Day1-5 考察
〈一日目が終了しました。直ちにホテルへと転送します〉
ホテル?
僕が疑う暇もなく、謎の光が体を包みこんだ。
〜〜〜
〈あなたのホテルはここに決定しました。以降、このホテルに限り自由に出入りできます〉
気が付くと、見知らぬベッドに仰向けで倒れ込んでいた。
〈エレベーター、朝食と夕食を完備。売店と浴場もあります。衣服は、現実で所有している服がそのままクローゼットに現れます。それでは、ごゆっくり〉
一方的に捲し立てて通信は切れた。いくらサービスが充実してようが、無理やり放り込まれてる時点でプラスが完全に相殺されてる。なんなら突っ切ってマイナスになってる。
「はーあ。理不尽極まれりだよ本当に。僕、何かした?」
スマホを取り出し、ふと思い出した。
「あれ、そうえば…スマホに関する説明を一切されてない」
僕はスマホを開く。
「アプリ…は、特に消されてない。連絡ツールを除いてだけど」
外部への連絡手段が絶たれてる。こんなデスゲームじみた環境なら当然なんだろうけど…プレイヤー側の感情を無視している。
「で、これは何?」
一つだけ、見知らぬアプリが入っていた。名前は「Soul Tags」。
「主催者が入れたアプリなんだろうけど、タッグスって何?タッグマッチのタッグ?」
Soulは魂、つまり魂で結ばれたタッグということだろうか。
中々粋な名前だ。こんな所に放り込んだとはいえ、一応激励でもしておこうかと言う配慮か。作成者は人の感情を知らないタイプの天才とかなのか?
「なーんて、無駄な考察だよね」
Soul、魂が何なのかはよく分からないが、どうせTagsに関しては鬼ごっこの意味だと思われる。バトル鬼ごっこの英題がそのまんまBattle Tagsだし。
「まー、いいや。大抵のデスゲームは競技中以外は攻撃されないし、そもそも協力ゲーだから」
僕はスマホを今一度開き、時刻を確認した。表示は18:30。吸い込まれた時間が5時くらいなので、つまり僕らは大体1時間半ほど戦っていたことになる。
「ええと、夕食は…」
部屋に置いてあった|インフォメーションブック《ホテルにあるメニュー表みたいなやつ》を開き、サービスを確認。開始は19:00のようだった。
「やば、間に合うかな」
僕は急いでシャワーを浴び、案内図に従ってエレベーターに乗った。
「え?仙煌!?」
エレベーターから降りた直後、聞き慣れた声がした。
「理宮?」
「あ、ホテル一緒?」
「そうっぽいね」
「よっしゃ」
少しだけ、少しだけだが、いつもの理宮よりトーンが低いような気がした。
〈ただいま夕食が解放されました。ご希望の方はレストランへどうぞ〉
「…だってさ。早く行こうぜ」
僕も一応、食べるために降りてきたわけだが、毒が入ってる可能性もあるし、そもそも命が懸かってる状況でバクバク食べられるほど僕の肝は据わっていない。
「僕はいいや」
「じゃ、どうするんだ?罠を疑ってんなら売店のメシも同じだよ?」
「…確かに」
食事が用意されてるってことは当然、この世界には空腹の概念があるはずだ。現に僕も今、確かに腹が減ってる。
期間のわかっていないデスゲームの間、食事を抜き続けるのは不可能に近い。コンビニ等があると仮定しても、結局はこの世界のモノである以上、罠の可能性は付き纏う。
「だったら、美味い…かは分からないけど、ホテルで飯食ったほうが良くないか?通貨が何なのかもわかんないけどさ」
「…珍しいね、理宮がそこまでマジに諭してくるなんて」
「仙煌がどっか行ったら、僕は一人で飯を食う羽目になるから…」
それを言われると断るわけにはいかなくなる。僕は了承して、レストランへと向かった。
〜〜〜
「ねえ、豪快に食べてるとこ悪いんだけどさ」
「んが?」
椀を土台として聳え立つ白米の山と、焼いたものから煮付けまで幅広く揃えられた魚を交互に、凄まじい勢いで食べる理宮に話しかけた。
「スマホの話だよ。なんなの?このアプリ」
既に塩で味付けがされているであろう魚に更に醤油をかける理宮。普通なら驚くが、僕はもう見慣れている。彼の舌は既に、塩分に支配されている。
「名前は?」
「Soul Tags。バトル鬼ごっこに関連するアプリだと思うけど、説明が一切されてないんだ」
「Tag…鬼ごっこね。でもSoul…いや、待てよ」
理宮が、右手で見てて気持ちがいいくらいの手捌きで骨を取り除きつつ、左手を頭に添えて言った。というか右手から先は別の生き物なのか?
「憑者を持つのが依者って呼ばれるわけだけど、組み合わせたら憑依…霊が乗り移る事を指す。僕らからは視認できないってのも、憑者がSoulって言うのを裏付けている気がする。なんでGhost Tagsじゃないんだと言われればそれまでだけどね」




