女子高生
僕は友人の呼び出しを受けて、ファストフード店に来ていた。なんでも恋人との仲が危急存亡の秋であるらしく、僕は彼の話を真摯に聞きながら、普段はクールでも女のことになったらこうも狼狽するものかと安全地帯から別世界を眺望していた。以前彼に少しだけ憧れていた反動で暗い笑みが口元に見え隠れしていたかもしれない。
だが、正直なところ話の内容も僕の考えていたこともほとんど覚えておらず、曖昧である。というのも、彼と話をしていたら隣りの席に女子高生と思しき二人組みが座ったのだ。その時点で僕は真面目に話を続けるのが嫌になった。最初こそ僕らの話に理解が追いついていないから何事もなかったが、すぐに恋愛の話だと認めてからはっきりと見る目が変わってしまったようで、ひどく軽蔑するような表情を向けられた。
当然、自分の世界に浸りきって周りの見えていない彼が女子高生なんかに関心を抱くはずがなく、僕は話を続けざるを得なかった。
まさに惨めと言うにふさわしかった。なぜ軽蔑の目に気づけないのか。なぜそれに気づかないふりをしなければならないのか。なぜ恋愛経験のほとんどない僕が彼に有効なアドバイスができると思えるのか。
「俺は、どうしたらいいですかね」
なぜこんなときに限って急に敬語になるのか。こんな時でなければアドバイスなんて求めたりしないだろうし、滅多なことに彼も当惑しているのだろうがそのこと自体に気づいていないだろう。大体どうしたらいいのかなんて決まっている。女子高生たちから軽蔑されていることに気づけ。さっきからやり辛くて仕様がない。
僕は早々に話を切り上げにかかった。
「あきらめなさい」
つられて敬語になる。きっと僕の人生において最初で最後の最善なアドバイスだっただろう。




