第六話 対面
私はもう一つの応接室に来た。
ここに私と一緒に旅をする仲間たちがいるんだ。
私は扉を開ける。
中には……四人いた。
「さあ、澄乃さん。挨拶を」
この人、私の呼び方統一してくれないかな。
おっと、気を取り直して……
大丈夫。心の中で復唱した言葉を言えばいいだけ……!
「――はっ初めまして!祓霧澄乃ともうしましゅっ!」
噛んだぁぁぁぁぁ……!やっぱり噛んだぁぁぁぁぁぁ……!
皆さんがこっち見てるよ……!ぁぁあああ消えたい……
すると一人が近づいてくる。
え?なに?なに?怖いんですけど?
「なにこの子!!超可愛いんですけど!!?」
なんか女の人が抱きついてきた!
「紗夜、そのへんにしとけ。祓霧さんが困ってる」
「あぁ、ごめんね澄乃さん!あまりにも可愛かったものだから……つい」
その人が照れながら言ってくる。
「俺たちも自己紹介しようぜ」
「そうだね!私は斬宮紗夜!紗夜って呼んで!妖刀使いで前衛をやってるから、澄乃さんのことはちゃんと守るからよろしくね!」
女の人は紗夜っていうんだ。二十歳よりは下かな?活発そう。
「あ、あの……呼び捨てでもいいです……か?」
紗夜さんは驚いた顔をして、
「もっちろん!」
少し安心した。
「次は僕だね。僕は霧生結弦。結弦って呼んで。呼び捨てでいいよ。役職は霊媒師で、後衛だよ。戦闘は得意じゃないけど、戦後とか、霊との交渉が得意だ。これからよろしくね!」
結弦かあ。年齢は二十歳前後かな。今後、お兄さんポジになりそうな好青年だ。
「最後は俺だな。俺は賀茂悠臣。悠臣でいいぞ。役職は陰陽師で、前衛も後衛も出来る。結界札はそこの結弦に渡して張ってもらうが、俺は攻撃に出させてもらう。これからよろしく」
悠臣。一番年上っぽい。マルチタスクなのかな。結構なんでもできそう。
「あ、改めまして、私は、祓霧澄乃と言います。今日から魔法使いとして就任しました。得意魔法は、浄化と回復です……たぶん……。あの……私、人見知りで……不束者ですが、よろしくお願いします!」
「よろしく」(悠臣)
「よろしくね」(結弦)
「よろしく!」(紗夜)
少し場の空気が和んだ頃……
「さて、顔合わせはよろしいでしょうか?もう仕事内容を話させてもらってもよろしいでしょうか?」
成林さんがそう言ってくる。
「では、まず今回の任務について説明します」
成林さんが静かに姿勢を正すと、応接室の空気が一気に引き締まった。さっきまで和やかだった雰囲気が、すっと仕事モードに変わっていく。
「今回向かっていただくのは、山城地区の“三室峠”です。ここ最近、あの辺りで不可解な失踪が相次いでおりましてね。自治体から調査協力の依頼が来ています」
「三室峠って……」
悠臣さんが小さく眉をひそめた。
「何かあるんですか?」
思わず聞き返すと、悠臣さんが指先でこめかみを軽く押さえながら答える。
「昔から霊が寄りやすい場所なんだよ。境界が曖昧になる。あそこは特に“悪い方”の噂が絶えなくてな」
ひぃ……なにそれ……初仕事から重くないですか……?
「大丈夫だよ澄乃ちゃん!」
紗夜がにっこり笑って、私の肩をぽんっと叩く。
「前衛は私たちがしっかり守るから、澄乃は後ろでお仕事してくれたらいいの!」
うう、もう緊張で変な汗が出てきた。
「現地には明日の朝に向かってもらいます。本日は装備の確認と、必要な式具の受け取りを済ませてください」
成林さんが書類をぱらりとまとめ、締めの言葉のように告げた。
ここ東京ですが!?
明日にまた京都に帰らないといけないんですか!?
「そして――澄乃さん」
「は、はいっ!」
「今日から君は、この三名と共に行動することになる。分からないことや不安があれば、なんでも相談しなさい。新人とはいえ、魔法使いとして立派に任務を担ってもらう。我々は期待しているよ」
……え。
今、期待って言った?
私、人見知りの噛み噛み新人ですよ……?
でも、胸の奥が少しだけ熱くなる。
「……はい。私、がんばります」
「よし、それじゃあ準備に移ろうか」
悠臣さんが立ち上がり、
「案内するよ澄乃」
結弦さんが優しく続き、
「まずは装備室だね!行こ行こ!」
紗夜が腕を引っ張ってくる。
わああ……ちょっと待って心の準備……!
でも、きっとこれが“始まり”なんだ。
魔法使いとしての、私の第一歩。
――三室峠での任務なんて、まだ何も知らなかった頃の話だ。




