運命の螺旋
時は4年後、中学1年生の時の事だった。
小学生時代、運動面では体育で全国記録を散々荒らし回り、頭脳面では文句無しに国内トップ校の中高一貫校に受かったにも関わらず、一切の躊躇いなくそのまま公立中学校に進学した天才、あるいは狂人として噂になっていた。となりの理宮はというと、特に運動能力が優れているわけでもなく、かといって自慢の記憶力を披露できる場面もなく、結果として仙煌という大きすぎる光に呑まれていたのであった。
「……ねぇ、仙煌」
「どした?理宮」
「次の期末テストさ、主要5教科で僕と勝負しようよ」
不意に理宮が言った。彼は直前に模試で中々の高得点を出しており、志望校の判定はA。勢いづいたまま、仙煌に勝負を挑むことで自己肯定感を回復しようとしたのである。
「乗った。理宮となら、結構いい勝負が出来そうだよ」
「今回こそ、その出鼻を挫いてやるよ」
無事に期末テストは終了。その翌週、テスト用紙が返され始めた。
国語。
「恵流くん、理宮くん、おめでとう。100点だ」
数学。
「仙煌、高助、お前ら100点」
理科。
「100点が2名!出席番号9番恵流、出席番号29番理宮。拍手〜!」
英語。
「はい恵流。100点だ」「はい理宮。お前も100点だ」
そして、社会。
「100点は一人だけ!」
ここまで両者とも全て100点。社会の点数で全てが決まる。引き分けか、それとも勝敗がつくのか。
「――理宮!おめでとう!」
理宮は息を大きく吸い、処理しきれていない現状を噛み砕いてから、大きく溜めてガッツポーズをした。一方で仙煌は額に手を当てながら、満足そうに言った。
「はは、負けたよ」
「……っ……っしゃああああっ!!!」
人生で初めて、理宮が仙煌に勝利した瞬間だった。だが勝利を称えた人間は仙煌ただ一人であり、他の人間は勝者である理宮には見向きもしない。理宮はただ「普通の人」で、仙煌は「天才」。その認識が崩れることはついになかった。
誰もが仙煌の魅力に取り憑かれている。「主人公補正」は、理宮から勝利の余韻すらも奪い取ったのである。対する仙煌は、初めて「自分を超えた存在」に出会ったことで、理宮への執着が増すことになった。
勝てないと悟った天才と、勝てない人間に出会った天才。二人のすれ違いは、後に最悪な結果を生むことになる。
―――
「……“流剣:調調溌始”」
湧いた巨神鬼のうちの一体に横薙ぎを食らわせ、上下真っ二つにする。そして“爆噴空走”で次の獲物を目指し宙を駆ける。
「理宮……理宮ぁぁ……!」
既に両断した巨神鬼を、続けざまに何度も何度も斬りつける。無自覚な憂さ晴らしは、寧ろ彼の心の虚無を増大させるだけだった。




