第三話 出発
私は今、成林さんと一緒に車に乗っています。
「着きましたよ」
着いた場所は、京都府庁だった。
「ここには、魔法省の支部があるのですよ」
私は応接室に通され、成林さんと向かい合わせになる。
「では、まずは名前と年齢をお伺いします」
「名前は……祓霧澄乃。年齢は……九歳……です」
成林さんは、ニコニコを作り笑いを浮かべ続ける。
「では、魔法を、ここで再現することは可能ですか?」
「……はい。できます。ただ、誰かがケガをしないと……使えなくて……」
成林さんは少し考え込む。
「では、失礼しますね」
成林さんがそういった瞬間、手に激痛が走った。
手を見てみると、深めの傷がつけられていた。
「ッ!?」
――いつの間に!?
私の体で試すとは思わなかった……結構痛いんだから!
「天より授かりし浄の光よ。この世にある理を曲げ、この者の穢れを退け、命の乱れを正せ」
《天癒環・第一式―――光癒》
この言葉、省略できないかな。
そんなことを考えていたら、手の傷は治っていた。
案外余裕あったな。
「素晴らしい!やはり貴方はそうでしたか!」
成林さんが興奮気味に言ってくる。
……もう、怖いを通り越してキモい。
「早速手配しなくては!おい、おまえ!出発の準備をしろ!」
「はっ!」
成林さんが警備の人に命令する。
出発?どこに行くんだろう。
「さあ、貴方も支度を」
「えっと……どこに行くんですか?」
「…あ、あぁ!そうでしたね!私としたことが……」
成林さんは咳払いをする。
「今から澄乃さんには、私たちと魔法省本部、つまり東京に来てもらいます」
「……はい?」
何言ってるんだろうこの人は。
―――――――――
東京に行くということなので、一度早瀬さんのもとに戻ることになった。
もちろん、荷物をまとめたらすぐに出発らしい。
私は自室に戻り、持っていけるだけの荷物を鞄に詰める。
早瀬さんには事情を説明してあるらしい。
……こんな上京、聞いたことがないよ……
何をするのかもわかってないし……
そんな事を考えながら、階段を降りると、
早瀬さんがひとり立っていた。
澄乃は歩みを止め、深く頭を下げる。
「……今まで、本当にありがとうございました」
早瀬さんはふっと笑った。
泣きもしない。すがりもしない。
ただ、大切に育てた子どもを、きちんと送り出す大人の顔だった。
「澄乃。あなたはもう、自分の足で歩ける子よ。
胸を張って行っておいで。これからは、たくさんの人達を助けることになるわ。
でも、これ誰は忘れないで。
自分の体を第一にね」
その声を聞いた瞬間、澄乃の中で何かが静かにほどけていく。
幼い頃から背中を押してくれた手、叱ってくれた声、抱きしめてくれた温度。
どれも大切で、けれど今はもう——持っていく思い出として十分だった。
「早瀬さんも、体を大事にしてくださいね?
たまに里帰りに来ます。なので……」
私は息を吸う。
「いってきます」
「ええ、いってらっしゃい」
私は満面の笑みで、第二の家を去った。




