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十一月の春

 どうして十一月が春なのだろう。校庭に今流れている音楽を聞く者がいるはずもなく、いるのはボール遊びやおしゃべりに夢中になっている者ばかりだった。

 ポピュラークラシック。ひび割れたケースの中に入っていた紙の上で肩身の狭そうにでかでかと表示されている題名がしわくちゃになっていた。

 僕は音楽なんて嫌いだし興味ないのだが、十一月に春なんていう題名の曲を流すのはやはりおかしい。どうかしているとしか思えない。

 しかし、十一月に春という曲を流すのは昔からの決まりであるらしい。今僕が暇をもてあましている放送室の中に何月にポピュラークラシックのどの曲をかければいいかがきちんと記されていた。

 音楽嫌いな僕が音楽に興味のない者たちのために音楽をかける。僕が音楽を嫌いなのもみんなが音楽に興味がないのも、音楽の授業がつまらないからだと思う。新任の先生になってからみんなは文句ばかり言っていた。みんなが言うところによると、前任の先生はいい先生だったらしい。でも、僕にはたいして変わらないように思えた。音楽の授業は音楽の授業で、つまらないものはつまらないのだった。

 でも、音楽の授業を受けるのと十一月の春を感じるのは違うような気がした。

 先生たちは、十一月の中にある春を感じとることができるのだろうか。なんだか音楽の授業と十一月の春を感じることは同じだとか言われてしまいそうでそんなことは絶対に先生に聞くまいと思った。

 もし、先生にその質問をして同じだと言われたら。僕は誰よりも一番春を聞いてきたから、きっと僕が一番最初に十一月の春を感じとることができるに違いない。

 新任の先生は息を呑むほどのきれいな女の人だった。

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