そして、地面に落とした籠を拾い上げる。

「分かった」

「信じるのか?」

「まだ半分くらい」

「半分も信じるのか」

「レインが、そんなすぐにばれる嘘をつくとは思えないから」

 ミリアは歩き出した。

「教会へ行こう。シスター・エレナなら、古い資料を見せてくれるかもしれない」

 アルトナの教会は、町の中心に建っている。

 白い石を積み上げた建物で、正面には豊穣と癒やしを司る女神セレスの像が置かれていた。

 町の人間の多くは、セレスを守護神として信仰している。

 レインも幼い頃、何度かミリアに連れられて礼拝へ参加したことがあった。

 もっとも、祈ったことはない。

 神に願うくらいなら、自分でどうにかした方が早いと思っていたからだ。

 今も、その考えが変わったわけではない。

 ただ、自分の右手には神との契約紋が刻まれている。

 人生というものは、本人の考えとは関係なく、時々とんでもない冗談を仕掛けてくるらしい。

 教会へ入ると、祈りを終えた人々が帰るところだった。

 祭壇の前で燭台を片づけていた女性が、ミリアに気づいて顔を上げる。

「ミリア。どうしたのですか?」

「シスター・エレナ。少し相談があって」

 エレナは四十代ほどの修道女で、幼い頃からミリアの面倒を見てきた人物だ。

 穏やかな笑みを浮かべていた彼女だったが、レインの姿を見ると表情を曇らせた。

「レイン、その怪我は?」

「森で少し」

「少しという姿ではありませんね」

「本人は少しだと言い張ってるんです」

「言い張ってはいない」

「似たようなものです」

 エレナは深く息を吐いた。

「まず治療を」

「その前に、古い神の記録を見せてほしいんです」

 レインが言うと、エレナの手が止まった。

「古い神の記録?」

「フロネという神を知りませんか」

「フロネ……」

 エレナは小さく繰り返した。

 その反応を見て、レインは期待した。

 だが、彼女は首を横に振る。

「申し訳ありません。聞いたことがありません」

「自己支配を司る神です」

「自己支配……」

 エレナはさらに考え込んだが、やはり心当たりはないようだった。

「神々の権能を記した神名録があります。ですが、教会に保管されているものは一般向けの写本です。名のある神しか載っていません」

「もっと古いものは?」

「地下書庫に、教会が建てられる以前の文献が残っています。しかし、保存状態が悪く、読めないものも多いですよ」

「見せてください」

 エレナの視線が、レインからミリアへ移る。

 ミリアは真剣な顔で頷いた。

「お願いします。かなり大事なことみたいなんです」

「理由を聞いても?」

 レインは右手の手袋を外した。

 手の甲に浮かぶ紋章を見た瞬間、エレナの顔から穏やかさが消えた。

 円環の内側に、互い違いに走る複数の線。

 中心には、閉じた瞳にも、一本の道にも見える意匠が刻まれている。

「契約紋……」

 エレナは紋章へ手を伸ばしかけ、途中で止めた。

「あなたが契約を?」

「はい」

「フロネという神と?」

「そうです」

「その神は、今どこに」

「町の外です。入れませんでした」

 エレナは目を見開いた。

「結界に拒まれたのですか?」

「たぶん」

「そんな……」

「何か知ってるんですか」

「いいえ。ただ、町を守る結界は、邪なるものや敵意を持つ眷属を退けるためのものです。神を拒むようには作られていません」

「じゃあ、フロネは邪神ってこと?」

 ミリアの声に、レインは反射的に眉をひそめた。

「違う」

 思った以上に強い声が出た。

 ミリアが驚いたようにこちらを見る。

「少なくとも、あいつは俺を助けた。ナラクの眷属と戦うために力も貸した。邪神が何なのかは知らないけど、フロネは違う」

「……うん。ごめん」

「いえ、その可能性を考えるのは当然です」

 エレナが静かに言った。

「ですが、決めつけるべきでもありません。記録を調べましょう」

 教会の地下書庫は、祭壇脇の小さな扉から続く階段の先にあった。

 エレナが鍵を開けると、冷えた空気と古い紙の匂いが流れ出てくる。

 石造りの階段を下り、三人は細長い部屋へ入った。

 壁一面に木製の棚が並び、その中には大小さまざまな書物が詰め込まれている。

 表紙に神の名が刻まれたもの。

 権能の系統ごとに分類されたもの。

 各地の神話や、神殿の建立記録。

 町の小さな教会に、これほど多くの本が保管されているとは思わなかった。

「この辺りが古い神名録です」

 エレナが棚の一角を示す。

「ただし、年代によって記述が違います。同じ神が別の名で記されていることもあります」

「じゃあ、全部見るしかないな」

「全部って……」

 ミリアが棚を見上げる。

 そこには、背表紙の文字すら消えかけた分厚い本が何十冊も並んでいた。

「今日中には終わらないよ」

「フロネは外で待ってる」

「だからって急いで見つかるものでもないでしょ」

「見つかるまで探す」

 レインが一冊目を抜き取ると、ミリアは呆れたように息を吐いた。

「昔から一度決めると本当に頑固」

「帰っていいぞ」

「誰が帰るって言ったの」

 ミリアも隣の本を手に取った。

 エレナは二人を見て微笑むと、傷んだ文献を扱うための布手袋と、卓上のランプを用意してくれた。

 調査は想像以上に地道だった。

 火を司る神。

 水を司る神。

 風、雷、戦、知恵、収穫、出産、病、死。

 神々の数は、レインが思っていたより遥かに多かった。

 一つの権能に複数の神がいる場合もあれば、一柱の神がいくつもの異名を持つ場合もある。

 大陸全土で信仰される神もいれば、既に滅びた村でしか祀られていなかった小さな神もいた。

 だが、フロネの名はない。

 自己支配という権能も見つからない。

 一冊。

 二冊。

 十冊。

 時間だけが過ぎていく。

 ランプの火が揺れ、地下書庫に紙をめくる音だけが響く。

「ないね」

 ミリアが本を閉じた。

「こっちもない」

「次だ」

「少し休んだ方がいいよ。顔色悪いし」

「元からだ」

「そういう意味じゃない」

 傷の痛みは徐々に強くなっていた。

 緊張が解けたせいだろう。

 それでもレインは次の本へ手を伸ばす。

 フロネは自分のことをほとんど覚えていない。

 いや、覚えていないというより、知らないことを受け入れすぎている。

 千年もの間、誰にも名前を呼ばれず、一人で森にいた。

 なぜそうなったのかを知ろうともせず。

 それは彼女が気にしていないからなのか。

 あるいは、気にしても仕方がないと諦めたからなのか。

 レインには分からなかった。

 ただ、町の外で一人待つ姿を思い出すと、ここで諦める気にはなれなかった。

「レイン」

 ミリアが声を落とした。

「そのフロネって神様は、どんな人なの?」

「人じゃない。神だ」

「そういうことを聞いてるんじゃない」

 ページをめくる手が止まる。

「……変なやつだ」

「それだけ?」

「何を考えてるか分からない。自分のこともよく知らない。聞いても、分からないって言う」

「悪口ばっかりだね」

「でも、人に命令しない」

 ミリアは黙って続きを待った。

「俺が何を選んでも、止めない。助けを求めても、神なら普通、自分を信じろとか、従えとか言うものだと思ってた」

「フロネ様は言わないの?」

「言わない。『君が決めること』って、そればっかりだ」

「変わった神様」

「ああ」

 レインは右手の紋章を見た。

「だから、契約した」

 ミリアの視線が横顔に刺さる。

「神様なんて必要ないって言ってたのに?」

「今もそう思ってる」

「矛盾してない?」

「神だから選んだんじゃない」

 フロネに告げた言葉が蘇る。

「フロネだったから選んだ」

 ミリアは目を瞬かせた後、ふっと微笑んだ。

「そっか」

「何だよ」

「何でもない」

 ミリアは再び本へ視線を落とした。

 その後も調査を続けたが、手がかりは見つからなかった。

 棚にあった神名録をほとんど確認し終えた頃には、地上から鐘の音が聞こえてきた。

 夜の到来を知らせる鐘だ。

「これで最後です」

 エレナが残された一冊を確認し、首を横に振った。

「ここにもフロネという名はありません」

「そうですか……」

 ミリアが肩を落とす。

 レインは何も言わず、積み上げた本を見つめた。

 あれほど多くの神が記されているのに、フロネだけがいない。

 ただ無名だったというだけなのか。

 信者がいなければ、記録にも残らない。

 そう考えれば不自然ではない。

 だが、フロネにはかつて契約者がいた。

 千年以上前。

 その時代から存在している神が、何の痕跡も残していないことなど、本当にあり得るのだろうか。

「……そういえば」

 エレナが呟いた。

「まだ何かあるんですか?」

「神名録ではありません。教会が建てられた際、地中から出てきた古い木箱があります」

「中身は?」

「文献が一冊。ただ、文字があまりに古く、誰にも読めませんでした。保存状態も悪いため、別の場所に保管しています」

「見せてください」

 レインは即座に言った。

「期待はしないでください。神々の記録かどうかすら分かりません」

「それでもいい」

 エレナはしばらく迷っていたが、やがて書庫の最奥にある小さな扉を開けた。

 そこは物置に近い場所だった。

 崩れた祭具や、使用されなくなった燭台。鼠に齧られた木箱。

 エレナはその一番奥から、両手で抱えられるほどの箱を引き出した。

 表面は黒く変色し、金具には赤錆が浮いている。

「発見されたのは、百年以上前です」

 埃を払いながら、エレナが言った。

「この教会の地下を広げた際、さらに古い石壁の中から見つかったそうです」

「石壁の中?」

「誰かが隠したのではないか、とも言われています」

 錆びついた留め具を外す。

 蓋が開くと、中には布で何重にも包まれた一冊の本が入っていた。

 革張りの表紙はひび割れ、触れただけで崩れそうになっている。

 題名はない。

 かつて何かが刻まれていた形跡はあるが、表面を削り取られていた。

 三人は慎重に本を机へ運んだ。

 エレナが薄い板を差し込みながら、ゆっくりと表紙を開く。

 最初の数ページは、文字が完全に消えていた。

 紙そのものも黒ずみ、端が欠けている。

「やっぱり、読めないね」

 ミリアが残念そうに言った。

「まだだ」

 一枚ずつ、慎重にめくっていく。

 意味の分からない古代文字。

 欠けた地図。

 円形に並んだ神々らしき影。

 どれも何を表しているのか判断できない。

 そして、本の中央付近。

 エレナがページをめくった瞬間、レインの呼吸が止まった。

 そこには文字ではなく、一枚の挿絵が描かれていた。

 一人の青年と、一柱の少女。

 二人は向かい合い、互いの右手を重ねている。

 青年の髪や顔立ちは、長い年月で色が褪せ、はっきりとは分からない。

 しかし、少女の姿は見間違えようがなかった。

 腰まで伸びた淡い髪。

 華奢な身体。

 静かに青年を見つめる瞳。

「……フロネ」

 レインの口から、無意識に名前が漏れた。

「この子が?」

 ミリアが絵へ顔を近づける。

「今、町の外にいる神様?」

「ああ」

「本当に?」

「間違いない」

 絵の中のフロネは、今より少しだけ表情が柔らかく見えた。

 青年を見つめる瞳には、確かな信頼が宿っている。

 そして、重ねられた二人の手の上には、一つの紋章が描かれていた。

 レインは自分の右手を見る。

 円環。

 交差する線。

 中心に刻まれた、閉じた瞳のような意匠。

 寸分違わない。

「同じ……」

 ミリアも気づいた。

「レインの契約紋と、まったく同じだよ」

「ああ」

 偶然ではない。

 この絵は、フロネがかつて契約したという人間との契約を描いたものだ。

 千年以上前の、たった一人の契約者。

「この人が、前の契約者……?」

 青年の顔に目を凝らす。

 だが、肝心の部分だけ汚れが広がり、表情は読み取れなかった。

 挿絵の下には古代文字が書かれている。

 その大半は擦れ、黒い染みと混ざり合っていた。

 エレナがランプを近づける。

「完全には読めません。今の神聖文字より古い形式です」

「少しも?」

「似た形の文字なら……これは、おそらく『契約』です」

 エレナが一つの文字を指差す。

「こちらは『神』。ですが、名前に当たる部分は削れています」

「フロネの名前は書かれてないんですか」

「書かれていた可能性はあります。しかし、今は読めません」

 名前のあったと思われる箇所だけ、不自然なほど傷んでいた。

 経年劣化なのか。

 それとも、誰かが意図的に消したのか。

 今の段階では判断できない。

 レインは次のページへ手を伸ばした。

 紙が破れないよう、指先に力を入れず、ゆっくりとめくる。

 次の挿絵を見た瞬間。

 地下書庫の空気が変わった。

 そこにもフロネが描かれていた。

 だが、先ほどとはまるで違う。

 巨大な神殿。

 天井まで届く白い柱。

 その中央で、フロネは両腕を鎖につながれていた。

 首を垂れ、膝をついている。

 周囲には、人の姿をした何柱もの神々。

 顔は黒く塗り潰されている。

 彼らは半円状に並び、中央のフロネを見下ろしていた。

 契約の挿絵にあった穏やかさは、どこにもない。

 これは儀式ではない。

 裁きだ。

「……何、これ」

 ミリアの声が震えた。

 レインは答えられなかった。

 フロネの足元には、折れた何かが転がっている。

 剣にも見える。

 神像の一部にも見える。

 背景の壁には、複数の人影が描かれていたが、その部分は激しく損傷していた。

 そして、絵の下に記された文章。

 先ほど以上に擦れている。

 エレナは時間をかけ、一文字ずつ確認した。

「ここは……『罪』」

 地下書庫に、その言葉だけが落ちる。

「こちらは『神殿』だと思います」

「他には?」

「この部分は……『追放』。おそらく」

 罪。

 神殿。

 追放。

 断片的な三つの言葉。

 それだけで、絵が持つ意味は十分すぎるほど伝わってきた。

「フロネ様は……何か罪を犯したの?」

 ミリアが尋ねる。

「分からない」

 レインは絵を見つめたまま答えた。

「この絵だけじゃ、何も」

「でも、鎖につながれてる」

「ああ」

「神様たちに裁かれてるように見える」

「ああ」

「それで、町に入れないのも……」

「決めつけるな」

 低い声が出た。

 ミリアが口を閉じる。

 レイン自身も、なぜ苛立ったのか分からなかった。

 文献に残された挿絵は、明らかにフロネが何らかの裁きを受けたことを示している。

 町の結界に拒まれたことと無関係とは思えない。

 だが、絵に描かれた一場面と、読めない文字の断片だけで、フロネを罪人だと決めることには強い抵抗があった。

 森での彼女を知っている。

 何も命じず、何も強制せず、最後までレイン自身に選ばせた神。

 そんな彼女が、神々に裁かれるほどの何をしたのか。

「レイン」

 ミリアが静かに呼ぶ。

「ごめん」

「……いや。俺も悪かった」

 エレナは挿絵を見ながら、深刻な表情を浮かべていた。

「このような記録は初めて見ました」

「教会にも残ってないんですか」

「神が罪を犯し、神々によって裁かれたという伝承自体は存在します。しかし、通常であれば神名も罪状も記録されます。これほど意図的に情報が欠けている文献は……」

「意図的?」

「断定はできません」

 エレナは削れた箇所へ触れないよう、指を浮かせる。

「ですが、紙の傷み方が均一ではありません。特に、名が記されていたと思われる場所と、この挿絵の一部だけが深く削られています」

 フロネの顔。

 青年の顔。

 神殿に集まった者たち。

 そして、文章の重要な部分。

 そこだけが、長い年月の劣化では説明できないほど傷つけられていた。

「誰かが消した……?」

 ミリアが呟く。

「そうかもしれません。あるいは、この文献を守るために、名を伏せた可能性もあります」

「守るため?」

「記録を残すこと自体が危険だったのなら、すべてを書き残すことはできません」

 誰が。

 何から。

 何を守ろうとしたのか。

 新しい疑問が増える。

 真実に近づいたはずなのに、目の前にはさらに深い霧が広がっていた。

「この本、借りられますか」

 レインが尋ねると、エレナは首を横に振った。

「教会の外へ持ち出すことはできません。少し動かしただけでも崩れる可能性があります」

「フロネに見せたい」

「町へ入れないのでしたね」

「はい」

 エレナは考えた後、紙と木炭を用意した。

「挿絵を写しましょう。完全に同じにはできませんが、特徴は残せます」

 三人で手分けし、二枚の挿絵を紙へ写した。

 契約する青年とフロネ。

 鎖につながれ、神殿で裁かれるフロネ。

 契約紋もできる限り正確に描き写す。

 作業を終えた頃には、夜の鐘が鳴り終わっていた。

 エレナはレインの傷を簡単に手当てし、持ち出せない文献を再び布で包んだ。

「この記録については、私も調べてみます」

「お願いします」

「ただし、気をつけてください」

 エレナは真剣な目をレインへ向けた。

「神の過去を探るということは、その神を裁いた存在の過去にも触れるということです」

「神殿のことですか」

「それすら、今は分かりません」

 答えのない忠告だった。

 それでも、胸の奥に重いものが残った。

 教会を出ると、夜風が熱を持った身体を冷やした。

「本当に町の外にいるの?」

 ミリアが尋ねる。

「ああ」

「私も行く」

「もう遅いぞ」

「ここまで聞いて、会わずに帰れるわけないでしょ」

「明日でもいい」

「その神様を一人で待たせてるのは誰?」

 正論だった。

 二人は夜の町を抜け、門へ向かった。

 夜間は門が閉じられているが、レインのみがしる抜け道があった。

 城壁の外は暗い。

 街道を照らすのは月明かりだけだった。

 昼間、フロネを残した大木へ近づく。

 少女は、そこにいた。

 幹へ背を預け、膝を抱えて座っている。

 眠っているようにも見えたが、レインたちの足音が近づくと、ゆっくり顔を上げた。

「遅かった」

「悪い」

「日が沈んだ」

「見れば分かる」

「二回沈むかと思った」

「そこまでは待たせてない」

 フロネの視線がミリアへ移る。

「その人は?」

「ミリア。俺の幼馴染だ」

「ミリア……」

 フロネは名前を確かめるように繰り返した。

 ミリアは少し緊張した様子で一歩前へ出る。

「初めまして。ミリアです」

「フロネ」

「はい。聞いてます」

「レインは、私のことを何て言ってた?」

「変な神様だって」

「おい」

「それから、人に命令しない神様だって」

 フロネはレインを見る。

「変?」

「否定はしない」

「そう」

 不満があるのかないのか分からない反応だった。

 ミリアはしばらくフロネを見つめていた。

 恐れや畏敬というより、存在を確かめるような眼差しだった。

「本当に、神様なんですね」

「たぶん」

「たぶん?」

「神だと言われてきた」

「本人もよく分かってないんだ」

 レインが補足すると、ミリアは困惑した顔をした。

「聞いてたより曖昧な神様だった……」

「だから言っただろ」

「でも」

 ミリアは町の方を振り返る。

「本当に入れないんですか?」

「うん」

「結界に触れると?」

「押し返される」

「痛くは?」

「少し」

 レインは初めて聞いた。

「痛いのか。言ってなかった」

「聞いてない」

「そう」

 フロネは何でもないように答える。

 町へ入ろうとした時、一歩だけ試してすぐに諦めたのは、単に慣れているからではない。

 何度も拒絶され、その痛みを知っていたからなのだろう。

「文献を見つけた」

 レインは写し取った紙を取り出した。

「お前らしい神が描かれてた」

 フロネが立ち上がる。

 最初に、契約の挿絵を見せた。

 青年とフロネが向かい合い、手を重ねている絵。

 フロネは紙を受け取り、しばらく動かなかった。

 その目が、青年の姿をなぞる。

 契約紋を見つめる。

 そして、自分自身の顔へ移る。

「この人が、千年前の契約者か?」

 レインが尋ねた。

 フロネはすぐには答えなかった。

 夜風が髪を揺らす。

「たぶん」

「覚えてないのか」

「契約したことは覚えてる」

「相手の顔は?」

「……よく見えない」

 絵の損傷のことではない。

 記憶の中の顔が、という意味なのだろう。

「どんな人だった?」

 ミリアが優しく尋ねた。

「強かった」

「前にもそう言ってたな」

「でも、力が強いんじゃない」

 フロネは紙を見つめたまま言う。

「自分を、最後まで見失わなかった」

「名前は?」

 長い沈黙。

「思い出せない」

 声に感情はほとんどなかった。

 けれど、紙を持つ指がわずかに強くなった。

 レインはそれ以上聞かなかった。

 代わりに、二枚目の紙を差し出す。

「もう一つある」

 フロネは紙を受け取った。

 神殿の中央。

 鎖につながれ、神々に囲まれた自分自身。

 その絵を目にした瞬間。

 フロネの呼吸が止まった。

 紙が指先から滑り落ちかける。

「フロネ?」

 レインが手を伸ばすより早く、フロネは額を押さえた。

 小さな身体がふらつく。

「おい!」

 レインが肩を支える。

 触れた身体は、ひどく冷たかった。

「大丈夫ですか?」

 ミリアが反対側から支えようとする。

 フロネは何も答えない。

 閉じた瞼の奥で、何かを見ているようだった。

 燃えるような光。

 白い柱。

 遠くで響く誰かの声。

 金属の擦れる音。

 それらが断片となって、フロネの中を通り過ぎている。

「……違う」

 かすかな声が漏れた。

「何が違う」

「分からない」

「今、何か見えたのか」

「声……」

「誰の」

「分からない」

 フロネは苦しそうに息を吸う。

 その瞳が開く。

 普段の静けさはなく、明らかな動揺が浮かんでいた。

「私が……」

 続きを言おうとして、唇が震える。

「私が、選んだ」

「何を?」

「分からない」

 再び、同じ言葉。

 だが今度は、それを口にすること自体が苦しそうだった。

 フロネは落ちた紙を拾う。

 鎖につながれた自分を、黙って見つめる。

「文献には、『罪』『神殿』『追放』って言葉が残ってた」

 レインは隠さず伝えた。

「お前は、神殿で何かの裁きを受けた。だからノラガミになって、町にも入れないのかもしれない」

「……そう」

「何か覚えてないか」

 フロネは首を横に振った。

「ごめん」

「謝るな」

「思い出せない」

「お前のせいじゃない」

「でも、君は知りたい」

「ああ」

「私は答えられない」

「だったら、一緒に探せばいい」

 言ってから、レイン自身が驚いた。

 最初は、名前だけ分かればいいと思っていた。

 契約した神が何者か。

 その程度の確認だったはずだ。

 だが今は違う。

 歴史から名を消された神。

 かつて一人の人間と契約し、神殿で裁かれ、千年もの間放置された神。

 フロネ自身が知らない過去を、このまま見なかったことにはできなかった。

「この町にある記録は、あれだけだった」

 レインは続ける。

「もっと大きな神殿へ行けば、別の文献があるかもしれない」

「大きな神殿……」

「ああ。神殿都市なら、ここより古い記録も残ってるはずだ」

 フロネはしばらく黙っていた。

「行きたい?」

「俺が聞いてる」

「君が決めること」

「今はお前が決めろ」

 フロネの目がわずかに見開かれた。

 レインは逃げ道を塞ぐように、真っ直ぐ彼女を見る。

「お前は、自分の過去を知りたいのか」

 自己支配の神は、誰かに選ばせる。

 答えを与えない。

 命令もしない。

 だが、それは彼女自身が選ばなくていいという意味ではない。

 長い沈黙の末、フロネは手の中の絵へ目を落とした。

「怖い」

 初めて聞く言葉だった。

 レインは息を呑む。

「思い出したら、今の私じゃなくなるかもしれない」

 フロネは静かに続けた。

「絵の中の私は、罪を犯した神かもしれない。誰かを傷つけたかもしれない」

「かもしれないだけだ」

「うん」

「今のお前が何をしたかは、俺が見てる」

「……うん」

「それでも怖いなら、怖いまま決めろ」

 フロネが顔を上げる。

「お前が言ったんだろ」

 レインは右手を握る。

「怖くても進むと決めること。それも自己支配だって」

 フロネはしばらくレインを見つめていた。

 やがて、ほんの少しだけ笑った。

「覚えてた」

「忘れるほど前じゃない」

「そう」

 少女は二枚の絵を重ね、胸元へ抱えた。

「知りたい」

 小さくても、確かな言葉だった。

「私が何を選んだのか。どうして忘れたのか」

「ああ」

「それから」

 フロネは町の城壁を見る。

「どうして、入れないのか」

 レインは頷いた。

「決まりだな」

「待って」

 ミリアが声を上げた。

 二人が振り向く。

「何で、当たり前みたいに二人だけで出発しようとしてるの?」

「二人だけとは言ってない」

「でも、私のこと忘れてたでしょ」

「危険だぞ」

「だから?」

「森ではナラクの眷属に襲われた。次も同じとは限らない。神殿の過去まで関わってるなら、もっと危険になる」

「分かってる」

「分かってない」

「レインよりは分かってる」

「何を根拠に」

「一人で森に入って、死にかけて帰ってきた人に言われたくない」

 痛いところを突かれ、レインは黙る。

 ミリアは一歩前へ出た。

「私も行く」

「どうしてだ」

「放っておいたら、レインはまた何も言わずに消えるから」

「それだけか」

「それだけでも十分でしょ」

 ミリアはフロネを見る。

「それに、私も知りたいんです。フロネ様が、本当はどんな神様なのか」

「様はいらない」

「じゃあ、フロネ」

「うん」

「私は神話や古い文字なら、レインより読めます。教会にも知り合いがいるし、旅の役には立てると思います」

 フロネはレインへ顔を向けた。

「どうする?」

「俺に聞くな」

「君の幼馴染」

「本人が決めたなら、俺が止めることじゃない」

 ミリアが得意そうに笑う。

「決まりだね」

「ただし、危なくなったら逃げろ」

「それはレインも同じ」

「俺は戦う」

「私も必要なら戦う」

「お前、戦えるのか?」

「護身用の術くらいは使えるよ」

「初耳だ」

「レインが教会の話を聞かなかっただけ」

 確かに、興味がなかった。

 ミリアは幼い頃から教会に通い、治癒や守護の神術を学んでいる。本人が戦うところを見たことはないが、まったくの足手まといというわけでもないらしい。

「出発はいつにするの?」

「早い方がいい」

「じゃあ、明日は無理」

「何でだ」

「旅の準備。食料も必要だし、地図もいる。レインはどうせ剣一本で出るつもりだったでしょ」

「……」

「図星」

 ミリアは呆れたように笑った。

「明後日の朝。南門前に集合。それまでに、目的地も決めよう」

「神殿都市なら、王都に近い聖都アルケイアが一番大きい」

「遠いよ。歩いたら一か月以上かかる」

「なら、途中の町で情報を集める」

「うん。それが現実的だと思う」

 二人が旅程について話し始める横で、フロネはもう一度、契約の挿絵を見つめていた。

 千年前の青年。

 今のレインと同じ紋章。

 失われた名前。

 裁かれる自分。

 記憶は戻らない。

 胸の奥に残るのは、理由の分からない痛みだけだった。

 けれど、今は一人ではない。

「レイン」

「何だ」

「ありがとう」

 あまりにも突然で、レインは眉をひそめた。

「まだ何も分かってないぞ」

「それでも」

 フロネは紙を胸へ抱いたまま言う。

「探すと決めてくれた」

「違う」

「違う?」

「決めたのはお前だ」

 レインは町の門へ背を向ける。

「俺は、隣を歩くだけだ」

 フロネはその言葉を聞き、静かに頷いた。

 夜空には雲がなく、無数の星が輝いていた。

 町の中では、人々が神へ祈りを捧げている。

 豊穣を。

 健康を。

 幸福を。

 その祈りが届く場所のすぐ外で、一柱の神が、自分自身の過去を知るために歩き出そうとしていた。

 かつて誰と契約したのか。

 何を選んだのか。

 何の罪を犯したのか。

 なぜ歴史から名前を消されたのか。

 答えは、まだ遥か遠い。

 だが、道は始まった。

 それがどこへ続いているのかを、この時の三人はまだ知らなかった。

 そして教会の地下。

 再び木箱へ収められた古文書の最後のページで、誰にも読まれなかった一行が、ランプの消えた闇の中に残されていた。

 文字は削れ、ほとんど失われている。

 ただ、その末尾に刻まれた一つの言葉だけが、奇跡的に形を留めていた。

 ――神殺し。

 それを知る者は、まだ誰もいない。

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