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不器用でコミュ障なJK、異世界を救う 〜〜RPGみたいな勇者にはなれません〜〜  作者: 大山小水


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第五話 ハンティング

 ヴァインタが森の中を先導していく。


 この世界に来てから初めてこんなに鬱蒼(うっそう)とした木々の中を歩んでいる。


『シラホ。そこのところ先が窪んでいるから注意しなさい。あと、そこは葉っぱに覆われているけど粘土層が露出して滑りやすいから注意ね』


 ちょっとずつこうして森の中での注意をヴァインタが言ってくれる。


『あっ、よく見ておきなさい。これはうさぎが歯を使って樹皮に齧り付いている痕跡よ』


 ヴァインタが指し示した木には二本並んだ傷が複数付いていた。


『この傷は木の内部が白く見えているから比較的新しいものね。黒くなっていたり、傷が塞がっていたりする時は大体うさぎは遠くに行っているから意味はないけど、今回の傷は近くにいる可能性が高いわね』


 なるほど。傷の新しさを見て、近くにいるのかいないのか判別するのか。


『そしたらシラホ。周辺の下の方のところをよく観察して。うさぎの黒くて丸い糞が落ちているかもしれないし、少し草木が生えていないところがあったらうさぎの通り道になっているかもしれないわ』


 じっくりと周囲を観察していると、丸くコロコロとした糞が見つかり、そこの近くにウサギの通り道っぽい小道があった。


 人には通りにくそうなその小道は確かにうさぎが付けたのであろうハの字の足跡が続いていた。


「……ヴァインタ、通り道っぽいの、見つけました」


『あら、早くも付けたわね。そしたら、できるだけ音を出さないようにゆっくりと辿って行きましょう。そして、いつでも矢を放てるように弓はしっかりと手に持っておきなさい』


 私は、ボウケースから弓を取り出して、しっかりと手に出した。


『うさぎは大体決まったルートを好んで餌場へと移動するからこの道も辿っていくとうさぎの餌場に繋がっているわ。もしかしたらすぐに出会うかもしれないわね』


 なんかうさぎって最近のゲームの徘徊するエネミーみたいだなと思いながら道を辿ること二十分ほど。


 私とヴァインタはうさぎを発見することができた。


────


『それじゃあ、これからあなた一人でうさぎを仕留めなさい。まず話しておくと、十メートルほど離れたところから射なさい。それより近くで放つとうさぎが音に気づいて逃げてしまうわ。それと、必ず重心を狙いなさい。下手に頭や足を狙おうとすると、避けられてしまうわ。重心は昨日の打ち合いで大体掴めているでしょう?』


 確かに昨日の打ち合いの時に何度かヴァインタに指摘されて、大体の重心の位置がわかるようになっている気がする。


『あと、無理に近づこうとしなくていいわ。無理やり近づこうとすれば、おそらくうさぎは気づくわ』


 あまり近づかない、と。


『そしたら、仕留めてらっしゃい。仕留めなかったら今日のご飯がただの雑穀がゆになると思いなさい』


 ……よしっ。頑張るぞ。


 私はそっとそっとうさぎから五十メートルほど離れた地点からゆっくり、慎重に近づいていく。


 40メートル、30メートル、25メートル、20メートル………。うーんこれ以上は近づけない気がする。


 目の前の枯れ葉を踏み鳴らして、うさぎに逃げられてしまいそうだった。


 私はそっと、矢筒から一本の矢を取り出し、音が鳴らないようにそっと、弦に番えて、朝の練習の時のようにしっかりと張った。


 対象をじっくりと見て、重心を大体で当たりをつけ、その少し上に狙いを定めた。


 外せないという緊張感が私の身を包み、適度な集中が保たれた時──射──矢は【ヒュッ】という引き締まった小気味のいい音とともにうさぎの胴体へと向かって行き、その体に突き刺さった。


 うさぎはその後、ピクッと痙攣した後、すぐに倒れた。


『しっかりと仕留められたようね』「うわっ」


 ヴァインタが後ろにいた。びっくりした。


「……一人で仕留めろ、って言ってたんじゃないですか?」


『別についていかないとは言っていないわよ。それに、どのくらいの腕なのかをしっかりと見ておきたかったから。まあ、どうやらワタシの予想より遥かに成長しているみたいね。さすがアルウーヌス様が喚んだニンゲンっといったところかしら』


 まあ、確かについてこないと言っていなかったし、ついてこられたからといってもデメリットはないし、まあ別に良かったか。


『そしたら、うさぎの心臓が止まり切る前に首あたりに鋭い刃で切り込んで、血抜きをするわよ。急がないと血抜きがうまくいかなくて食べられたものじゃない肉になってしまうわよ』


 そうして私は絶命したうさぎの元へ急いで向かった。


────


 例によって近くの水源まで行き、そこで作業を行うことになった。


『よし、血抜きもできたし、毛皮もかなり上手に取れたわね』


 意味がないと思っていた刃の潰れた大きい方のナイフも毛皮を剥ぐ時には大活躍した。


 意外と皮を剥ぐのは簡単で切り込みを入れた後は人形の服を脱がす時のような感じですんなりと剥ぐことができた。


『そしたら次は皮もしっかりと活用するために裏の肉を取っておきなさい。肉がついていると次の村に持っていくまでに、虫が毛まで食い荒らしてしまって、せっかくの毛皮を無駄にしてしまうわ』


 丁寧に肉を削ぎ落としていく。


『そして、それが終わったら塩漬けにするわよ。そうすれば皮をなめすまで保存することができるわ。次の村でこれを交換に持ちかけるから、できるだけ丁寧に塩を塗り込んでおくといいわね』


 そうして余すことなく塗り込んだ毛皮をヴァインタに見せると、満足そうに頷いて言った。


『これだけ丁寧にやっておけば十分ね。そしたら火をつけて肉の料理の方も始めましょうか』


 私は昨日と同じように木々を拾い、杖を構えて魔法で火をつけようとすると。


『あら、シラホ。忘れちゃったのかしら。今日はこれで火をつけるのよ』


 ヴァインタの手には少しまばらに光っている石が二つ握られていた。


 そう、火打石である。


────


 火おこし体験をしたことがあるだろうか。


 おそらく誰もが一生使わないだろうと思いながらも、小学校や中学校の林間学習や生活体験で火おこしをやっただろう。


 私もしっかりと小中と学校に行っていたからわかる。


 あれはかなり大変だ。


 木をこすり合わせる。


 あれは摩擦熱によって火をつけると説明の人が言っていた。


 昔の人は溝を作ってそれを全力で擦ることで火を起こしていたと。


 まあ現代を住む私にはライターがあるし、チャッカマンがあるし、マッチがあると思いながらも、昔ながらのやり方に則ってやった。


 なかなか火がつかなかったし、煙は全然出てこなかった。



 そして、私は数日後、珍しく休日に家にいた母と共に家の近くの大型ショッピングセンターに行った時に見たのである。


 火打石というものを。


 それは手のひらに収まるゴツゴツとした石と、黒い鉄の金具のセットだった。


 母に聞いたところ、あれは石と鉄を打ち合わせるようにして火花を出し、火をつけるのだという。


 そして、せっかくだからと言って買ってくれた。


 家に帰って、ちょっとだけ母と共につける練習をした。


 なかなか点かない火。カン、カンと乾いた音が庭先に響くだけで、火花は散れどもなかなか点かなかった。


 そして私が諦めて母に渡すと、母は「こうやるのよ」と言わんばかりにタイミングよく石と鉄を打ち鳴らし、あっという間に火口(ほくち)に火を点けてしまった。


 明るく新聞紙を燃やしていく炎。


 その炎は私には点けることはできなかったが、それでいて私を覗き込んでいるかのようにゆらゆらと揺れていた。


 しばらくその炎を眺めていた母は、庭先でBBQをするような家庭でもなかったので、あらかじめ火をつけるのに準備していた水バケツでそれをあっという間に消してしまった。


 そして、母と一緒に普段使いはできないからと言って、その火打石を防災バッグにしまった。


────


 そんな母との思い出と共に、なかなか点けられなかった火打石の思い出が蘇る。


 なかなか点かなかったのだ。少なくとも前世では幸いそのしまったままの火打石を使う機会は訪れなかったし、それ以降出してやってみようと思うこともなかった。


『まあ、使い方は簡単だからやってみなさいよ』


 そう言ってヴァインタは火打石を渡してきた。


 受け取った私はそれをしげしげと見つめた。


 異世界に来てから、体を動かして、日本で考えられなかったことをやっている。


 今、目の前にあるうさぎの肉だって、日本だったら狩りをすれば民間人だったら鳥獣保護法によって罰せられてしまうのだろう。


 体を動かせば、いろんな動きを吸収していく才。知りもしない言語を習得し、自在に会話ができるようにする才。


 アルヌーウス様から頂いたこの二つの才があれば、割と色々なことができそうな気がする。


『なにぼーっとしているのよ。とりあえず、これを火口(ほくち)にして火を点けていくわよ』


 ヴァインタから受け取った落ち葉の塊を地面に置き、その近くでカン、カンと火花を散らしていく。


 しばらく辛抱強くやり続けると、少し煙が出てきた。それを消えないように息を吹き込み、煙を火種へと育てていく。


 そして無事火種ができた私はヴァインタが準備してくれた組まれた木の中に置いて、息を吹き込んだ。


 少しずつ火がついていった木はやがてそのまま燃えていった。


 風に揺られて炎が揺れる。


 その炎は以前見た炎よりもずっと大きかったが、以前よりも不思議と小さく見える。


 ヴァインタは昨日と同じように、穀物を放り込んでいくと、今日のうさぎの肉も切り分け、入れてしまった。


 ヴァインタは私に干し肉を作る方を任せた、ある程度作り方を説明したのち、どっか森の中に行ってしまった。


 私は先ほど毛皮に塗り込む時に使わなかった塩を肉に漬け込んで、そのまま串に刺し、火に直接当たるように置いた。


 しばらくするとヴァインタは帰ってきて、鍋を仕上げ、中身を器二つによそり分けた。


 ……そういえば。


「…ヴァインタは、昼食の時や朝は、ご飯食べていなかったけど、どうして、夜は食べるんですか?」


『それは気分よ』


 そっかぁ、気分か。


 私は、そんなファンタジーな存在と一緒に異世界での二日目を終えた。


Qこの小説は何ですか?

Aコミュ障JKが異世界を救う物語です。

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