【第2話『日常の登校風景?』】
俺は洗面所で顔を洗ってから一度、二階の奥にある自室に戻り、即効で制服に着がえカバンを取ってから急ぎ足で階段を降り、靴を履く。
最後に腕時計で時間をチェックして、針が7時50分を指していたので、これはマジで遅刻かなと焦りつつも半ば諦めながら玄関を開ける。
「お兄ちゃん、遅いよー」
外に出ると妹の千晴が言葉で言うほど焦った様子もない感じに注意をしてきた。
白く長いツインテールが太陽光に当てられて、より美しく輝いている。
つい頭を撫でてやりたくなる衝動に駈られるが今は止めておこう。
「悪い、遅れた。早歩きで行くか」
「うん」
千晴に一言謝ってから一緒に学校へ向かおうと、家の敷地から足を踏み出す。
ここまではどこにでもある光景だろう。
だが━━俺は違う。
「こうっ━━━じぃ━━━!!」
敷地から出ると、左方面の道から高い男性の声が俺を呼び止める。
この声━━━やはり来たか!
声がする方に振り返りながら、俺は構えを取る。
勢いよく翔てくる男性が一名━━━
「トォッ!」
━━━その男性は走りながらジャンプして、空中で体制を変えながら俺に向かって飛び蹴りを放ってくる。
果たしてこれが“どこにでもある光景”と言えようか?
答えは否、普通ではない。異常だ。
ま、そんな光景に慣れてしまった俺も異常であることは間違いないけど……。
「よぉ慶太、おはよ━━━」
バキッと鈍い音が鳴る。
俺は飛び蹴りを体を捻らせる事で交わし、そのまま捻った勢いを利用してカウンターの掌底を男性の腹に叩き込んだ音だ。
「ぐはぁっ!」
男性は後方へ吹っ飛ばされ、激しく地面を転がり、電柱に頭を偶然にもぶつけることで止まった。
このやり取りは日課だ。
そして、今転がっていった男性も、この程度では大したケガもしていないだろう。
千晴もこの光景には見慣れているせいか、俺の後ろからひょこっと顔を出して「終わったー?」と投げ掛けてくる。
俺は満面の笑顔で答える。
「ああ、終わったよ。それじゃ改めて学校に向かうか」
「そうだね」
そして、俺らは倒れている男性をガン無視して歩き出す。
「って、ちょっと待て待てぇー! ほったらからしは無いだろう!? ちょっとは心配しようよっ!?」
それを不満に思ったのか、男性が勢いよく立ち上がり抗議を申し付けてくるものだから、やれやれと頭を掻き、振り替えると同時に表情も最高の笑顔に替えて俺は返事をしてやる。
「おはよう、慶太君。今日も良い天気だね」
「それ(挨拶)二回言ったぁー!と言うかなぜに他人行儀!?眩しい!眩しすぎるよ、その笑顔ぉー!
仮にもオレ“梶間慶太”と“一之瀬光司”は親友だよねぇ!?」
そんな風に哀れな慶太を見ていると、少し可哀想になってきたので“いつもの”調子に戻すことにした。
こいつは梶間慶太、俺の数少ない親友でもある。
整った輪郭に優しい瞳を持ち、ちょっと眺めの茶髪が以外と似合うパッと見、イケメンな訳だが性格に難点がある。
ハッキリ言うと子供なんだよな、こいつ。
女子からモテそうな顔をしているのに、内面が子供なせいか色恋沙汰には興味がないし、女と話すより男と遊んでた方が楽しいと言う始末だしで、残念系イケメンと称される程だ。
だけど、俺は慶太の事を認めている部分もある。
さっきの飛び蹴りだ。
俺の実家は八卦無天流と言う道場を開いている為、幼少の頃より道場通いしていた時期がある。
そのおかげか、人の気や攻撃をある程度読む事が出来るようになった。
元々、八卦無天流とは先祖様が大陸より来日した中国人に拳法を教わり、それを土台にして改良に改良を重ねた独自式の拳法な訳で、気の運用から察知までかなりの精度を持っているわけなのだが……慶太の蹴りには基本的に殺気がない。
子供だけにさっきの鋭い蹴りですらも、慶太にとっては遊びみたいなものなのだろう。子供的な意味で。
そんな悪気無しの殺気無しでいて、無駄に鋭いと言う悪条件が重なっているのもあり、俺ですら慶太の蹴りを交わすのは紙一重になってしまうのである。
「なぁなぁ聞いてる?
ま、まさか、親友だと思っていたのは俺だけで、光司は俺なんかどうでもいいと。俺の一方的な片思いだったと言うのか……」
「まてこら。人に聞かれたら勘違いされるような発言をするんじゃない」
慶太が気持ち悪い冗談を言い出したので、即座に否定する。
そして溜め息混じりに撤回をしてやる。
「無視したのは俺が悪かった。 だからそういった冗談は控えてくれ。
ただで際、我が家は近所から悪い噂されてるんだからな」
俺は一之瀬家の事情を話すと、慶太は事情を知っているので「悪い、構ってくれなくて寂しかったんだ……」と謝罪してきた。
いや、そこまで真面目に謝れると少し悪い気がしてくるな。
そんな感じで未だ自宅の前で話をしている俺たちだが、不意に隣の家から一人の女性が出てくる。
俺はその女性を知っている。
しなやかな長い黒髪を靡かせ、少しつり目ではあるものの、それすらも整った輪郭の一部としてしまうほどの美しさを持ち、スラッとしていて、出るところは出ているスタイルを魅せる撫子のような女性━━━名前を九条彩香。
幼稚園の頃からの幼なじみだ。
中学ぐらいまではよく家とか公園で遊んだりしたのだが、高校入ってからはあまり話さなくなっているんだよな……。
それも仕方ないか。高校生にもなって同い年の男女が、家や公園で遊んだりしていたら、周りに勘違いを生んでしまうからな。
多分、九条もそう思って距離を取っているのだろう。
少し寂しさを感じながらも、仕方ないことだと自分を納得させて、軽く挨拶をする。
目と目が合ってるのに、無言と言うのもおかしいからな。
「おはよう、九条」
「お、おはよう、一之瀬君。学校、遅刻するよ?」
“一之瀬君”か……。
昔はこーちゃんって呼んでくれたんだけどな。
ま、俺もさっちゃんなんて呼んでいたことを考えると、今その愛称で呼ぶには恥ずかし過ぎるから気持ちは分かるけど。
あれ? にしても九条がこの時間に出るのは珍しいな。
いつも遅刻なんかしない優等生なのに……。
つい気になってしまい、俺は尋ねてみる事にした。
「珍しいな、九条が出遅れるなんて」
九条は何やら小さい声で「九条……」と呟く。
高校入ってからそんな呟きをたまに聞くけど、何故なんだろう?
すると九条が少し残念そうな表情で返事をしてくる。
「昨日は勉強してたら遅くなっちゃって……。
そういう一之瀬君も遅くまで起きてたね」
「ああ、俺は千晴とゲームしてたら、ちょっとな」
ん?そう言えば何で俺が起きていた事を知っているんだろう。
そんな時、慶太が「家も隣同士で部屋も向かい合ってるって大変だなぁ」と言ったのを聞いて、「あぁ」と納得した。
つまり外を挟んで俺と九条の部屋は正面に向かい合ってる訳で、電気とかで互いの寝たか起きてるかぐらいは分かると言うことだ。
その時、俺の袖を千晴が引っ張り、ちょいちょいと可愛らしい仕草で腕時計を指差している。
そこには間もなく8時00分を宣告する審判が降されようとしていた。
俺は今までの会話を全て投げ捨てて、皆と目を合わす。
「ち、遅刻だ!走るぞ!」
「そ、そうだな!」
「九条さんも急ごー」
「え? あ、うん……」
俺達はそれぞれ本気で走る。
俺や慶太なら分かるけど、その速度に着いて来れる九条と千晴も相変わらずだなと思いながらも、学校へ向かうため戸塚駅まで走った。
次回へ続く!!
本日2話目、割と早く投稿出来ました。よかったよかった。
こういった日もちょくちょくあるかもしれませんので、投稿期間に法則性は生み出せないかもしれません。僕の場合・・・。
それでは、後書きらしい言葉を。
見ての通りミラカタは、現実にある世界をベースに物語が展開されていきます。
主人公である光司の地元は横浜市戸塚区となっています。昔はド田舎だった戸塚も、今は多少は開けて来ている地区です。
ちなみに開業学園は横浜にあります。ただノベル内のみにおいての学校ですので、現実にはありません。紛らわしくてすいません!
とまあ、そんなわけで次話では学校内での話しになります。
ちなみに現在のミラカタの時期は5月となっています。リアルも5月ですが、これは偶然です。
では、次回も皆さんに見て頂けるような物語になるように努力いたしますっ!




