それはまさにボッチ
あの後、とくにやることがなかった俺達は、取り敢えず安全地帯を確保して、眠りに就いた。
ちなみに、大雅とナイトは土を掘って、内部をビームで焼き固めた拠点をシェアして使い、俺はよく分からないが自然にできた物ではなさそうな、恐らく他の水棲生物が掘ったであろう巣穴で眠った。
……別に寂しくなんて無いんだからねっ!
なお俺は、なかなか眠りに就けなかった。理由としては、コイという生物には瞼が無いことと、慣れない環境という事が挙げられる。
それはともかく、新しい朝が来た、希望の朝……かもしれない。
まあ、取り敢えず水面に上がって……。
あらお客さん?
とりま食らえ発電体当たりアタック。
「おっ……やっと起きてきたか。遅いぞ……ってなに食ってんだ?」
「知らん。何だろコレ、多分俺が寝てた巣穴の主なんだけど」
何だろうこの魚にカニのハサミがくっついた様な生物。
てか俺がやったことって、巣穴を奪ったついでに家主の命まで奪った極悪非道の行いなのでは……?
いや考えるのはよそう、これがきっと弱肉強食というやつなのだろう。
食われるヤツが悪いのだ。
「ところでコイって歯がねぇよな、どうやって食ってんだ?」
「あーそれは……」
俺が説明しようとした時、いきなり現れたナイトが偉そうな声で。
「それについては僕が説明しよう!」
と、言ってきた。これはコモンビーン博士モードだな。
「コモンビーン博士だー!」
「いや、なんだよこのノリ」
コモンビーン博士はコモンビーン博士だよ、異論は認めん。
「君の言う通り、コイの口には歯はないんだけど、コイには咽頭歯っていう歯が喉に付いていて、この咽頭歯でコイは日本の十円玉なんかも曲げることが出来ちゃうんだ」
「わーい!ありがとうコモンビーン博士!」
「おっおう……」
仕切り直して。
「で、だ」
「どうしたの? イケメン」
「なんだい? イケメン」
「この会話前にもやらなかったか?」
気のせい気のせい、俺たちがそんな芸人魂に欠ける天丼をやるわけ無いじゃないか。
「気のせい気のせい、僕たちがそんな天丼やるわけ無いじゃん」
「以心伝心じゃないか」
「「ウェーイ!」」
「なんだこいつら……」
ソウルブラザーに決まってるんだよなぁ……。
「それはともかく、だ。今日の目標として、食料の確保をやりてぇ」
まあ、そうなるよな。俺は水中に甲殻類が沢山居るのを見たから平気だが、陸上には虫程度しか見つけて無い。最悪コイがトカゲに口移しでエサを与えるという地獄のような光景を生み出す事になるだろう。
「あっ! そういえば言って無かったけど、僕の体も食料が要るみたい」
「えっ……マジで?」
「マジマジ、いやね、僕のスキルに有機物魔力変換機構って言うスキルが有って……ね?」
「なにそのドラ○もん」
「それなら草でも食ってりゃ良いんじゃねぇか?」
「僕もその作戦で行こうと思ったんだけどね? 一つ問題があって……」
「何が問題なんだ?」
「この体ね? 誰がやったか知らないけど味覚付いてるんだ……」
「うわっ……」
「そりゃ辛いな……」
草食べたら草の味がするのか……、辛いなそれ……。
……いや、どうなってんだソレ。お前ゴーレムだろ。
「とまあ、予想外な事も有ったが今日は食料確保で異論はねぇな?」
「良いんじゃね?」
「良いと思うよー」
あ、そうだった忘れてた。
「俺ってどうしたらいい? 陸上はまだ進出出来ないんだけど」
「そうだったな、水中にはなんか食えそうなモン有ったか?」
「甲殻類、主にエビ。あとは小さい魚……と言っても俺と同じくらいの大きさのも居るけどね。水質は物凄く綺麗でそのまま飲めそうなくらい」
「なるほど、薄々感じてたけどさ……ハッちゃんどう考えてもこの付近に生息する生物じゃ無いよね……」
うん、俺もそう思う。電気で周りを探ったり、この水の中だと物凄く目立つ体色だったり、汚染に強そうだったり。
「まあ、地球ならコイは侵略的外来種だしね」
「それもそっか、ハッちゃん侵略的外来種だったね」
「んな事を言ったら俺ら全員外来種じゃねぇか」
「「「HAHAHAHA!」」」
ところで神によって入り込んだ生物は外来種になるのかな? まあいいや。
「……よし、取り敢えず行動を開始しようぜ」
「「はーい」」
「まずはハヅサ、お前はなんとか陸上に魚介類を水揚げしろ」
「わぁい♪無茶振り」
「次にナイト、お前は俺と一緒に食い物探しに行くぞ」
「オーケーだよ」
「そんじゃ行ってくる」
「死なないでね……相棒……」
「ああ、そっちもなブラザー……」
「ほんと、お前ら仲良いな」
……で、マジであいつら俺を置いて行きやがったので真面目に魚介類を捕獲しに行くことにした。
と言っても捕獲自体は全然難しくはない。
無害オーラを出しながら自分より少し小さい魚に近づいてビリッと電気を浴びせる。これで捕まえることは出来た。
問題はこれをどうやって水揚げするかだ。
水面に向かってプカプカと浮き上がって行く魚を追いかけながら考える……。
……まあ地道に陸に寄せるしかないか……。
……こうやって……そっちじゃねえ! ここをこう……。
よしだいぶ岸の近くまでやって来た、水の流れ許すまじ……。
と、そんな八つ当たり的な事を考えていると……。
「ギャッギャギャーギッギャー」
そんな耳障りな鳴き声が聞こえてきた。
やはり気になるので水面から顔を出す。すると、目の前に緑色の人型生物が……。魚眼故のピンぼけで詳しくはわからないが、恐らくゴブリン的な生物であろう。
その生物は、俺の方へ反応する隙も無いほどのスピードで手を伸ばすと、俺の側に浮いていた魚の死体をつかみ取りそのまま森へと消えていった……。
……泣きそう……。




