ちーちゃんのフルーツバスケット
小学校の頃、同じクラスにちーちゃんという女の子がいた。ちーちゃんはきれいなおかっぱで、特徴的な声をしていて、いつもスカートをはいていた。
ちーちゃんはクラスの中でただ一人女子としての存在価値がないと男子は結論づけていた。何故ならちーちゃんは無防備ですぐにパンツが見えてしまい、その頻度の高さにさすがの男子も呆れてしまっていたからだった。ちーちゃん以外の女子のパンツは価値が高く、見れたらラッキーという共通認識で、ズボンばかり履いている女子がいたら、たまにはスカートを履いてくるようにさりげなく勧めたりするのだった。
ちーちゃんは価値なき女子だと思われていることに気付いていたのだろうか。他の女子もちーちゃんに呆れ、侮蔑の対象としていたように思える。いじめにこそ発展しなかったが、ちーちゃんは終始軽く扱われていた。それでもちーちゃんは笑いを絶やさない女の子だった。僕はちーちゃんを見かけると色々と思い出して考え込み、複雑な気分になった。でも、ちーちゃんと話すことはなかった。
ちーちゃんが転校することになったのだ。もうちーちゃんのちゃんとした名前を覚えていないのだが、転校間近にちーちゃんの名前を三つにわけてフルーツバスケットをすることになった。それは担任の先生が考えたものだった。僕はそれがすごく嫌だった。残酷な仕打ちにしか思えなかった。普通に、今までどおりのフルーツバスケットにしておけばいいのに。そう思った。でも、ちーちゃんが楽しそうだったからそれでいいのかもしれないとも思った。少なくとも僕は自分の名前でフルーツバスケットなんてしたくないと思った。
ちーちゃんが鬼になってしまった。クラスのみんながちーちゃんを囲う。
「ああ、君が鬼になったのはいいね」と満足げな担任の先生。僕は終始軽く扱われるちーちゃんに同情していた。




