年賀状
こんな時分だが年賀状の話でも聞いてほしい。自分には小学校より親しくしてきた友人がおり、毎年年賀状を送っていたのだが彼から年賀状が返ってくることはなった。
そんな彼だが高校に入った頃から年賀状が返ってくるようになった。自分はそのことに大層喜び、出不精で学校に来なくなった彼が高校ではなかなかうまくやっていることを知ってこれまた喜んだ。
しかし、引っかかることがあった。年賀状に書かれた文字。あれは本当に彼が書いたのだろうか。彼から年賀状が初めて返ってきたときから渦巻いている疑念だった。
自分はそのことをなるたけ気にしないように努め、何年か過ごした。その間彼とは年賀状だけのやり取りで、会いはしなかった。
ある日、何用で外出していたのか忘れてしまったが、彼の母親を見かけた。普段だったら適当な挨拶もそこそこにさっさと立ち去るところだが、そのときの自分はそうしなかった。
「年賀状ですけど」
挨拶が済んだ一瞬の間に決定的な言葉を差し込む。彼の母親はまだ何も言わない。自分も何も言わない。埒が明かないと思って立ち去ろうとしたときだ。
「ごめんなさいね。貴方が気の毒で」
「そうですか」
「あの子、絶対に書かないから」
それは彼から年賀状が来る直前まで自分が思っていたことだった。自分は軽く礼をしてその場を立ち去った。
やはり彼は自分で年賀状を書いていなかった。
自分には親しい友人が少ないので、今時分から今年の年賀状はどうしようかと考えたりしている。
音もなく彼と関係が絶たれることに自分は落ち着いた寂しさを覚えた。




