第14話 「辺境再配置と地味スキル」
「うおおおおおおおおおお!?」
男は絶叫しながら落下していた。
「説明雑すぎるだろぉぉぉぉぉ!!」
森。
岩。
木。
全部が高速で迫ってくる。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ――ッ!?」
ドガシャァァァ!!
枝をぶち抜き、
葉を巻き込み、
最後は地面に転がった。
「がっ……は……」
沈黙。
鳥が飛び立つ。
男はしばらく空を見上げ――
「……生きてる」
小さく呟いた。
そして。
「異世界だぁぁぁぁ!!」
勢いよく立ち上がる。
「来た!!
ついに来た!!
俺の逆転人生!!」
森へ向かって叫ぶ。
「見てろよ元パーティ!!
今度こそ俺は最強になって――」
そこで。
男はふと固まった。
「……あれ?」
空気。
匂い。
遠くに見える山。
どこか見覚えがある。
「……ん?」
嫌な予感がした。
意識を集中する。
半透明の表示が浮かぶ。
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《再配置先》
辺境地帯グランウッド
《氏名》
レオ・グランツ
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「……再配置?」
数秒後。
「異世界じゃねぇのかよォォォォ!?」
森に絶叫が響いた。
「元の世界じゃねぇか!!」
あの女神、
一言も説明してなかった。
「マジかよぉ……」
膝から崩れ落ちる。
やり直し。
別世界。
最強人生。
全部夢だった。
「いや待て」
男は頭を振る。
「まだだ」
スキルがある。
転生特典がある。
今度こそ強くなればいい。
そう思いながら、
意識を向ける。
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《野営Lv3》
《硬い胃》
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「終わってる!!」
森に二度目の絶叫が響いた。
「なんだよ硬い胃って!!
もっとこう!!
剣聖とか!!
超火力魔法とかあるだろ普通!!」
返事はない。
「……いや待て」
レオは額を押さえる。
「落ち着け俺」
一応スキルだ。
もしかしたら、
実は凄い可能性もある。
「野営Lv3……
うん、響きは悪くない」
多分。
「硬い胃は知らん」
知らん。
ぐぅぅぅ……
その時、
腹が鳴った。
「……そういや腹減ったな」
周囲を見る。
森。
本格的に森。
「……町どこ?」
嫌な沈黙。
「いやいやいや!!
元の世界ならせめて街スタートにしろよ!!」
当然返事はない。
◇ ◇ ◇
一時間後。
「……無理」
レオは倒れていた。
迷った。
完全に迷った。
「なんで辺境スタートなんだよ……」
すると。
視界の端に、
赤いキノコが見えた。
「……食えるかな」
不安しかない。
だが腹は減っている。
「いやでも毒ありそうだし……」
その時だった。
頭の中に、
妙な感覚が流れ込んでくる。
『判別可能』
「……は?」
気づく。
分かるのだ。
なんとなく。
このキノコが、
“ちょっと毒”だと。
「え、何これ」
試しに少しかじる。
「苦っ」
でも平気だった。
「……あれ?」
普通に食える。
むしろ。
「これが
《硬い胃》か?」
沈黙。
「地味ぃ!!」
でも役立ってる。
地味に。
◇ ◇ ◇
夕方。
レオは焚き火を見つめていた。
「……なんで出来るんだ?」
木を組み、
火を起こし、
簡単な寝床まで作っている。
しかも自然に。
考える前に身体が動いた。
「《野営Lv3》……」
地味だ。
地味だが。
「いや普通に便利だなこれ……」
火を見ながら呟く。
すると。
脳裏に、
昔の光景が浮かんだ。
『レオー!
飯まだー?』
『おい荷物まとめとけよ』
『野営準備頼むわ』
かつての冒険者パーティ。
いつも雑用ばかりだった。
戦闘は前衛任せ。
自分は荷物持ち。
火起こし。
食料管理。
道具整理。
『お前のスキル、
地味すぎるんだよ』
『戦闘で役立たねぇし』
『悪いけど、
パーティ抜けてくれ』
最後に言われた言葉。
レオは焚き火を見つめながら、
小さく笑った。
「……結局また雑用かよ」
火が揺れる。
だが。
その時。
ガサッ――
森が鳴った。
レオの目が細まる。
「……誰だ?」
返事はない。
だが。
気配がある。
複数。
(近い)
その瞬間。
身体が勝手に動いた。
火を消す。
足跡を隠す。
音を殺して木陰へ滑り込む。
「……え?」
自分で驚く。
だが次の瞬間。
森の奥から、
巨大な魔狼が現れた。
「グルルル……」
牙。
爪。
明らかにヤバい。
「……うそだろ」
冷や汗が流れる。
だが魔狼は、
レオに気づかない。
そのまま、
焚き火跡を通り過ぎていく。
沈黙。
数分後。
ようやくレオは息を吐いた。
「……助かった」
そして気づく。
今の。
全部。
《野営Lv3》のおかげだった。
「……あれ?」
一拍。
「これ、
普通に当たりスキルじゃね?」
第14話を読んでいただきありがとうございます!
今回は追放された冒険者・レオの転生(?)回でした。
異世界で無双するはずが、
まさかの“元の世界へ再配置”。
しかも渡されたスキルは、
……地味。
とにかく地味。
ですが、
本人だけが気づいていない“役割”が少しずつ見え始めています。
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それではまた次回!




