鬼国無双
「ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ」
一心不乱に、死体となった巨神鬼を斬り続ける仙煌。それに対し、新たにスポーンした巨神鬼が拳を向けるが、仙煌はノールックで腕ごと両断。人間はおろか鬼ですら追えぬほどの速度で背後に周り、首を両断。
「馬鹿な!?巨神鬼だぞ!?」
モニターを確認しながら台を拳で叩く男。
「落ち着け。奴は『二神』の一角、そして0ware感染者だ。あんな物、巨神鬼一体程度で止められる訳が無いだろう」
「だ、だが……残りの資源で出撃させられる兵では奴を止めることなど……」
「出来る。生産が出来ないなら、既にある自前の兵をぶつければ良いのだ」
追加で5体もの巨神鬼がスポーンした。
「……邪魔だッ!!!“流剣ː竜嵐”」
“爆噴空走”と“渦潮”の合わせ技、高速機動しながら錐揉み上に敵に突っ込んでいくこの技により、5体いた巨神鬼のうち2体を即時撃破。
「“流砲ː徹甲弾”」
偶然にも巨神鬼が一直線上に並んだ瞬間を見逃さず、高威力の貫通技で巨神鬼の腹部に風穴を開けた。
(仙煌……何があったんだよ)
一人暴れ続ける仙煌を、ビルの残骸から見上げる理宮。その荒々しいながらもどこか優雅な動きに、恐怖しているとも見惚れているともつかない奇妙な感情を抱いていた。
はっきりと視認できた訳ではなかったが、理宮は仙煌が巨神鬼に負けた瞬間を目撃している。故にこの短時間で巨神鬼を一撃で倒せるほどの爆発的な成長を、未だ理解できずにいた。
「……あ、理宮さん!」
下から声が聞こえた。
「ああ、陽か」
「はい。生きてたんですね、よかった……」
「ああ。今あそこで暴れ回ってるあいつが助けてくれたんだよ」
理宮は指を差そうとしたが、動きが速すぎて追いきれないため手を下ろした。
「……あれ、あの人って、さっき変な腕の人と空中戦繰り広げてた人ですよね」
「そうだな。ただ今はなんか暴走してるから、あまり近づかないほうがいい」
なぜ見えるのか、とは聞かなかった。
「で、どうするんですか僕ら」
「多分、このままいけば仙煌は巨神鬼を全員ぶち殺して終わるはずだ。もうあと数分もかからないだろ。で、そうなった場合面倒なのが次の矛先だ」
「矛先?」
「ああ。さっきの戦いから様子がおかしかったんだ。実はさっき、君が言っていた変な腕の男に助けられたんだけど、それを見た仙煌は僕の話に聞く耳を持たず攻撃を加えちゃってね」
「それで反撃を食らったんですか?」
「いいや、あの変な腕の男はずっと逃げているだけだった。傷つけたくないから逃げてるのか、ただ勝てないから逃げてるのかは分からなかったけど、少なくとも彼に戦闘の意思は無いように見えた。で散々逃げ回って殺されかけた瞬間、突然消えた」
「消えた……って、死んだってわけじゃないんですか?」
この時、理宮の脳裏に浮かんだのは拳の死に様だった。氷漬けの状態で握り潰された拳。氷鬼の指の隙間から溢れ出る液体と細かな肉片がずっと焼き付いたままだった。
「……仮に死んでもあんな風に消えたりはしない。あいつが例えば……運営側の存在だってんなら話は別だけど」
「――準備はいいか」
「ーー\皿/ーー」
話しかけられたのは、仮面と首輪をつけられた、貧相な身なりの奴隷だった。常に身体からパチパチと音が鳴っており、まるで電気を体に纏っているかのようだった。
「……っぱ原始人の言葉なんて分かるわけねェよ、末端社員だから翻訳機もねェし」
「ーー<:::皿:::>ーー」
奴隷はどこからか取り出した剣を社員に向けた。
「……ッ……てめぇ、ふざけてんのか?飼い犬が飼い主に逆らってんじゃねぇよ!」
「 ∧∧∧∧∧∧
ーー<::::::皿ーー」
うるさい、と言わんばかりに、奴隷は社員の首に剣を突き立てた。
「ーー:>皿!;;;<皿;<皿;<皿ーー」
奴隷はなにか怒った様子で激しくまくし立てた。
「ーー◯皿>≡<≡◯≡≡ーー」
「分かんねぇつってんだろ!いい加減さっ……さ……と……」
社員が気付く頃にはもう遅かった。手、足、胴、顔。奴隷は社員の足の末端から頭の天辺に至るまでを、寸分の狂いもない厚さで輪切りにした。




