離縁届を出した翌日、夫の領地で私だけが読める古代魔法陣が起動しました。——ご安心ください、解呪方法は置いていきませんので
最終エピソード掲載日:2026/03/07
五年間の研究は、道楽と呼ばれた。
古代魔法文字を読める人間は、この国に三人。 クラウディアはその一人として辺境伯に嫁ぎ、 領地の豊穣を支える魔法陣を守り続けた。
帳簿を整え、税制を正し、交易路を繋いだ。 夫はその全てを自分の功績として王都に報告し、 愛人の前で妻を「可愛げがない」と笑った。
離縁届に署名する手は、震えなかった。 研究は終わった。もう、ここにいる理由がない。 引き継ぎ資料は完璧に残した。古代魔法文字で。
読めるかどうかは、勉強不足の問題である。
王立学院に戻ると、自室の机に論文が置かれていた。 六年前に書いた自分の卒業論文。 余白が、知らない誰かのメモで埋まっている。
褪せたインクと新しいインク。 何年もかけて書き足された問いかけの数々。 最後のページに一行だけ添えられていた。
研究室は隣です、と。
元夫の領地は、彼女がいなくなった途端に傾き始める。 魔法陣の制御者を失った大地が、枯れていく。 戻ってこいと使者が来る。今更、必要だと。
彼女にはその領地を遠隔で救う理論がある。 だが実行するには、自分の意志で決めなければならない。 五年分の怒りが、その手を止めている。
学者が怒りで結論を歪めた時、 それはかつて研究を道楽と呼んだ人間と何が違うのか。
古代魔法文字を読める人間は、この国に三人。 クラウディアはその一人として辺境伯に嫁ぎ、 領地の豊穣を支える魔法陣を守り続けた。
帳簿を整え、税制を正し、交易路を繋いだ。 夫はその全てを自分の功績として王都に報告し、 愛人の前で妻を「可愛げがない」と笑った。
離縁届に署名する手は、震えなかった。 研究は終わった。もう、ここにいる理由がない。 引き継ぎ資料は完璧に残した。古代魔法文字で。
読めるかどうかは、勉強不足の問題である。
王立学院に戻ると、自室の机に論文が置かれていた。 六年前に書いた自分の卒業論文。 余白が、知らない誰かのメモで埋まっている。
褪せたインクと新しいインク。 何年もかけて書き足された問いかけの数々。 最後のページに一行だけ添えられていた。
研究室は隣です、と。
元夫の領地は、彼女がいなくなった途端に傾き始める。 魔法陣の制御者を失った大地が、枯れていく。 戻ってこいと使者が来る。今更、必要だと。
彼女にはその領地を遠隔で救う理論がある。 だが実行するには、自分の意志で決めなければならない。 五年分の怒りが、その手を止めている。
学者が怒りで結論を歪めた時、 それはかつて研究を道楽と呼んだ人間と何が違うのか。
第1話 離縁届に微笑みを添えて
2026/03/07 12:03
第2話 引き継ぎ資料は学術論文形式にて
2026/03/07 12:03
(改)
第3話 六年分の余白
2026/03/07 12:03
第4話 土と星と、差し出された上着
2026/03/07 12:03
第5話 あなたの名前は、要りません
2026/03/07 12:03
(改)
第6話 今更、お話しすることはございません
2026/03/07 12:03
(改)
第7話 毛布と、眠れない夜
2026/03/07 12:03
(改)
第8話 嵐の中の信頼
2026/03/07 12:03
(改)
第9話 私の名前で、私の研究を
2026/03/07 12:04
第10話 学術的にも、それ以外も
2026/03/07 12:04