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答え

どうも、雪木です。

今回もこんな感じで書いてみましたので、どうか楽しんでもらえると嬉しいです。

  時間が過ぎていく中、答えを見つけ出せずにいる僕。

  「そういえば、その子はどんな子なの?」

 沈黙に耐え切れずに、とりあえず言葉を振り絞る。

  「そうやなぁ。一応制服からしてセーラー服やったから、多分中学生とちゃうんかなぁ。手紙に学校の名前とか書いとらん?」

  「どうだろう。ちょっと待ってね」

 手紙を見るが、学校名までは書かれていない。

 僕は自分のスマホを取り出して、この辺りで高校でもセーラー服の学校を調べた。

 【へぇ、結構出てくるじゃん。でもリボンとか多少違うな】

  「拳野さん、制服の特徴とかって覚えてる?」

  「確かリボンの色は赤やったけど、そんなに特徴って呼べるほどのモンはなかったで?」

  「そっかぁ」

 再び手紙に目線を落とす僕は、ある事に気が付く。

  「あれ?今日って何日だっけ?」

  「五月十日や」

  「この手紙にさ…書いてあるんだけど…『五月十日の夕方五時に鏑木公園で待ってます』って」

 拳野さんは目を丸くして慌てて手紙を見直し、急いでスマホの時刻を確認した。

  「やばいわ、もう四時半やん!」

  「急ごう!走って行けば鏑木公園なら何とか間に合うよ」

 走り出そうと拳野さんの手を引いたが、彼女の足は止まったままだった。

 目線を落とし、手に取った手紙をくしゃっと握りしめる。

  「ええんやろか…答えも出やんのに」

 どうやら答えが出ないまま行くのに対して彼女なりに、後ろめたさを感じているのだろう。

 そんな拳野さんに僕は何と声をかければいいのか。

 ああでもない、こうでもないと頭の中を否定と肯定が入り乱れる。

  「いいんじゃないかな、答えが出てなくてもさ」

 それが考え抜いた先に出した答えだった。

  「でも…それじゃ…」

  「まずは一回ちゃんと会ってみよ。まだしっかりと話せてないんでしょ?」

 拳野さんはゆっくりと一回縦に頷いた。

 【まぁ、しっかり話したことがないならまずは話してみて、どんな人物なのか知らないとね】

 そうして僕らは、鏑木公園へと走り出した。


 公園に着くと、ベンチに一人セーラー服の子が座っていた。

  「…あの子や」

 ぽつりと拳野さんが零す。

 手紙の子を見つけたはいいが、中々足が前に動かない。

 何か言葉をかけようとした時だった──。

 バチン!と拳野さんは力強く自分の頬を叩いた。

  「いやな、あの子の顔…めっちゃ不安そうやん?ウチがそんな顔させてた思うと、無性に自分が情けのう思うてな。気合い入れ直したったんや!」

 赤くなった彼女の頬だが、それを引き換えに目に力強さが戻っていた。

 気合いが戻った彼女は、ベンチに向かって一人歩き出す。

 僕は少し離れたところで様子を窺うことにした。

 しばらく二人の様子を見ていると、最初こそはお互いぎこちなさが隠し切れない感じだったけど、話していくうちに拳野さんの持ち前のコミュニケーション能力により、打ち解けていく。

 そんな中、手紙の子はふと視線を落として頬を赤らめながら口を動かしている。

 少し離れているので会話の内容までは聞き取れないが、恐らく想いを伝えているのだろう。

 その想いを拳野さんは真っ直ぐ見つめ、受け止めている。

 そして彼女も答えを告げた。

 手紙の子は、答えを聞いて口角を上げて、スマホを取り出して何かやり取りをしている。

 『ピロリン!』

 僕のスマホが鳴り、画面を見てみる。

 『すまん、勇希奈。色々話し合ってみたんやけど…その…とりあえず友達からっちゅうことになったわ』

 彼女からのメッセージを見た僕は、肩の力がスッと抜けていく。

 『うん、おめでとう!もう時間も時間だし、送ってってあげなよ』と返す。

 そうすると拳野さんは、チラッとこちらに視線を向けて、コクリと一回頷くと─。

 『ありがとう』

 声にはしなかったが、そう口が動いたように見えた。

 二人はベンチから立ち上がり、どこかよそよそしい感じで歩き去っていった。

  「さてと、帰りますかね」

 そうして僕は、一人自転車を取りに戻る為に学校へと戻るのだった。


 学校に戻ってみると、六時近い事もあって校舎の電気はほとんど消えていた。

 幸いにも職員室の灯りはまだ消えていないようだったので、急いで駐輪場へと走る。

 すると─。

  「…十百那?」

  「うん、待ってたよ」

 駐輪場の柱にもたれかかって、ちょこんと座る十百那の姿があった。

  「もしかして、ずっと…?」

  「そうだよ。だって、彼女だからね」

 そう平然と言い放つ十百那の笑顔は、僕にはどこか怖く感じた。

 もちろん待ってくれてたのは嬉しいけど。

  「さ、もう暗くなってきたから行こ!」

 十百那は先に自転車のスタンドを蹴り上げて先導する。

 慌てて自分もスタンドを上げて、彼女の元へと駆け寄っていく。


  「で、問題は解決した?」

 少し歩いたところで彼女は口を開く。

  「まぁね。ちょっと難しい所はあったけど」

  「そっか。勇希奈のことだから、困った人を見逃せなかったんだよね?」

  「うん」と頷くと同時に、彼女の言葉に僕の心臓はドクンと一回大きく跳ねた。

 付き合いも長いから当然なのかもしれないが。

  「ね、ほらほら」

 十百那は道中のベンチに腰掛け、座るように求める。

 横に座ると、彼女はすうっと僕の手を取る。

 【あれ?】

  「うん?勇希奈の手…なんだかいつもより温かい気がする」

  「え?嘘だよ。十百那の方が冷たいんじゃないの?」

  「いや?僕は至って普通だよ?ほら」

  「ちょっ!何を!?」

 おもむろに顔を近づけ、僕の額に彼女の額がコツンと当たる。

 額越しに体温が伝わってくるが、やはりどう考えても自分の方が高い。

 その時ようやく熱を帯びていたのは僕の方だったと気がついた。

  「ふふふ、照れてる。可愛い勇希奈」

  「…こんなに近くなんだから…当たり前じゃんか」

 ただでさえ端正な顔立ちが、こんな至近距離にいれば誰でも照れるに決まっている。

 それに──。

 【それに、今は…】

  「それだけじゃないよね。もしかして…意識しちゃってる?」

  「……うん」

 今目の前にいるのは、僕の生涯で出来た初めての恋人。

 家族以外で出来た初めての大切な人。

 そう思うだけで、僕の心はドクンドクンと跳ね、温かい何かで満たされていく気がした。

  「ね、お願い。久しぶりに充電させて」

 彼女は両手を大きく広げた。

  「いいけど、その前にちょっと待った」

 すっかりハグを待ち構えていた十百那を、一度グイッと押し戻す。

 その気になっていた彼女は、まるで鳩が豆鉄砲を食ったようだ。

  「あの時私は、先に帰っててって言ったよね?あと、最近ちょっと怖いから気を付けて」

  「ごめん、気を付けるよ。でも…どうしても…」

  「まったく、王子様はどこ行っちゃったんだか」

 僕はそれに応え、同じく両手を大きく広げて彼女を優しく包み込む。

 それに対して十百那も、僕の背に手を回して応える。

  「勇希奈の温かさ…匂いすべて感じるよ」

 そんな事を言われ、僕はふと袖の匂いを確認した。

 問題ないようで安心したが、僕の鼻にも彼女の髪から放たれるシャンプーのいい匂いが、鼓動を早める。

  「ふふ、心臓バクバクしてるね」

  「…十百那もでしょ」

  「うん。だって嬉しいんだもん」

 二人きりの空間はどこかこそばゆくも、居心地は悪くなかった。

 ひとしきり充電が終わったところで、ベンチから立ち上がる僕らは、再び歩を進める。

  「そういえば、テスト勉強の方はどうなんだ?」

  「まぁ、対策はしたからある程度は取れるんじゃないかな。十百那は?」

  「しっかり要点は押さえてるし、大丈夫かな。また勇希奈と首位争いできるのが楽しみだ」

 中等部では年間グランドスラムを達成したが、それも彼女の存在が非常に大きい。

 うかうかしていたら、彼女の学力を考えればあっという間に負けてしまう。

 そんな状況に勇者としての心が燃えたのか、絶対に負けたくないと、いつも必死に勉強したのを今でも忘れない。

 【今でもそうなんだけどね。昨日もなんやかんやで夜の二時くらいまで勉強してたし】

 だが、不思議と苦にはならない。

 楽しいのは変わらないが、やはりやるからには誰にも負けたくはない。

  「ちょっと勇希奈の自習ノート見せてよ。僕のも見せるからさ」

 これはいい機会だ。

 切磋琢磨している人物の自習ノートほど為になるものはない。

 お互いに自習ノートを交換し、ページを捲っていくと、自分との違いに驚かされる。

 【へぇ、ここのやり方面白いなぁ。ここもこんなやり方があるのか】

  「いやぁ、流石は中等部年間グランドスラム達成者だ。随分と違いがあるもんだな」

 僕のノートを見た彼女は、思わず舌を巻いている。

  「十百那の方だって凄いじゃん。特にここ、私じゃあ思いつかなかったよ」

  「なんかさ、最近二人きりで勉強してなかったから、新たな発見があるよね」

  「私も思ったよ。良かったら明日さ、土曜だし一緒に勉強しない?久しぶりに」

  「勇希奈から誘ってくれるなんて嬉しいな。どこにしよっか?」

 未だに僕らの関係性は一部を除いて、未だに秘密のままである。

 いつまでも隠し通せるわけではないのは重々承知の上ではあるが、どこかいいタイミングはないだろうか。

 【でも、今はまだ…いっか】

 この秘密の関係というのも悪くはないし、何より──。

  「ねね!こことかどうかな?」

  「へぇ、いいじゃない。隣町にこんな展望デッキのあるカフェあったんだ」

  「中等部の頃に偶然見つけてね。ずっと勇希奈と行きたいなって思ってたんだよ」

 そう言い放つ彼女の無邪気な笑顔に、心がギュッとなる。

 【ほんとに、二人っきりだとこんなに…】

 夕焼けに照らされた十百那の笑顔が、なんだかいつもより眩しく感じた。

 

 ──翌日。

 約束の時間よりも早く家を出た僕。

 何だか家に居てもソワソワしてしまって、落ち着かずに少し散歩でもして気を紛らわしてから行こうと思ったのだ。

 【とは言っても、流石に一時間前は早すぎたよなぁ】

 すると道中のお店のガラスに自分の姿が映り込むのが見えた。

 【変じゃない…よね?】

 昨日帰った後に散々悩み抜いて選んだ服だが、映り込む姿に急に不安に駆られてしまう。

  「もっと可愛らしい方が?いや、あくまでも勉強会だし…」

  「ちょっと!なに一人でブツブツ言ってんのよ」

  「うわぁ!」

 自分の服装の事に夢中になっていた僕は、突然声をかけられて背筋がピンッと伸びきってしまった。

  「な、なんだ。万理華か。ビックリさせないでよ」

  「いやいや、さっきからずっと立ってて気が付かないのもどうかと思うわよ」

 確かに一理ある。

 それはそうと、冷静になって一つ気になった。

  「どうして万理華がこんなところに?」

 今日は土曜日だし、彼女の行っている塾は無いはずだが。

  「めんどくさいけど、ママに買い物を頼まれちゃって。今から行くとこだったの」

 そう言う彼女の手には、買い物リストとしてびっしり書かれたメモ用紙があった。

 万理華の母も人気の美容院の店長でもあるので、仕方ないとは彼女の弁。

  「で?アンタはさしずめデートってとこ?」

  「デートっていうか…二人で勉強会だよ」

  「それをデートとも言うのよ」

 丁度いい機会なので、彼女にもファッションチェックを頼んでみた。

 一通りじっくり見た万理華からは「いいんじゃないの?」と一応合格は貰え、肩をなでおろす。

  「別に勉強会ならそんな可愛らしい服じゃなくてもいいし。てか、時間はいいの?」

 万理華に言われスマホの時間を確認してみれば、すっかりいい時間になっていた。

 彼女に別れを告げ、僕は駅の方へと駆けていく。


 約束の隣町の駅のホームに着き、周囲を見渡す。

 ひと際高校生とは思えないスタイルなので見つけるのには苦労はしなかったが、何故だか僕にもちらほら視線が向けられるのは不思議なもんだ。

  「ごめん、待った?」

  「いや、さっき来たところだよ」

 声をかければ、いかにも嬉しそうな笑顔を弾けさせる十百那。

 着いたばかりなので、もう少しゆっくりしてから行きたいところではあった。

 しかし、二人揃った僕らに対して向けられる視線がさっきよりも増えた気がして、なんだか落ち着かない。

 さっさとホームから出た僕らは、足早にバスへと乗り込むのだった。

 バスに揺られる事三十分。

 バスを降りて、約十分ほど歩いたところに目的のカフェがあった。

 一本の巨木の下にひっそりと佇むそのカフェは、街の喧騒から隔離された別世界のようで、入る前からワクワクしている自分がいた。

  「どう?素敵じゃない?」

  「うん。早く入ろ!」

 いつになくテンションが上がった僕は、軽い足取りでカフェに入店した。

 【うわぁ、良い雰囲気】

 中はいかにも老舗の喫茶店といった感じで、おしゃれな古時計やアンティーク調の雑貨がいくつか飾られている。

  「いらっしゃい。若い子にはちょっと退屈かもしれませんが、ごゆっくりしていってくださいね」

 オールバックが特徴的なマスターが、ニコッと笑って出迎えてくれた。

 僕らは少し離れたテーブル席に座り、メニューを開く。

 いくつか注文したら、さっそく勉強用具を広げ、まずは注文した品を待つ。

  「…その…今日も、か、可愛いね、服」

 ぎこちなく十百那が僕の服を褒めてくれた。

 視線は逸れ、顔は真っ赤だったがそれでも僕には嬉しかった。

  「ええと…と、十百那も…か、可愛いと思うよ」

 僕も褒めようと思ったのだが、同じようにぎこちなくなってしまった。

 その様子に僕らは目を合わせ、互いに笑った。

 そんな暖かな空気の中で僕らは、小気味よくシャーペンを走らせるのだった。

いかがだったでしょうか?

もし応援してもらえれば、励みになりますのでよろしければお願いします。

では、また次回で。

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