第八話 任務説明
昨日から始まった朝の訓練が終わり、汗を軽く拭いて応接室に行くと、成林さんが私たちを待っていた。
「皆さん、お疲れさまです。――特に澄乃さん、昨日に続いてよく頑張りましたね」
「い、いえ……ありがとうございます……」
まだ練習の段階だけど、魔法の制御は昨日より少しだけマシになってきた。たぶん。きっと。
「さて。本題ですが……今日は“澄乃さんの魔法の練習も兼ねた任務”を受けてもらいます」
「えっ、わ、私ですか……?」
「当たり前ですよ。なんのために行くんですか…………今回の任務は、危険度は低いものを三件、順番に回っていただきます」
前回のやつが結構やばかったらしいから、今回は余裕そう。
「任務内容は、軽い怪異の浄化が中心です。場所はすべて近畿圏内。まずは難易度の低い順から行きましょう」
成林さんは三つのファイルを机に並べた。
―――――――――
「ここは京都北部のとあるトンネル付近です。夜になると“ずっと叩く音”が続いて近隣住民から苦情が来ています。姿は見えませんが、弱い霊が多くいる可能性があります」
「音だけ?」
「危害は確認されていません。ただ、放置しておくと増幅する場合がありますので、早期に浄化をお願いします。ここは澄乃さんの浄化魔法の練習に最適です」
ここならもう少し魔法の実力をあげられそう。
―――――――――
「次は奈良の山中。ハイキングコースで遭難が多発しています。霊現象は“影が揺れ動いて道を覆う”という証言です」
「遭難が起きてるのか?」
「はい、ただし知能は低く、脅威度は中程度。ここは悠臣さんが前に出て、澄乃さんには“弱った怪異の浄化”をしていただきます」
「了解だ」
弱った怪異なら……きっとできる。はず。
―――――――――
最後のファイルを開いたとき、空気が少し変わった。
「ここは兵庫の山間部。廃村で“誰かに呼ばれた気がする”という報告が複数寄せられています。姿は見えたり見えなかったり、声だけ、影だけと証言がブレています」
悠臣さんが腕を組み、
「声か……厄介だな。憑依型か、呼び寄せ型か」
と呟く。
「危険度は高くはありませんが、弱い憑依の可能性があります。ここでは無理に澄乃さんを前線に出しません。ただ、最終浄化は澄乃さんにやっていただきます。前回と同じですね」
「な、なるほど……?」
「澄乃さんの“浄化の質”を把握したいんです」
「ということで、まずは京都北部のトンネルへ向かってもらいます。出発は十分後。準備はよろしいですか?」
「問題ない」
「大丈夫だよ澄乃。ちゃんと隣にいるからね」
「軽いのから順だから、気楽にいこ?」
皆が私を見ている。
足は震えてる。でも――
「……は、はい!が、頑張ります!」
震えながら返事すると、紗夜が嬉しそうに肩を叩いた。
「よっし!じゃ、出発っ!」
私は深呼吸をして、皆の後ろを追いかける。




