第3話 難航する仕事探し
宿屋の料理係が順調な一方で、エミリアの職探しは難航していた。
というのも、どうやったら仕事に仕事に就くことが出来るのか、さっぱりわからなかったのだ。
父の後を継いだエミリアにとって、魔物解体の仕事は昔から身近にあるものだった。
もちろん職探しなど、今まで全く経験したことがなかった。
しかし職に就かなければ、食べていくことはできない。
困ったエミリアは、昼食が休みの曜日に、三大冒険者ギルドの一つ、フレイムという冒険者ギルドに来ていた。
魔物を狩る冒険者たちがいる冒険者ギルドなら、魔物を解体する需要があるだろうと思ったからだ。
「失礼します」
ぺこりと入り口で礼を軽くして、入る。
……冒険者たちの視線が痛い。
身なりの綺麗なガキが何をしに来たんだ。
そんな言葉が聞こえないが伝わってくる。
ギシギシという床をまっすぐに歩いていく。
エミリアは緊張していない風を装っていたが、同じ側の手と足が一緒に出ていたので、周りからは緊張していることがバレバレだった。
「あの、すみません!」
正面にある受付に行く。
「なんだい、お嬢ちゃん」
櫛でぴっちりと髪を梳かしている妙に気取った金髪の男が、書類から顔を上げた。
「あの! 魔物解体の仕事ってありませんか?」
開口一番、エミリアはとりあえず聞いた。
「……うん?」
金髪の男は、エミリアの言葉を聞いて目を丸くした。
「私、魔物解体の仕事につきたくて。経験もあります」
「お嬢ちゃん、ちょっと待ってくれ」
金髪の男がバカにするように笑った。
「あ‥‥すみません……」
「大丈夫だ。そもそもお嬢ちゃん、名前は?」
「エミリアです」
「そうか、エミリア。俺の名前はロミオ。とりあえず俺の言葉を聞いてくれ」
目の前の男性はロミオというらしかった。
エミリアは頷いた。
「魔物解体の仕事を探していると言ったが、経験は?」
「かれこれ十年以上になります」
ロミオが感心したような顔を一瞬した。けどすぐに元の表情に戻った。
「それを証明できるものは?」
「証明……ですか?」
「ああ、どこかのギルドの解体師が出した紹介状でもいい」
エミリアは俯いてしまった。父はすでに亡くなっている。
証明できる人など思いつかなかった。
その様子を見て、ロミオはため息をつく。
「それじゃあ、証明はできないと。仕事の斡旋だが、紹介状はあるかい?」
「……いえ、それもありません」
ロミオが困った顔をする。
「いいかい、お嬢ちゃん。料理人で例えよう。君は今料理屋の受付だとしよう」
「はい」
「私、絶品料理を作れるんです! 歴は十年です! だけど働いていたって証明はできません。紹介状も持っていません。けどやれるんで働かせてください! そんな相手が来たらどうだ?」
「……困りますね」
「今の君がまさにそれだ」
ロミオが書類の方に顔を戻した。
「……でも、このままじゃ困るんです」
「そう言われても、こっちも困る。邪魔だからさっさと帰ってもらえないか」
「お願いです。どうかもう少しだけ話を聞いてください」
ロミオが顔を上げた。面倒臭そうな顔をしている。
「おい、アーファン」
「ロミオ、どうしたんだ」
「この小娘を追い出してくれ。抵抗するなら少々乱暴にしても構わない」
「あいよー」
ニヤニヤとした表情で、冒険者が後ろから近づいてくる。
「すみませんでした。これで失礼します」
エミリアは頭を下げた。
「ふん、分かればいいんだ。さっさと帰ってくれ」
ロミオは顔をあげてすらいなかった。
その日宿に帰って食べたスープは少し苦かった。




