異色な飲み会(2)
「ここに書いてあるのは1から3までの数字だから、同じ数字の人同士でペアを組んで!」
高山さんのくじの説明が終わると、みんなは自分のくじの番号を確認し始めた。どうやらくじでゲームをするときのペアを決めるらしい。
「あ、俺1だ。」
「私は2」
「絢ちゃん俺も2だよ!」
「俺はじゃあ笹野さんとだ。」
「え…あの…私3なんですけど…」
「うわ出たよ宮瀬さんがまさかのシード!!」
高山さんは思わず腹を抱えて笑った。嘘…何でよりにもよってあたし…?
「そしたら今からルールを説明するね。
まず、その数字の人同士でペアを組んで各ステージをクリアしていって、最後のステージを宮瀬さんと誰かがペアを組んで挑戦する。
で、その人は一番上手くプレーできた人!実際にやってみたらうまい人はすぐ分るよ。」
「待って、うまい人なんて兄ちゃんにきまってるじゃん!よくやるんでしょ?」
「いや~それがそうとも限らないんだよな。まあ、とにかくやろうぜ」
そう言って高山さんは堂谷君にリモコンを渡した。
「まずは笹野君とゆーたチーム!」
そうしてなんだかんだでゲームが始まった。グチグチ言っていた割に、堂谷君はすぐコツをつかんでそれなりにプレーしていた。
笹野さんはというと、壁に背を持たれながら弄ぶようにリモコンを操作している。けど…
「笹野さん、凄いっすね。全然襲われないし、ゾンビ瞬殺じゃないですか。」
「そお?あ、この武器使えばいいよ。このボタン押すと表示される画面から選択して…」
笹野さんもバイオハザードをよくするのか、初心者の私でも分かるくらい明らかに上手かった。
迷いなくスイスイ進んでいくので、堂谷君がその後を続いて行く形になっていた。
「いやーこのコンビいいね!ゆーたもセンスいいし、そんなにしない割には普通に出来てんじゃん!」
「さすが高山君の弟だね。」
「ど。どうも…」
堂谷君は照れながらぺこりと頭を下げた。バシッと絢は私の肩を叩きながらニヤついている。
分かった分かった、堂谷君が可愛くてしょうがなかったんでしょ?私はただうんうんと頷いた。
にしても、このゲーム怖すぎる…ゾンビが次から次へと襲ってくるし、ちゃんとストーリー性もあって、思わず感情移入しながらゲームを見てしまった。
「さて、ここまでが第一ステージだね。2人とも優秀だからもう終わっちゃったね!さて次は俺と絢ちゃんだ!」
「ほんとに女子もやるんですか?」
「当たり前だろ!!こういうゲームは女子にやらせるから楽しいんだよ!!」
兄ちゃんらしいなっと言って堂谷君は笑った。今日は高山さんも堂谷君も本当に楽しそうだ。
普段一緒に居られない分なおさらなのかな。いいな、こういう兄弟…ちょっと、羨ましいな…。
そう思うと、私の胸は、きゅうっと痛んだ。
「まずは絢ちゃんに操作教えないと…てあれ?絢ちゃんふつーにできてない?」
「割とゲームは得意な方なんです。まあ、グロいのは苦手なんですけどね。」
そっかそっかっと言って高山さんはコントローラー片手にビールを飲んだ。やっぱりよく飲むんだな高山さん。
てか飲みながらでも余裕でプレーできるんだ。私は感心しながら高山さんを見ていた。
この二人もなかなか上手くて、特にコンビネーションが良かった。高山さんも絢もゾンビに襲われてもすぐに助け合っているため、お互いにほとんどダメージを受けていなかった。
「さすがゆーたが選んだだけのことあるね!絢ちゃんいいこだわ!」
「ちょっっ何言ってんだ兄ちゃん!」
「さーて、いよいよ最終ステージだけど、宮瀬さんと誰がやろうか?ぶっちゃけ全員上手いんだけど…」
「んー、あたしは高山さんに助けられてた感じあるし、優梨愛とペアだったらほんとにすぐ終わっちゃいそうです。」
「俺も笹野さんに助けられてたし、やっぱ兄ちゃんか笹野さんじゃね?」
「そうか…てことは笹野君だな!俺2回連続とか嫌だもん。てことでよろしく!」
高山さんに肩をポンッと叩かれて、笹野さんは無言でコントローラーを持った。どうしよう絶対迷惑かける…
「ごめんなさいめっちゃ迷惑かけると思いますがよろしくお願いします。」
「宮瀬さんやる前から謝ってるし」
堂谷君ははははと笑ってクイっと梅酒を飲んだ。笹野さんはやっぱりお酒を全然飲まないな…の割にもう赤くなってるし。
「じゃあ、始めよっか。」
「はい!」
私は緊張しながらもコントローラーを持った。
そしてその10分後、部屋の中にはみんなの爆笑する声がこだます事態になっていた。
「宮瀬さんくるくる回ってるよ!ちゃんと前進んで!!」
「ちょっと!優梨愛どこに銃打ってんの!?なんでいつも天井に当たっちゃうわけ?」
「なんですぐ迷子になるの?逆方向に進んでるじゃん!おこちゃまですか君は!!」
アッハハハハハハ…躊躇なく飛ばされるみんなからのツッコミが、私の背中にグサグサと刺さった。
「いやー、宮瀬さん!予想以上だね!」
「ご、ごめんなさいいいい」
私はひたすら謝りながら必死にゲームに挑んでいた。
もうなにこれ!?どこのボタン押せばいいのかも、タイミングすら全然分かんない。
そして何よりひたすら笹野さんに助けられている。全く攻撃できずにすぐゾンビに襲われるし、真っ直ぐ進めないし、
挙句の果てに笹野さんを見失って迷子になって迎えに来てもらうし、ここまで自分が足手まといになるとは思てなかった…
「笹野さん、ここにある箱って開けたほうがいいですか?」
「それは回復アイテムある箱だからいいよ」
「笹野さん、梯子登れないんですけどどうやったらいいですか?」
「こことここのボタンを押して…」
「笹野さんどこに行っっちゃったんですか!!?」
「こっちだよ」
「あーいたーーー!!」
「いや面白すぎるだろ!!何回質問するんだお前は!!てかせめて迷子にはなるなよ!!」
高山さんが私に突っ込むと、ははははっと笹野さんは笑った。
「すみません笹野さん、ご迷惑かけてしまって…」
「いや、謝らなくてもいいよ」
「ありごとうございます…」
そうしてやっと次のエリアへと進めた。私はふーっと息を吐いた。やっとここまで来たねっと言って、笹野さんは微笑んだ。
ここのエリアには、いわゆるラスボスがいるらしい。さっきよりだいぶ慣れたし、頑張らないと…緊張して、思わずコントローラーを持つ私の手に力が入った。
でも、それと同時に私はこの時間を嬉しく感じていた。
だってこの時間は、私と笹野さんの2人だけが共有できる時間だったから。
このゲームの世界で流れている時間は、私たちだけが共有できるもの。他の人たちは、外からその世界を眺めて楽しんでいるだけ。この世界の中には私たち以外は入れない。この時間は、私たちだけの時間だ。
今日ではっきりと気づいてしまった。私は、笹野さんと2人でいたいんだ。その中で、笹野さんのことをもっと知っていきたい。仲良くなりたい。
集団のなかで2人でいられるのも楽しいけれど、それだと少し寂しい。なんだかしっくりこないような、もどかしい感覚がする。
やっぱり、笹野さんのことが好きだからかな…
「あ!ごめん!!」
「え?」
はっとして我に返ると、私はいつの間にかゲームオーバーになっていた。
「間違えて爆弾爆発させて、宮瀬さんのことも巻き込んじゃった。」
「え!?うそ!」
私がそう言いながら唖然としていると、笹野さんはごめんごめん、といって笑った。
その笑顔を見て、私も笑顔になった。
その後、会は11時半にはお開きになった。絢が明日早いということもあるけど、笹野さんと高山さんがガチのバトル戦(高山さんの思いつき)をすることになったのが大きな理由だ。
しかし、予想以上に盛り上がり、楽しい会だったということで、また開こうという話になって解散した。あとで送られてきた写真を見て余韻に浸りながら、ふと我に返る。
鏡で改めて分かったことや、気づいたこと、たくさんあったな…
―あきー、呑み会行ってきたよ!―
有紀にLINEを送ると、すぐに既読がついて返信が返ってきた
―おー!どうだった?―
私もすぐに返信する
―あのね、あたしね、やっぱり笹野さんと2人でいる時間を大切にしたいって改めて思った!
だから、もっと笹野さんと仲良くなることも、笹野さんのことを知っていくことも、気持ちを表現することも、自分で頑張ってみたいなって思う!―
―今日はそれが分かっただけでよかったの!相談乗ってくれてありがとね!―
だいぶ長くなってしまった。けど、あきはまたすぐに返信をくれた。
―おう!なんか宣言されたぞwwじゃあ、これから色々頑張らないとだな!―
有紀からの返信に、思わずひとりで困り笑いをした。でも、確かにそうなんだよね…
―そうだね!これから頑張ってみるよ!―
LINE画面を閉じ、私は深呼吸した。私にとって笹野さんは、友達のように大切な人でも、バイト先の先輩としてだけ大切な人というわけでもない。だから、これからもっと頑張らないとね




