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第19話 「発酵樽庫」

森の中。


 夕暮れの光が木々の隙間から差し込んでいた。


「シン!こっちこっち!」


 リナが元気よく森の中を進んでいく。


 その後ろを、

 シンは大量の樽と共に歩いていた。


 いや。


 正確には、

 引きずっていた。


「重っ……!」


 縄でまとめた樽が、

 ガラガラと音を立てながら地面を転がる。


「にしても樽多いな……」


「捨てればいいのに」


「仕込み道具捨てる料理人がいるか」


「しこみ?」


「命みたいなもんだ」


 リナはよく分かっていない顔をした。


 だがシンにとって、

 この樽はただの荷物ではない。


 食材。

 調味料。

 保存庫。


 店そのものだった。


 その時。


 ゴロッ。


「あ」


「あ!」


 樽が石へ引っかかる。


 縄が外れ、

 一つの樽が坂を転がっていった。


「あーーっ!?」


 シンは慌てて追いかける。


 だが。


 その瞬間。


==========


《発酵Lv5》


熟成経験値を取得しました


派生技能を獲得しました


発酵樽庫(バレル・ストレージ)


==========


「……はぁ!?」


 シンの目の前で、

 転がっていた樽がふっと消えた。


 静寂。


「……え?」


 リナも固まる。


「樽、

 消えたよ?」


 次の瞬間。


 頭の中へ情報が流れ込んできた。


 保存。


 熟成。


 温度管理。


 発酵状態維持。


 そして。


 収納。


「……これ、アイテムボックス?」


 だが、

 普通の収納とは違う。


 感覚で分かる。


 発酵関連の物しか入らない。


 その代わり――


 最高の状態で保存され、発酵も継続される。


「うわ、

 めちゃくちゃ職人仕様だ……」


「???」


 リナは完全についていけてなかった。


 シンは恐る恐る手を前へ出す。


「えーっと……念じればいいのか?」


 ぽんっ。


 さっきの樽が現れた。


「おぉ!」


「すごっ!?」


 再び収納。


 消える。


「……便利だなこれ」


 シンは少し感動していた。


 樽を運ばなくていい。


 これは革命だった。


「よし」


 シンは次々と樽へ触れていく。


 すると。


 ぽん。

 ぽん。

 ぽん。


 大量の樽があっという間に消えていった。


 数分後。


 森には静寂だけが残る。


「……軽い」


 シンは感動していた。


「すごいねそれ!」


「あぁ……

 ようやく文明レベルが上がった気分だ」


「???」


 リナは戸惑いながら笑う。


 そして。


「じゃあ改めて行こ!

 私の村!」


 シンは空を見上げた。


 異世界。


 発酵。


 謎の収納スキル。


 正直、

 まだ何も分からない。


 だが。


「……まぁ、

 なんとかなるか」


 そう呟きながら、

 シンはリナの後を追いかけた。

第19話を読んでいただきありがとうございました。


ついにシン、

 “発酵職人専用アイテムボックス”を手に入れました。


 ただ収納するだけではなく、

 熟成・温度管理・発酵維持までしてくれる完全職人仕様です。


樽を大量に引きずる主人公はなかなか

 絵面がシュールでした。(笑)


 面白かったらぜひ、

 ブックマーク・評価・感想などよろしくお願いします!


では、また次回!

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