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無表情に感情的

なんだこれは……遅すぎる……

ゴブリィィン……許さないからなぁ……いつか陸上に進出した暁にはお前を感電死させてやるからなぁ……。

グヘヘ……。びしょびしょに(水で)濡らしてから(電気を)イレて、立てなくなるまで(電気で)痺れさせてヤるぜぇ……。


……と、注釈が入らなければゴブリンに欲情する非常にユニークでクレイジーな趣味を持ったコイだと勘違いされそうな思考を垂れ流しながら、やっぱり努力の結晶(サカナ)を掠め取られたのは悲しいなぁ……なんてことを思っていると。


「ハヅサ! 魚はどうだ……って、悲しそうな顔だなおい、ダメだったのか」

「いや、なんでお前はコイの表情を読み取れるんだ? 正解だけども」

「よく言うなぁ、こっちが何年、わざとやらねぇ限り、ほとんど表情が変わんねぇお前に苦しめられたと思ってんだ?」

「苦しめられたって、ひどいなあ……」

「しかもお前、声色もちょっとしか変わらねぇしよ」

「ほんとねー! あの全く声色を変えずに全力の大声出す技術、凄かったよねー!」

「いや、あれ結構感情出てたと思ってたんだけど」

「え? ほんと?」

「マジか、出てなかったのか」


しっかりと俺にも感情は在るし、結構豊かな方だとも思うんだけどね……いかんせん表情が感情とリンクしないのだ。べつに顔面の神経が麻痺しているとかではない、ただただ自然と表情が出ない。


そのお陰で学校では『サイコパス』の二つ名で通っていたよ……。

いや、努力はしたんだ。意識して表情を出したり、声色を変えようとしたり……、まあ、どうしても咄嗟に反応したりすると、一拍遅れて表情が出たりするから『サイコパス』が『一般人に擬態しきれないサイコパス』になっただけだったけどね……。


「ところで俺の視覚が正常に働いているのなら、ナイトが身の丈程のナイフを持っているように見えるのだけれど」

「おっハッちゃん駄洒落? あんまり面白くないけど」


あっ……駄洒落になってた、恥ずかしいなこれ……。


「ハッちゃんって、神様に性癖オープンにした割には結構恥ずかしがり屋だよねー」

「え、今の表情に出てた?」


出てたとしたらかなり嬉しい、俺はとくに自分の感情を覚られたくないだとかは思っていないのだ。


「いや全然、ついでに言うとその嬉しそうな感情も全く出てないよ。そもそもハッちゃん今コイだよ」

「全然……まあ今コイだし……魚だから……」

「いやお前、人間の時から……」

「それ以上言うな!」

「すげぇ……どうやったら今のその変わらねぇ声色で発音できんだよ……」



「で、結局そのナイフはどうしたんだ?」

「森の中を二人でラブラブデートしてたら」

「デートじゃねぇしラブラブでもねぇ」

「ゴブリンっぽい生物が、粗末で汚れた棒でいたいけな子供をめちゃめちゃにしてるのを見つけて」

「棍棒を使ってゴブリンから逃げ遅れた鹿の子供を捕まえようとしてたってことだ」

「その拍子にゴブリンの腰から落ちたナイフをこっそり回収してきたってわけ」


なるほどなるほど、つまりは完全なる偶然ということか。

まあ、武器はあるに越したことはないし、ゴブリンには自分の物を取られる悲しみを存分に味わってもらおう。


「それにしてもよくそんな体の大きさに釣り合っていない物を持てるな」

「ハッちゃんそこに目を着けちゃう? この体ねー、見た目よりもずっと力があるんだー」


へー、そうなのか……。

あっ思い出した。


「聞きたいことがあるのだけれど」

「なんだ?」

「結局食料って獲れたの?」

「……あー、結論として俺らの大きさじゃあ虫くらいしか捕まえられねぇって事になった」

「いや別に僕は昆虫食平気なんだけど、タッちゃんがねー、僕は親のところに居たときはよく食べてたし」

「ナイト……」


いや悲しいわ、なぜこんなにひどい親の下でこいつは過ごさなきゃいけなかったんだ。


「あっ……ハッちゃん、まーたこの事で悲しくなってる。僕の事は平気だって何回も言ってるじゃんか」

「そりゃな、ハヅサはこういうヤツだからな」

「ほら、ハッちゃん。ご飯を食べる度に寄生蜂に狙われるモンシロチョウよりもずっとマシだから」

「モンシロチョウよりマシ……独特だな……」


うぅ……だってさあ……。





しばらく経って……。

……落ち着いた。


「ところで、大雅は泳ぐことはできるか?」


泳げれば少しは魚介類の回収作業も楽になると思うんだけど。


「そういや試したことねぇな」

「俺的には多分泳げると思うのだけど」

「なんでだ?」

「まず大雅の持っているユニークスキルのスサノヲの加護にあるスサノヲは、海神、嵐神、農耕神の神格を持った神様なのだが、海神なら泳げて当然だろうと」

「そうだったのか」

「へーそうなんだー」

「!? ナイトが知らない……だと……」

「いやいや、タッちゃん、僕は生物とウィルスの一部くらいしか知らないよ? 多分全体でみたらハッちゃんの方が物知りじゃないかなあ」

「どうだ、少しは見直しただろう?」

「わーすごーい」

「……棒読みだなぁ」

「お前に言われたくねぇ」


仕切り直しまして。


「取り敢えず泳いでみない?」

「おう、そうすっかな」

「タッちゃん頑張れー!」


すると大雅は水に入っていき、――何度か溺れそうになったが、無事に泳げるようになっていった。


ちなみに泳ぎ方は手足を体の側面にぴったりと付け体をくねらせて泳ぐというもの。


黒い体色と合わせるとこれは……


「ねえハッちゃん……」

「うん分かってる」


「「どこの大怪獣だ!」」

ハヅサは生き物を見たら30%くらいの確率で種類と生態が分かる、その生き物に関する文化も分かる。というか全体的に色々なことを知っている。

ナイトは生き物を見たら80%くらいの確率で種類と生態が分かるが、文化などはわからない。

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