【第3話『2-Cの担任教師』】
たまに効果音を「描写」ではなく「音」として表記する場合があります。
どうかご了承の程をお願い申し上げます。
例
激しい音がする⇒ドォォン!
俺・千晴・慶太・九条は四人で全力疾走した為、バスを使うより早く戸塚駅に着くことが出来た。
その甲斐あってか、いつも乗ってる時間の一本遅い東海道線に間に合うことができ、その上、横浜につくなり再び全力疾走したお陰で無事に9時00分の始業ベルに間に合い、俺達はギリギリで席に着けた。
千晴は1年生なので俺たち2年生(3階)とは違い教室は2階だ、今頃は無事に着席している頃だろう。
その時、カァーン…コォーン…と鈍くも厚みのある大音が学園内に響き渡る。
さて、ここで皆さん(?)はお気が付きであろうか?
この学園、チャイムには機械を用いず、昔ながらの鐘を使用している。
これは開業学園校長の趣味が転じたもので、昭和の名残を消さないようにと言う意味が込められている。
確かにこの開業学園は、昭和初期に造られた横浜初の学校だ。
しかし、だからといって、いつまでも昭和のままの鐘は止めて欲しい。
正直、とてつもなく煩いのである。
街中に響き渡る程だ。
そのあまりの大音のせいで、その街の住民平均起床時間は始業ベルの9時00分という、横浜1生活習慣がキチンとしている地域と市長から賞賛を受けている。
つまりこの音で嫌でも目が覚めてしまうのだ。迷惑な話だと思う。
それにしても先生来んの遅いな。
いつもなら始業ベルと共に教室に入って来るのに、鳴り終わっても教室のドアが開く気配がない。
暇だったので、俺は前の位置に座る慶太に話し掛けることにした。
「谷口が来る前に着ければと思ったけど、これじゃ急ぐ必要もなかったよな」
「だなぁ、谷ちゃんの機嫌削ぐと後がめんどいから急いだのになー」
谷ちゃんと言うのは、俺たちの担任“谷口 治”の事だ。
時間にはルーズで、遅刻とか無計画な時間浪費を極端に嫌う。ちなみに化学の教師でもある。
走った体力もほとんど回復した、だけど少し熱さが身体に残っていたので、俺は隣の席に座っている九条に窓を開けるように頼もうとした。
九条は暇そうに、机に肘を突きながら外を眺めている。
どこか黄昏ているようで、つい見惚れてしまう。
そう言えば昔から朝が弱くて、朝礼やHRではぼーっとしたりしているんだよな。
そんな九条を見てると、何やら俺の方まで気分が軽くなっていき、眠気が襲ってくる。
「ふぁ~~ぁ、寝み━━━」
ドカァァァァァァァァン!!!!
「うぉぁっ!?」
不意討ちだった。
突如として教室の前の扉が爆発したのだ。
つうか何!?何事!?教室テロ!?
教室内は爆煙と動揺で充満する。
俺自身もパニックを起こしてしまっている。
よくよく考えれば、この爆発の原因とか、なぜ爆煙が緑色なのかとか、疑問に思う点はいっぱいあった。
しかし、いきなり過ぎた為、そのような冷静な分析が出来ていなかった。
ふと横から咳き込んでいる九条と、前から目を回している慶太の姿が見えた。
恐らく慶太は、爆発の拍子に飛んできた扉の破片に頭を強打してオチたのだろう。
「な、何……いきなりっ、けほっ」
俺は慶太を一時見なかった事にして、九条の方に行き自分の制服の上着を脱いで、頭から被せてやる。
これなら煙を多少なりとも防げるだろう。
「一之瀬君……?」
「換気するから煙が外に出るまで被ってろ」
ぽかーんとしている九条だったが、直ぐに上着を頭から被り「ありがと……」と言った。
上着に隠れて余り見えなかったが、九条の頬が紅く染まっているように見えた。
とりあえず側の窓に向かい、順番に全て開放していく。
煙は空気に従い、外へ逃げ出してくれた。
教室に視界が戻ってくる。
にしたって、相変わらず人騒がせだ。
九条に上着を渡した辺りから、緑色の煙を冷静に判断する事が出来たわけだが、こんな奇想天外な事をするのは開業において一人しかいない……。
「いやぁ、わりぃわりぃ」
的を得るかのごとく、聞き覚えのある声が耳に届く。
壊れて吹き抜けになった扉の外から、男性が入ってきた。
なぜか紺色のジャージを常備着用していて、しかもその上から白衣を羽織ると言う斬新なセンスをしているこの男、谷口は悪びれた様子もなく顎に生え散らかした髭を擦り一言。
「まさか爆発するとはな~」
一言ならず他人事のような発言。
これにはクラスの皆も黙っていなかった。
「何してくれちゃってんの、アンタ!?」
「爆発を起こした当人が言うセリフじゃないわ!」
「カァンコォンと来てドカァンって何だよ!どんな始業ベルだよ!」
「先生!慶太君が倒れてます!」
各々(おのおの)が文句を述べるなか、谷口は少し考える素振りを見せた後、人差し指を掲げて「いつものことだろ」と一言。
それは鶴の一声の如く、クラスの皆を納得させた。
・・・納得はしたのだが、どうにも釈然としないと思うのは俺だけだろうか?
ちなみに最後の生徒のセリフの深刻さをオールスルーする2-Cの皆は凄いと思う。俺も人のことは言えないが・・・。
そう考えた矢先、慶太のやつがムクッと起き上がり、谷口の姿を確認するなり溜め息混じりに笑った。
「んだよー、またアンタの仕業かよ、谷ちゃん。
今度は何の実験に失敗したんだ?」
慣れた感じで応対する慶太。
慶太よ、お前はそれでいいのか?
仮にも今の爆発の唯一の被害者だろ、お前。
谷口も全く反省した様子もなく、普通に事情説明をし出す。
「いやな、小型爆弾の開発しててよぉ。 珍しく開発に成功したもんで皆に見してやろうと思ったら、なんかポケットから落ちちまって、この様だよハッハッハ!」
「ハッハッハ、じゃねぇー!」
「あんた、どんだけ危険なモン見せ付けようとしてんだよっ!」
「以前も化学実験室を爆破してましたよね!?先生!」
再びクラスからのクレームと言う名のツッコミが巻き起こる。
ぎゃあぎゃあと騒がしくなってきた2-C、俺は苦笑しつつもこの状況を楽しんでいた。
クラスの連中も怒鳴ってこそいるが、どこか緩んだ表情をしていて、本気で怒っている者は一人もいない。
何気に谷口は人気がある。先生としてではなく、友達的な意味としてのようだが。
「ったく、本当人騒がせだよな……」
「そうだね」
気付くと九条が横で、苦笑しながら谷口とクラスの皆のやり取りを眺めていた。
「一之瀬君、上着ありがとう。……あ」
九条は上着を俺に返そうとした手を止めた。
何で出した手を引っ込めたんだ?俺は「どうした?」と尋ねる。
「……誇りまみれ」
「ん?ああ、別に構わないよ。休日に洗濯すれば問題ないんだし」
爆煙から守る役割をちゃんと果たしたのだろう。
確かに俺の上着は汚れていた。しかし、それは承知の上だ。だから九条から受け取ろうと、右手を差し出すと上着をぎゅっと抱き締めるように下げてしまった。
「九条?なぜ下げる?」
「あ、洗って返すね!」
「え?いや、悪いしいいよ」
「だ、だめ!ちゃんと洗って返すから!」
遠慮したのだが、九条は断固と譲らない雰囲気を出していた。
そこまで言うならお願いするか。
すると九条はパァっと笑顔を見せて、「じゃ、じゃあ洗い終わったら一之瀬君の家に届けに行くね」と嬉しそうに言ってくれた。
なぜ嬉しいのか分からなかったが、やはり悪いから来た時に夕飯でも出してやるかと考える。
ふと谷口が教壇について、やる気ない感じに「あぁ~、そうだ」と付け加えてくる。
「お前らに言っておかなければいけないことがある」
「言っておかなければ…」
「いけないこと…?」
俺と九条が順番に言葉を並べる。
クラスの皆も谷口の方を向く。
そこで谷口は衝撃的報告をする。
「え~…なんだ、転校生を紹介する」
『……は?』
クラスの皆が同じ反応を示した瞬間だった。
次回へ続く!!
どもども、焔伽蒼です!
今回は担任教師「谷口」がメインの話になってしまいました。
おかしいです・・・、谷口紹介は軽く済ませるつもりでしたが、気づいたら丸1話使っていたと言うミステリー。
流石は谷ちゃんです。今後も谷口は出てきますが、いつか「やらかしそう」で怖いキャラです(笑)
次回は転校生の話です。多分・・・。
そして、出来ることなら明日投稿出来るように頑張ります!




