LIGHTNING-1 雷神降臨
「あ?空に穴?」
「もしかしてさっきの音って……」
「あれが出現した音かもしれない。見て、中から何か出てきた」
理宮は穴を指差していった。穴からは、剣を持った人型の存在がゆっくりと降りてきている。
「……こういう登場するキャラって、決まって強キャラですよね」
「しかも味方として出てくるところを見たことがない……ってか、なんか天候変わってない?」
暗雲がもくもくと湧いて出てきて、空を覆った。次第に雲の量は増し、分厚く黒い雲がプレイヤー達に閉塞感を覚えさせた。
「仕様が全く同じかは分からないけど、天候が雨の時はこんなに黒くて分厚い雲じゃなかったと思う。これは雷雨だ」
バトル鬼ごっこにおいて、5種類ある天候のうち、雪に次ぐ低確率で発生する雷雨。
「市街地ステージに雷雨関係のギミックあったか?」
「避雷針がある。ただ数が少ないから正直あんまり役には立たない。あとは停電かな」
「最悪じゃないですか……」
避雷針は役に立つから問題ないが、停電が発生すると死亡率が大幅に跳ね上がる。視界が著しく悪化し、鬼の種類と攻撃が判断しにくくなる。色鬼や氷鬼など、視覚で種類を判別するタイプの鬼とは特に相性が悪く、下手すると全滅エンドすらあり得る。
「停電は早々起きないから大丈夫。それにこの状況だ、どうせ仙煌がまたなんとかするさ」
理宮は、仙煌の庇護下から離れると言いつつも、その実仙煌がどうにかすると思っている自分の神経に嫌気が差した。表面上は恐れて恨んでいても、心はずっと仙煌に服従したまま。勝利が捻じ曲げられたその日から、仙煌が願った「対等」ではまるでなく、ただ優劣の関係だった。
「そうか、現れた敵に対しては迎撃してくれるのか」
「だから暫くは、攻撃の意識がプレイヤー側に行くことはないだろう。まぁそれはあくまで仙煌だけの話。タイミング的に、あいつは仙煌を倒すために来たんだろうけど、もしかしたら何らかの理由で全員ぶち殺すために派遣されたリセット装置なのかもしれない」
「俺等に矛先が向いてもおかしくねえってことか」
「そういうこと。さて、まずは物陰かどこかに隠れて様子を窺おう」
「あんな高い場所に手出しなんて出来ませんしね」
―――
地上より、はるか上空。
「まだ僕の邪魔をする奴がいるのか……」
「ーー|?>≡皿??《言ってることが分かんねぇな》ーー・ーー|?>≡皿==《こっちが言ってることも分からねぇか》ーー」
「分かる言葉を喋れよ、僕の敵。僕らをこんな危険な場所に拉致して、何がしたい!?」
「ーー↓↓%%皿%%↓↓ーー・ーー|??皿++?✕《何をそこまでキレてんだ》ーー」
刀を携えた仙煌と、剣を携えた正体不明の人物。彼が着ているボロボロの服には乾ききっていない血が付着しており、何者かを殺害して直ぐにこの地にやって来たのだろう。
「ーー|……□□>>==皿>>!!!《えーと……こいつを弄ればいいのか》ーー」
正体不明の人物は首輪に点いていた妙な機械のボタンを押し、キーボードを押すように空中で手を動かした。この行為自体にも、この人物にも敵意が感じられない仙煌は、空中で姿勢制御しながら立ち止まっていた。
「……あー、あー、これで分かるか?」
「なっ!?」
「その様子だと聞こえてるっぽいな。えー、端的に言わせてくれ。俺の目的はこっから脱出することだ」
「脱……出?」
「利害が一致したと思っているかもしれねぇが、残念ながら共闘は無理だ。脱出条件がぜんぜん違う」
謎の人物は仙煌が理解している体で進めているが、彼が手を出さなかったのは僅かな理性で抑え込んでいたため。既にその精神は限界に近い。刀を振り上げようとする右手を、必死で左手で押さえつけている。
「……ああ、そうだった。お前変なウイルスに感染してんのか」
「ぐっ……ゔゔぁぁぁ!!!」
「詳細を省いて言ってやる。俺はエニク。お前を殺しに来た」
刹那、仙煌は急上昇した。次の行動を読んで回避行動に走ったのである。
轟音とともに、雷鳴が空を駆けた。




