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俺の幼馴染♂の距離感がバグりすぎているーソウセキとヤスナリー【3/31完結まで毎日更新・全14話】  作者: 新堂凪×TAU


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其之壱 12月26日 コタツと蜜柑と

 この物語は、AIとの対話からインスピレーションを得て構築した物語です。

 文学的な余白と、システムの隙間に生まれたバグをお楽しみください。

 悪い夢から醒めてコタツに足を滑らせると、天国だった。

 本物の夢の続きが、見られる気がした。

 テーブルの上には冬の定番の蜜柑が、竹籠の中で身を寄せ合っている。

 オレも早く彼女がほしい。そう思った時だった。


「ヤス、遅いよ。いつまで寝てるの!

早くゲームでもして遊ぼうよ!」


「ソウ。なんでうちのコタツにいる!?

てか、どうやって入った!?」


 高校へ入学して、初めての冬休み。

 家の手伝いがあるとデマカセを言って、部活を公式にサボることに成功した。

 だからオレはこれでもかと、のんびりダラダラと過ごす予定だった。

 なのに幼馴染のソウが、コタツの向かい側から顔を出した。

 しかもちゃっかりと、オレが昨日読み散らかした週刊誌を手にして。


「さっき雪がやんで、おばさんが玄関まわり雪かきしてて、開いてたから。

そこから、ヒョイっと」


「お前、それは不法侵入だろうが!」


ポコッ。


ポコッ。


 手近にあった我が家の聖剣で小突くと、小気味良い音がした。

 おお、悪くねえな。いい音だぜ。


「なんだよ。ちゃんと、お邪魔しますって言ったぞ」


「そういう問題じゃねえ!」


 ポコッ。


 ポコッ。


 ソウは小突かれたデコを押さえながら、拗ねている。

 ガキかよ、まったく。

 そもそも礼儀正しいやつが、他人の家のコタツに入って、週刊誌読んだりしねえだろ。


「あと勝手に、蜜柑を食うな! オレの分が減るだろうが!」


 ポコッ。


 ポコッ。


 冬のお供はコタツと蜜柑だと、相場が決まっている。

 そう、夏目漱石と川端康成くらいには。

 何でかって?

 二人は日本文学の二大巨頭ってやつだぜ。

 漱石はその道を切り拓いた、国民的文豪。

 康成は、ノーベル文学賞を日本人で初めて獲ったんだぜ。

 まあオレは、そんな大層なもんじゃねえけどよ。


「だって、冷蔵庫見たけど飲み物と笹かましか入ってないからさ。

そこに蜜柑があったら食べるよね? ねえ、ばあちゃん」


「せめて声かけてから食え!」


 ポコッ。


 ポコッ。


 オレたちは父親同士が幼馴染の、腐れ縁ってやつだ。

 ばあちゃんはもうあっちで安生しているが、ガキの頃は忙しい親父たちに代わって、面倒を見てくれていた。

 ソウはそのせいか、オレ以上にばあちゃんになついていた。

 葬式の時もオレより泣きわめいて、親族と間違われていたっけな。


「いやいや。この蜜柑は、ばあちゃんにお供えしてあったやつだから。

だからセーフだよ」


「何がセーフだ! それはオレが後で、食べようと思ってたやつだ!」


 ポコッ。


 ポコッ。


「ヤスは、ばあちゃんと蜜柑の取り合いするの?

お寺の息子が、そんなことしていいの?」


「お前に言われたくねえ!!」


 ポコッ。


 ポコッ。


 本日何度目かの我が家の聖剣、正しくは木魚バチが炸裂した。

 ウチは青葉山っていう山ん中にひっそりとある寺だ。

 どの辺かって言うと、東北地方のある県だな。

 由緒ある寺かどうかは知らねえけど、まあ居心地はそんなに悪くねえと思ってるぜ。

 なんで県名をふせるのかって?

 なんか恥ずかしいだろ、バカ。


「ちぇ。せっかくヤスのためにコタツ、あっためておいてやったのに」


 ちなみに本名は安成(ヤスナリ)だ。

 こんな名前なのは、親父が小説家になりたかった名残でファンなんだとさ。

 だからって息子に文豪と同じ名前をつけなくてもいいだろと思うんだが。


「スイッチ入れただけで、えらそうにしてんな!

それにお前、足冷てぇよ。ちゃんと中に入ってたのか?」


 ポコッ。


 ポコッ。


 聖剣で叩いた拍子に、コタツの中で右足が冷たいものに当たって身震いした。

 このクソ寒いのに、ソウのやつ靴下履いてねえのか?

 裸足なんて、稽古の時だけで十分だろうが。

 こういうヤツが一人でもいると、コタツは天国ではない。

 戦場だ。熱の奪い合いになる。


「寝床があったかいって、いいでしょ? 極楽だよ」


「へーへー、その通りだよ。

まあせっかく来たんだ。あったまってろ。

オレは雪かきの様子、見てくる」


 ついでに遅い朝メシ兼昼メシを、台所からくすねてくる算段だった。

 我が家は夕食以外は割と放任主義だ。

 だからソウがいると、オレは調子が狂う。

 当たり前のように、そこにいるのが。


「俺も手伝おうか?」


 週刊誌に飽きたのか、ソウは開いていたページをパタンと閉じた。

 顔を上げた拍子に小突いたデコを隠すように、柔らかい猫の毛みたいな前髪がこぼれた。


 ふと窓の外を覗くと、街が布団みたいな雪を頭から被っていた。


「ソウのへっぴり腰を借りるほど、困っちゃいねえよ。

茶でも飲んでろ。それとも、和菓子でも食うか?」


 隣の部屋に見慣れた和菓子の箱が置いてあったことを思い出して、取りに行った。

 開けてみると、八個入りのまんじゅうだった。


「あ、ユウエン堂のじゃん。もらうもらう」


「おいおい。オレの分も残しておけよ」


 寺というのは、檀家さんと距離が近い。

 必然的にウチは、頂きものには事欠かない。

 しかし、いくつになっても変わんねえな。ソウのやつは。


 部屋を後にして、適当に冷蔵庫を漁る。

 ガスコンロの火を点けて、残り物の笹かまを軽く炙った。

 炙るとほんのり甘くて、後から塩気が来る。

 これがうまいんだよな。

 つい食べ過ぎちまったりすることもあるんだぜ。

 よかったら、アンタも食うか?

 ってワリィ。もう全部食っちまったぜ。

 また今度買っておいたら、アンタの分も残しておくからよ。

 その時一緒に食おうぜ。

 何でって、二人で食べた方がうまいだろ。


 小腹を満たしたオレは玄関で防寒着を一式装備して、外にいたオカンに声をかけた。

 一人でいいと言われたが、二人でやった方が早いから構わず手を動かした。

 おらほは県全体で見るとそうでもねえが、青葉山には毎年そこそこ雪が積もる。

 生きていくだけで手間がかかる。

 だが、その煩わしさが体に熱を与えてくれることもある。

 オレは、そんなふうに思っている。


 雪かきを終えて部屋のふすまを開けると、ソウはコタツに入ったまま寝ていた。

 勝手に帰ることはないと思っていたが、まだそこにいると分かって安心した。


 コタツの中に足を滑らせると、さっきよりも温かい気がした。

 あれ、なんだよ。

 スイッチ、切れてるじゃねえか。

 ソウのやつ、なんで消したんだ。


 コタツのテーブルの上には剥かれた蜜柑の皮が丁寧に積まれてあって、オレは少しせつなくなった。

 ばあちゃんもよくこうやって、高さ比べしようって言ったっけな。


 蜜柑を食べるのはばあちゃんに悪い気がして、まんじゅうを手に取った。

 数はひとつも、減っていなかった。


 ソウは食べるのをやめたのか。

 変な奴だと思いながら食べたまんじゅうは、少し塩気が強かった。


 これはハズレだな。


 ソウはもしかして分かっていて、食べなかったのだろうか。

 だとしたら、相当カンがいい。

 起きたら聞いてみようか。


 オレはそんなことを考えながら、また窓の外を見た。

 せっかく雪かきをしたというのに、また降ってきたようだった。


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