水面下
おかしい。日付は変わったし、鬼の発生も停止したはずだ。にも関わらず、彼らはホテルに転送されない。
「オクシー、訊くんだが、本当に今は「夜間」になっているのか?」
「はい、そのはずですが……」
「昼夜の切り替えがラグいとかか?」
「仮にそうだったとしても、既に鬼のスポーンは終わっていたはずです」
「じゃあなんで……巨神鬼のマーカーが生じてんだ?それも5つ……」
「急いで削除に取り掛かります!ヒドロ……は無理そうなので、カルボーンを行かせましょう」
「大丈夫なのかそれ。あいつ俺について聞かれたら「神」としか答えねぇぞ多分」
「貶されたら我を忘れるほどキレそうですしね……」
「あいつらは、俺らが敵か味方か掴めてない。ギャンブルすぎる。……あ」
「どうしました?」
「偽装だ。カルボーンの外見をラジームにしろ。そうすりゃ、最悪暴れられても『運営』への心証が悪化するだけ。あいつが距離を縮めさえすれば、そこに俺らが入りやすくなる。あいつは強い、仮に成功して『運営』に乗り込むことが出来れば、大きく打撃を与えられる。作戦がどう転ぼうが、俺らにリスクは無い」
「なるほど……」
「一応ワードフィルターつけとけ。うっかり口を滑らせて「ヒドロ様」なんて言われたらたまったもんじゃねぇからな」
「分かりました。設定はこんな感じでよろしいでしょうか」
オクシーは俺を手招きし、モニターを見せた。
「……ああ、問題ねぇ。後は今言った事を転送後に遠隔で伝えてくれ」
オクシーは軽く返事し、エンターと思われるキーを押した。
―――
「やっと見つけたぞ、裏切り者が……!」
私は歯を食いしばり、血が出るほど拳を握りしめた。
私は売られたのだ。見事なまでに奴の術中に嵌まり、「脱走事件」の全責任を被せられた。奴は見事に脱走し、その上籠城したバグ共に武器を横流しした。上層部は、所詮まともな訓練を受けていないただの烏合の衆であるという判断の上デバッグルームを包囲しているが、ヒドロが余計な事を吹き込んだせいで苦戦している。
憎まれ口を叩き合える程度の仲だと思っていたが、それは私だけだったのか。奴は本当に私が心底嫌いで、あの表情の裏では憎悪や恨みが渦巻いていたのか。
「ヒドロ……ヒドロ……!」
「ラジーム殿!妨害電波を検知しました!」
「……よくやった。発信源は何処だ?」
「ここの近辺です。座標は○○○○――□□□□――△XXですね。強力なステルスがかかっており、発見が遅れました」
「面倒な位置に設計しやがって……直接破壊が出来ないだろうが!」
「どうしますか?」
「こちら側から妨害電波をばら撒け。相手は『施設』内にアクセスできなくなった隙に鬼を送り込むのだ」
「了解しました」
「継戦能力は度外視でいい、ありったけ強力な鬼を出せ。奴らが『施設』内に侵入する手段を得た以上、私達に猶予は残されていない。もし0wareの感染者と遭遇しようものなら、奴は真っ先にここを叩きに来る。そうなる前に、力で潰せ」
「継戦能力度外視……ちょっと担当に聞いてきますので、後で承認お願いします」
「分かった。頼んだぞ」
……もし見つけたら、必ずこの手で……!




