第七話 一騎打ち
ごめんなさい。日付を越えて。
今日はもう数話、更新します。
私はとにかく走る。
距離を詰められたら、何も対策を考えられていない今、一瞬でやられてしまう。
そこを乗り越えようとする時、足を滑らせ、転びかける。
ここら辺は落ち葉があるのに加えて、土もあまり硬くないため、よく滑る。
ドンッ、ドンッと巨体を木にぶつけている音が響き渡る。
何か解決する手立てはないか。
ゴーレム。
ユダヤ伝承を踏まえたゴーレムなら『エメト(真理)』を『メト(死)』に変えることで撃退することができることは有名だが、ヴァインタはそんな仕組みをわざわざ今回の訓練で仕込んでいるとは思えないし、私がそれを一瞬で見分ける方法もない。
あとは、感知方法が音であるなら、静かにしていれば、気づかれずにやり過ごせるかもしれない。
でも、今逃げずにそのままやり過ごすという手は、もし感知方法が違ったら間違いなく一巻の終わりとなるからとてもじゃないが、選べない。
う~ん。考えても仕方がないか……。
こういう能力差がすごいある敵って、嵌めることができそうな状況に持ち込んでタコ殴りにするのが定石だっけ?
少し周りを見渡して、考えること数秒。
逃げ続けてもジリ貧だということを薄々感じていた私は、そこで迎え撃つべく、木に切り込みを入れた。
────
ちょうど輪になるように三本目の木に切り込みを入れ終わった時に、奴はやってきた。
そして、私の姿を見るなり──突進──あっぶねっ。
一先ず攻撃を躱すと次に倒れ込んできて、横っ腹で押し潰そうとしてきたので、とりあえず攻撃範囲から離れ、考える。
突進させて…いや、今の感じの押しつぶし攻撃で二本の切り込みを入れた木と一本の切り込みを入れてない木に突っ込ませて、もう一本の木をそこに倒れ込ませて、ゴーレムを固定できるか?
なんとなく、できそうだと感じた私は、ゴーレムが体勢を立て直したのを横目に、攻撃を誘発させたい箇所に誘導していくつもりで逃──突進──げよう、だよねわかってた。
これ倒れ込みの後、数秒だけ立て直しのモーションが入るだけで、それ以外全部全力突進モードなんだよ。
こうなったら、おりゃーーー。
思いっきり近づき、弱点っぽい場所に全力で叩き込もうとして、接合部ひとつないそのわがままボディーを見て、全力で逃げた。
数秒前の自分の浅慮な突撃に後悔しながらも、接近したおかげか、次に押し潰しモーションに入ったので、しっかりと誘導し、後方へジャンプっ。
ドゴンッ、メキメキメキッという凄まじい力によって木が折れる音を聴いて、私は反対側に回り、木を切り倒した。
ギギギギギッという音が鳴り、ドンッと木が地面に倒れた音とともに巻き上がった粉塵で当たりが見渡せなくなったが、おそらく成功しただろう。
土煙が晴れ、私が目にしたのは、身動きが取れなくなった、ゴーレムの姿だった。
ヒャッハー、殴り込みの時間ダァ(心の中の野蛮思想)。
真っ先に前足の破壊に取り掛かる。
ガン、ガンという音が鳴り響く。
やっぱり攻撃をしても、破壊できそうにない。
その時、ゴーレムが少し身じろぎした。……少し木が動いた!?──やばい、この拘束も時間稼ぎにしかならないか?
とりあえず、次の攻撃で脚を破壊できなければ、次の行動に移ろうと決め、全力で斧を振りかぶった時。
グググッと木が少し持ち上がり、ボスンと再び戻った。
なんだ、驚かせんなよ。そりゃ木は重いだろうよ。流石に無理だよね。
その考えがフラグとなってか、ググググググググッと木が持ち上がり……。
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ(全力で斧を振り下ろす)」
ガキンッと一際大きく音が鳴り響くとともに、若干ゴーレムにヒビが入ったように思われ──ゴーレムは悲鳴をあげる代わりに、その巨体を大きく震わせ、木を振り払った。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ」
全力で斧をゴーレムの頭上に振り下ろす。
ゴーレムはまた体勢を崩した。
「おりゃぁぁぁぁぁあああああああああああああ」
連続で頭に攻撃を叩き込み、体勢を崩す。
あっ、これ倒れている時に体勢を立て直そうとしている時、頭に叩き込めば、倒れるぞっ。
そうして、二度ほど繰り返し体勢を崩し続けると、ゴーレムは怒ったのか一際大きく体を跳ね上げ、私は吹っ飛ばされた。
体勢を立て直される前に、攻撃を叩き込もうとしたが、もう遅い。奴は立ち上がって、こちらに向かって構えていた。
あ、これ俗に言う『お怒りモード』じゃね?
そんなことを考えていると、相手が光り出し、薄いオーラのような何かを纏わせていた。
あー、これ回避しようにも多分私に当たるまでずっと直進的に突進してくる奴だし、迎え撃つしかないやつか。
覚悟を決め、私はバトルアックスを後ろに構え、全力で迎え撃つ構えをとる。
奴は唐突に走り出した。
30メートル、20メートル、15メートル、10メートル。奴はだんだんとスピードを上げ近づいてくる。
5メートル──私はまだ斧を振り始めない。早く振りかぶれば、奴に当たる前に空振って、私が吹っ飛ばされるだけだ。
4メートル。奴の巨体2個分。わずか1秒も経たないうちにこちらに到達しうる距離で有りながら、私は冷静に時を待つ。
3メートル──私は力を込め始める。タイミングを見て、ベストなタイミングで振り下ろすっ。
2メートル──私は脚で地面を掴み上げる。大地の力をその身で感じ、機を図る。
1.5メートル──身を昨日引いた弓のようにしならせながら、斧を振り始めた。
1メートル──奴の巨体がはっきりとその目に映る。目は逸らさない、逸らせない。確実にその身にぶち当てる為に。
0.5メートル──その目で斧の先と相手の頭を捉え、確実に当てにいくっ。
眼前にその巨体が迫り、巨体は沈んだ。
巨体がぼろぼろと崩れていく。
私は勝ったのだ。
もう二度とこんな真っ向からの一対一の勝負をしたくないなぁ──そう思いながら、私は気絶した。
家の冷蔵庫が壊れました。
自分よりも長生きだったのに…………。
先に逝くなんて。
肉類はどうすればいいんだ?
???「ホシニクニスレバイインダヨ」
腹壊すわ!(怒)
というわけでうちの冷蔵庫がただの箱へとジョブチェンジしました。
おかげでお腹は大洪水です。
やばいものは食べないに限るよ。(別に干し肉にしたわけではない)
改めて冷蔵庫のありがたみを感じました。




