表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/14

第4話 「婚約破棄イベント、発生条件ゼロにつき」

光が弾ける。


「――うわっ、まぶしっ!?」


着地と同時に、石畳の感触。


見上げれば、青空。

周囲には――見覚えのない校舎。


「……ここが学園か」


制服姿の生徒たちが行き交い、ざわめきが流れる。


完全に“現地”だ。


「はぁ……ホントに来ちゃったよ……」


元勇者、現・雑用係アルス。

本日も元気に強制出張である。


「で、俺は何をすればいいんだっけ……」


ポケットを探ると、一枚の紙。


【任務:婚約破棄イベントの発生補助】


「ざっくりしすぎだろ!!」


思わず叫ぶ。


通りすがりの生徒に見られた。

終わった……


「……落ち着け。まず状況整理だ」


深呼吸。


・対立なし

・悪評なし

・ヒロイン地味

・王子めっちゃいい人


「これ無理ゲーじゃね?」


結論が早い。


「いやいや、元勇者だぞ俺……?」


自分に言い聞かせる。


「まぁ、魔王に負けたけど…」


一拍。


「いやだからってなんで恋愛イベント補助なんだよ!!」


誰にも届かない正論が、空に消えた。


「……はぁ」


頭を掻く。


(戦う相手も、守るべきものも、間違えたら――)


(あっさり終わるんだよな)


一瞬だけ、思考が沈む。


――が。


「……って今はそれどころじゃない!」


両頬をたたき強引に切り替える。


「仕事!仕事だ!」


その時だった。


ざわり、と空気が揺れた。


「……あ」


人の流れが、わずかに割れる。


赤。


鮮やかな、赤。


「ヴィオレッタ=ローゼンベルク……」


思わず名前が漏れる。


そこにいたのは、完璧な“舞台の中心”。


背筋を伸ばし、迷いなく歩く姿。

視線を集めるのが当然の存在。


(……でも)


違和感。


誰も、彼女を恐れていない。


むしろ――


「おはようございます、ヴィオレッタ様!」


「今日も素敵ですわ!」


「なんとお美しい」


自然な笑顔。

自然な会話。


「……めちゃめちゃ好かれてるじゃねえか」


やはり設定が死んでいる。


「 これ、もう詰んでないか?」


呟いた、その瞬間。


「――聞こえましてよ」


「え」


真横。


いつの間にか、真横に立っていた。


「ずいぶんと失礼な評価ですこと」


赤いドレスが、わずかに揺れる。


「あなた、どなたですの?」


距離が近い。

視線が鋭い。


逃げ場はなし。


(やばい、初手で詰んだ)


「いやその、通りすがりの――」


「通りすがりが、私の名前を?」


「いやほら、その……知らない方がおかしいレベルで……!」


急ごしらえの作り笑顔で誤魔化せるわけがない。


「……正直にお答えなさい」


静かな圧。


逃げられない。


(どうする……)


一秒。


二秒。


――諦めよう。


「……仕事です」


「……は?」


「あなたに、“婚約破棄イベント”を起こしてもらう仕事で来ました」


沈黙。


風が吹く。


時間が止まる。


「……は?」


二度目。


「いやほんとすみません俺も意味わかってないんですけど」


「ちょっと待ちなさい」


ヴィオレッタが、こめかみを押さえる。


「整理しますわ」


指を一本立てる。


「あなたは」


二本目。


「私に」


三本目。


「婚約破棄されろと?」


「違います!それを“起こせ”って言われてます!」


「どちらにせよ意味がわかりませんわ」


ごもっとも。


「でもやらないといけないんです」


「なぜ?」


「クレームになるので」(小声)


「知りませんわよ」


これまた正論。


ヴィオレッタは一度、目を閉じ――

ゆっくりと息を吐いた。


「……なるほど」


開かれた瞳は、冷静だった。


「つまり」


一歩、近づく。


「今のままだと“前提が足りない”のですわね?」


「……え?」


「対立も、悪意も、理由もない」


淡々と。


「だから成立しない」


「……否定はできませんね」


口元が、わずかに歪む。


「つまり――」


一歩、踏み込む。


「足りないのであれば、作ればよろしい」


「……はい?」


「舞台は整っているのですもの」


赤が揺れる。


「最も欠けているのは、ただ一つ」


視線が、アルスを射抜く。


「“きっかけ”ですわ」


その瞬間。


アルスは理解した。


(あ、これ……止まらないタイプだ)


「……協力、していただけますの?」


微笑み。


完璧な、悪役令嬢の顔で。


アルスは、ゆっくりと顔を覆った。


「……お断りしても?」


「観念なさい。あなた、もう共犯ですわよ?」


――逃げ道は、最初からなかった。

今回もお読みいただきありがとうございます!


ついにアルス、現地投入。

そして判明する「婚約破棄イベント未実装」という絶望的な状況。


なのにヴィオレッタはやる気満々。

この時点で嫌な予感しかしません。


次回、対立を“作る側”に回った二人が何をやらかすのか。

多分まともにはいきません。


あと、現在新作も仕込み中です。

ちょっと熱めの成り上がり系にしようかな?と思ってみたり。


「どんなざまぁが見たいか」など感想もぜひ教えてもらえると嬉しいです!


面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ