“刻言”
さて、どうしたもんかね。ラジームに能力が発動したのは確認できたが、あいつは果たして本当に俺達を助けるつもりなのだろうか。
「……一旦状況を整理しよう」
ヒドロが語った作戦は、「同僚のラジームを誘導しているうちに主要口のシャッターを破壊、俺達依者はここに残りヒドロの帰還までここを防衛」というものだった。一見理不尽なように思えるが、ヒドロはなんと俺達に職員一覧、それから地底のもの含め、あらゆる言語を翻訳できる装置を寄越して来たのだ。
「いいか、ここの職員はデスクワークが本業だ。戦闘力は大したものじゃないうえ、数も少ない。今は全員出払ってるとこだが、もし戻ってきたら殺してくれても構わない」
「殺っ……」
部屋のうちの一人が何か言おうとして、言葉に詰まる。「殺すなんて」とでも言おうとしたのだろうが、ここは地底。倫理観が地上と同じとは限らない。そもそも俺達は今、地上から人間を連れ去ってまとめて殺すような施設にいるというのに……
「それから、一通り調べたものの、ここの入口は一箇所しか無い。つまり、侵入されないためにはそこを全力で守れば良い」
ヒドロは一人で語り続ける。
「あと、出来れば他の人間も解放してもらえるとありがたい。今回の物とは別の計画があるのだが、それには多大な戦力を必要とする」
嘘はついていない。ここは少し試すとしようか。
「なぁ。解放した人間含めた俺達は、その別の計画とやらに利用するつもりなんだろ?まさか、俺らのことを使い潰したり、捨て駒のように暑かったりするつもりじゃねぇだろうな?」
「そんな事は決して無いと約束しよう」
まただ。また本当の言葉。いや、途中で気が変わる可能性も……だが、だが……!
「俺は君達を守る。それだけは絶対に変わることがない。信じてくれ」
―――
あいつの発言からして、リストに書かれていた俺の能力は「嘘を吐かせる能力」とかその辺だろう。だが正確には少し……いや、かなり違う。俺の能力は3つ、嘘を吐かせる“虚言”はあくまでその一つに過ぎない。嘘を吐かせなくする“真言”と、後もう一つ。
言葉を対象の精神に刻みつける“刻言”。例え記憶が失われたとしても、俺が解除しない限り永久に思考の中に残り続ける。万が一の事を考えて、俺はヒドロに言った。
――もし俺達の存在を忘れそうになったなら、一度嘘を吐け。そうすりゃ、二度と忘れることはない。たとえ記憶を消されようと、必ず俺がお前をここに連れ戻す。




