DETA ALPHA.075
急な命令、アルゲイトの不審な行動、唐突な閉鎖、不在の職員達、それがここに来るまでの違和感。そして、今それが一つ増えた。
「……無い」
「ああ、無いな。想定はしていたし、覚悟もしていたのだが……」
置いてあったグルーフィリーが無い。大方、アルゲイトが乗っていったのだろう。
「おいラジーム、ここから本部までどのくらいだ?」
「600Eglr。色々仕込んでいた貴様には、少しキツイ距離かもしれんな」
「はぁ?何言ってんだ堅物馬鹿が」
「……直接言わなければ伝わらんようだな」
ラジームは俺に近づき、鳩尾を殴り飛ばした。
「がッ……」
不意打ちに、俺は思わず倒れ込む。ラジームは戦闘において搦め手をメインで用いるため、パワーはそこまで強くない。しかしまぁ不意打ちなので、結構な痛みがあった。
「貴様、何を企んでいる?」
「な、何を……言って……」
「とぼけるな。バグ共を解放したのだろう?ふざけやがって、何が起きるか……!」
「じゃあ聞きたいんだが、奴らは実際に何かしたってのか?」
「何をしたかは関係ない、奴らは「居る」だけで罪なのだ!知っているだろう、奴らが何を齎すか……」
「ああ、知っているさ。だがデバッグが出来るようになったのはつい最近のことだ、つまりそれ以前に『エラー』が起きてなきゃおかしいよな?だが有史以来、一度たりとも『エラー』は確認されていない」
「……」
「なぁ、お前は一度も、この世界に疑問を抱いたことはないのか?」
この会話の肝となる質問。あえて逃がした事に気付くように誘導して正解だった。殴られるのは想定外だったが、ラジームは激昂して判断力を多少失う。まさか欠片も思わないだろう、
「……それについては一度答えたことがあるはずだ。一度たりとも無い、と――」
今、こいつは嘘をついた。常日頃から様々な事柄を疑っているこいつの事だ、この世のシステムに対しても一度は疑問を抱いたことがある筈――にも関わらず、こいつは今なお、俺の行動を想定して「一度も無い」と答えたのだ。しかしこの状況において、この返答は完全に間違いと言わざるを得ない。
「何だ?口が……思うように……」
結果能力が発動し、ラジームは嘘しかつけない身体と成り果てる。あいつが、裏切ってさえいなければ。
「ひ、ヒドロ……貴様……何を仕込んだ!?」
「さぁな。バグ共の復讐じゃね?」




