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七十五点

 僕は自分で自分を飾ることのできない人間だった。できないどころか、そういった考え方すら自分の中になかった。先生に自分の悪かったところを反省し、それから次に目指すところを点数として書けと言われたとき、僕は迷わず七十五点を目指すと書いた。反省点に関してはもう覚えていない。なにぶん、小学二年生の頃の話なのだ。

 しかし、このことは後になって、大事へと発展してしまった。なんと、クラスメイトたちはみんな百点を目指すと書いたらしい。当時の僕には一体どういう考え方をすれば百点を目指すなんて書くことが出来るのか全く分からなかった。

 七十五点というのは、おそらく当時の僕なりの謙虚さのようなものだったのだろうが、いかんせん子どもらしくないことと意識の低さが先生の怒りを買ってしまったらしい。その事実がクラスに知れ渡りクラスメイトたちは、一体誰がそんなことを、と僕が書いたことを責めるように騒ぎ始めた。挙句の果てには先生が名乗り出るように言うので、僕はもう絶対にそんなことはしないとその場で誓い、クラスメイトたちには、そうだよね、と合わせた。なんだってそんな晒し上げにあわねばならないのか、僕は先生が諦めるまで待ち続けた。

 やがて、七十五点と書いた紙が配布係によって返却された。

「ああ、君だったんだ。七十五点って書いたのは」

 僕は配布係に見られるのが嫌で、卑怯だと思ったが、その卑怯さを利用しようと思った。

「本当にみんな百点って書いてたの」

「そうだよ。こんなの、百点と書いておけばいいのさ」

 配布係はあっけらかんとしていた。僕にとっては大事だったが、彼にとって小事だったらしい。七十五点と書いたのは、謙虚さではなく、ただ卑怯なだけだったのだろう。

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