第八話 番
タイトルの読み方は何かな?
一応これまでの話で一応これに近い読みは出ていますよ。(全く同じではないけど……)
目を覚ますと、森の中。
ああ、異世界だ。現実だったら木目調の天井の自室から絶対出ないから……。
『目を覚ましたわね』
ヴァインタが目の前にいた。ええっと、ゴーレムが崩れ落ちるのを見届けて、私自身も倒れたんだっけ? それから……。
『ええ、シラホはゴーレムに勝って、倒れてしまったから連れてきたわ』
どおりで私は水場にいるのか。
『まあ、バトルアックスの基本的な使い方はわかったみたいだし、早速、いのしし狩りに行くわよ』
いや、猛獣狩りにはまだ早い。早いって。
『ほら水を飲んで。体を少しクールダウンしたらすぐに狩るわよ』
ヴァインタがあるきはじめたので、私は急いで水を口に含んで、追いかけて行った。
ヴァインタ、私の扱い慣れていってないか? 少し前までもうちょっと待ってくれてたような……。
────
『いのししにはいくつか大きな痕跡があるけど、一番よく見かけるのはこれね』
周囲一帯の土の上に被さっていた落ち葉などが大きく捲れ、表面に土の奥深くが露出していた。
『こうやって、いのししは土を深く掘って土中のミミズや根っこなどを食べるわね』
へぇ、なんかもっと肉食肉食しているのかと思った。だってデカいし。熊だって、鮭とか食べるイメージあるし……。
『いのししは基本的に雑食で、どちらかというと草食が多いわね。でも、いのししだって死骸とかがあれば普通に肉とかを食べるわよ』
……。骸になったら食われるってこと? やっぱり帰『そういえば、ここがなんでこんなに土が広く露出しているか知っている?』
なぜ急にそんなことを? と思いながら、辺りを広く見渡す。
うーん。っていうか私たちが歩いてきたの、森の中でもなんか通りやすい道だったような。よく踏み固められていて……。
あれっ? なんか遠くでガサガサって言っているような…。
おおよそ、20メートル前方。
『ちなみに、人里に農産物を漁りに移動することもあるわね』
そっとバトルアックスを前に構える。
『そしてそういう個体は大抵人に攻撃性を示すことがあるわね』
周囲はでこぼこしている。
『さあ、ワタシは上で見守っているから、一人でなんとか倒して見せなさい。それまで絶対、死にそうになっても助けないわよ。全力を出しなさい』
ハハッ(裏返って出る高い声)。これはヴァインタ、助けてくれないなっ。
前から見えてきたのは、先ほどのゴーレムより一回り大きい個体。
ゴーレムより筋肉質な──。
いのししだった。
────
私たちは、互いに何も知らずに連れてこられた被害者と偶然自分の縄張りを荒らされた被害者だ。
そう、話し合いの余t──ちょま、話せばわかっ、おまっ、くうぅぅぅぅぉぉぉおおおおおおお、力強っ(斧で受け止める)。
私の体はふわりと宙を浮き、10メートルほど吹っ飛ばされた。さっきのゴーレムほど中身に質量はないようだ。
ふう。お前には知性があるはずだ。私は被害者、お前も被害者。悪いのあいつ(上を指差す)。
いのししは私の言葉が通じたのか、かぶりを振って──突進してきた。
うん、わかってた。脳筋だもんね(突進を再度受け止める)。
また数メートル吹っ飛ばされたが、今度はうまくぶつかる前に斧を差し込んで相手の頭に軽く切り込みを入れてから、自分から吹っ飛んだので、私のダメージはかなり少ない。
相手さんは──お怒りだな。
ブモオオオオオォォォォォォ、と一際大きく鳴いた。
先ほどのゴーレムより簡単に傷がついたといえば、攻略難度はこっちの方が低いか?
そう思った時、いのししは先ほどのゴーレムよりも素早く突進──回避──してきた。
流石に受け止めるのは危険だと思って回避したが、いのししは勢い止まらず、気に突っ込む。
木にミシミシという嫌な音が鳴り始め、私の方へと倒れて──右に回避──いのししは私の方へと突進してきた。
木の方は確実に終わりなので、しょうがなくいのししの方を──激突っ──ぐっ、はっ。ふしぃ(うめき声)。
いや、ぐううう、きつい。受身取れずに思いっきり木にぶっ飛ばされ──目の前に毛──右へ転がった。
ドンッ、という音とともに、私のいたところにいのししが突き刺さり、二本目の木も倒れ始めた。
回避していた私は、一回思いっきりのけぞり、体に空氣を吹き込み、全力で距離を取る。
いのししも流石に二回連続で突進はきつかったのか、一回息を吸っている。
刹那、いのししがこちらを向く。目がマジのやつだ。
──やらなきゃ、やられる──
日本では滅多に経験することのない目に真っ向から射すくめられた私は、一瞬硬直してしまう。
はっ、と意識を向けた時には目の前にはいのししの背中だけが視界に映り、今度は20メートルほどであろうか、吹っ飛ばされ、肺の中は押しつぶされ、カハッという情けない呻き声だけが響いた。
いのししは、こちらを向くとやけに闘争心を失ったような目つきで、作業的な目つきで、こちらを向いてきた。
ああ、急に体の神経がなくなったかのように力が入らない。
目の前が、頭が、くらくらする。
やっぱ、無理だったんだよ。
体が今にも地面に倒れ込もうとしている。
うん、十分頑張ったよ。この世界に来て、なんか転移させられて、なんか歩かされて、なんかうさぎを捕まえて、なんかRPGの勇者のように格上のゴーレムなんかと戦ったけれど。
別にゲームの世界じゃないし。倒れたらそれでおしまい。
セーブデータなんかないし、全知全能のような攻略サイトもない。
いのししが近づいてくる。
ヴァインタは助けてくれないと最初に言ったし、今この瞬間に助けが入らないってことはそういうことだろう。
目が、まぶたが落ちてくる。
怖い。恐い。怕い。
死んだらどうなるのか怕い。
この瞬間、私をどうするのか恐い。
何もできず、ただこのまま終わるのが怖い。
何もできなかったのか。
何も意味はなかったのか。
私は。私は。わたし、は。
どうしたかったんだ?
何を救いたかったんだ?
いや、何を救う必要があるのか?
まだ旅の途中なのか? それともこれで終わり? それともまた新しい地に飛ぶだけ?
なにをなす? 何をなす? 何を為したかったんだ?
なぜ、この世界に来たのに何にも感じていない。
なぜ、この世界で生きている?
なぜ、私は生まれた。
なぜ、立っている?
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ。
死、死、死。
どうして、どうして、どうして、ひとりだった?
どうなるんだ?
どうすればいいんだ?
私は本当に何をしたいんだ?
私は────「クヒッ」────フグゥ。
ふっとばされた。
ふっ飛ばされた?
あ゛っ?
そんな路傍の石っころみたいにこっちを見やがって。
クソが。動物風情が、そんな目つきをしやがって──突進──手刀を叩きつける──ははっ。はっきり見える。温い温い。そんなんで殺ろうととしていたのかよ。
「なめん、じゃ、ねぇぞ? 私は、ふっ、まだ、はっ、生きてる」
がむしゃらに構える。
「フハハッ。わたしは、いま、ここにいるぞ。やれるもんなら、やってみろ」
腰を落とし、全力で相手にこちらから踏み出す。
相手がたじろぐ。
びびってやがる。所詮は獣か。ゴーレムほどじゃねぇな。
「とりあえず、これは私をそこに叩きつけた分」
脳天に思いっきり叩きつけ、脚をしっかりと踏み込み蹴り上げる。
「ふっは。テメェ、おっも」
足が痺れる。
透かさず距離を詰め、二発目ェー。
ハハハハハハッ。よえーな。
おっ? やっとこっちを向いたか。殺意のこもった目で。
そんな目をしたってこっちを殺せねぇぞ?
斧を拾う。相手は起き上がる。
私は斧をいつでも振り潰せるように、構えた。
相手も頭から、その背中から、その足から、血を流しながらこちらをまっすぐと見つめる。
相手にオーラのようなものに包まれた。
圧が一段階強くなった。
こちらも負けじと気力を巡らし、全身から、気を漂わせる。
待つ。
相手が先に動き出した。
私も前に向かって斧を振り下ろし、詰めていき──刹那、体がやけにスローモーションのようにゆっくりと動いている、だが、相手と私の動いているスピードは同じ。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああっ」
ブモオオオオオォォォォォォオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオッ。
だが、私の方がリーチが長い。
先に相手の頭蓋を叩き割り、脳天から色々な液が飛び散るのがはっきりと見える。
相手の体が前に、前にとやってくる。
自分が死んでも骨ごと突き刺し、殺すつもりか──させない。私は、生きるっ。
突き刺さった斧を思いっきり力を込め深く、深く突き刺し、その反動で私は宙に飛び──いのししは勢いよく木へとぶつかった。
それを見届け、ふと後ろを向くと、新たに一匹。
ブモオオオオオォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
番だったのか。
でも悪かったな。だから、お前を斃す。
いまここでやらないと、死ぬまで襲い続けようと見ているからな。
私は深く腰を落とし、最初の一撃を入れようとして、間に──。
『そこまでよ。ようやく、シラホ、アンタの本気を見せてもらったからここからは私がやるわよ。アルウーヌス様に見殺しにするように言われているわけじゃないから』
目の前に、体を包み込むように柔らかな風は吹き下ろす。
『ここ最近、少し強引に難易度高いことを押し付けて悪かったわね。あなたが、どんな人間なのか? っていうのを私自身が計りたかったから、ずっとこんなことをしていたわ』
風が一段強く噴き出す。
『まあ、最初は話してみようかなって思ったけど、アンタがあまり話さないし、語らないし、どんな思いを抱えているのかはワタシには分からなかったわ』
周囲の葉が切れ、舞い上がる。
『別に今回のを見て分かったわけでもないわ。そして、そのことを無理にワタシから聞き出そうとも思わないわ。でも』
緑色の渦巻きがヴァインタによって練り上げられていく。
『アンタが全力を出さなきゃいけない場面で、どんな形にせよ、全力を出せることをしっかりとこの目で見たから、目的は達成したわ』
ヴァインタは緑の渦をその手に圧縮していき、緑の刃を作り上げた。
『お詫びと言ってはなんだけど、ワタシの力の一部を見せてあげるわ』
全く傷を負っていないいのししがそのヴァインタを恐れているかのように雄叫びを上げながら、全力で距離を詰め──ヴァインタが手の刃をそっといのししに向け、その瞬間、刃の射線が全て真っ二つに割れた。いのししも、その後ろにあった木も、その先へ、先へと一本の線が繋がっていた。
『ふう、こんなもんかしらね。それじゃあ、血抜きをしましょうか』
倒れた。(本日二度目)
主人公急変!
タイトルの読みは番でした。
『番えて』で一度似たような読みをしていましたね。
どちらも二つセットっていう意味ですね。
ちなみに中国では2という数字は好まれるらしいです。
対称性があるからだそうですね。
なので同様にして偶数は大抵好まれる数です。
私は個人的には小さい頃は4が好きでしたが(偶々最初にもらったユニフォームの背番号)、今は8ですかね(なんか横に倒すと∞だし、2の三乗っていうのが意外と好きな感じ)。
皆さんはどんな数が好きですかね。
ちなみにこれを書いているのは令和8年です(西暦(2026)の下二桁から18を引いてください、『にく(2×9=18)は腐る』で覚えよう!)。




